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「ウルトラセブン」は現代サブカルの基礎テキスト

今回は、「ウルトラセブン」について書いてみたいと思う。

いや、正直私も「ウルトラ」シリーズには全く詳しくないんだが、でも識者の話を聞くと「『セブン』こそが最高傑作」という意見の人がめっちゃ多いんですよ。
少なくとも私の周囲では、ほぼその見解で統一されている。

「ウルトラセブン」(1967年)

シリーズとしては初代「ウルトラマン」の次に作られたやつなんだが、初代があくまでコドモ向けだったのに対し、「セブン」は明らかにオトナ向けの作風に変化してるんですよ。
・・なんていうかな、筒井康隆的、あるいは星新一的、とでもいえばご理解いただけるだろうか?

なぜ、こういう変化があったのかは正直よく分からん。
初代はまだ「正義のヒーローが怪獣倒して大団円」的な単純明快さがあったのに、「セブン」は敵を倒したけど何かモヤっとする・・的なオチも多い。
つまり、その根底には裏のメッセージみたいなものがあるわけで、「さぁ、このお話のホントの意味をよく考えてみてね」的な作りになってるんだ。

庵野秀明が、この「ウルトラセブン」のファンだということは結構有名だと思う。
リアルタイム(当時7歳?)に見ていたらしいし。
また、押井守も「セブン」の熱狂的なファンである。
彼もまた、リアルタイム(当時16歳?)で見ていたという。

・・うむ、16歳の押井さんにならまだ「セブン」は理解できたかもしれんが、正直7歳の庵野さんにはかなり難しい内容だっただろうねぇ・・。
事実、彼は当時を振り返って「よく分からなかった」と語っている。
でも、逆にそれこそが彼の原点かもしれん。

よく分からないからこそ、逆に惹かれる・・

第8話「狙われた街」

オタクの心理って、意外とそういうもんじゃない?
事実、後の「ガンダム」や「エヴァ」、それらを見ていた人たちの大半は「よく分からん」という感じだったと思うのよ。

・・いや、この簡単に作品の底を見せない難解な構造こそが「ガンダム」や「エヴァ」の強みであり、少なくとも幼少から「セブン」に触れていた庵野さんは、そこをよ~く分かってたんだよね。
また、押井さんも「簡単に作品を理解されてたまるか!」と言わんばかりに難解な作品ばかり作る人になっちゃったわけで、ようするに「セブン」見て育った輩は、大体がイビツな方向にいっちゃう傾向みたい・・(笑)。

・・で、内容はよく分からないくせに「セブン」が彼らを惹きつけた理由は割と明瞭で、

それは圧倒的な<ビジュアル>なんですよ!

第8話「狙われた街」
第39/40話「セブン暗殺計画」
第43話「第四惑星の悪夢」
第43話「第四惑星の悪夢」
最終話「史上最大の侵略」

こういう斬新なビジュアル表現は、当然後の「エヴァ」などに影響を与えたと思う。
たとえば、上の画の第8話、第43話を撮ったのが有名な実相寺昭雄監督なんだが、実は彼以外の監督さんたちもなぜか「実相寺っぽい映像」をキメてるんだよねぇ・・。

実相寺監督の特徴のひとつに「逆光なのに、レフ版を使わない」というのがあり、当然被写体は影になってシルエットしか見えなくなったりする。
あと「極端な遠近法」というのもあり、カメラ手前に敢えて障害物を置いてその隙間から向こうの被写体を撮る↓↓というスタイルも有名だよね。

第8話「狙われた街」

このスタイルは庵野さんが大のお気に入りらしく、「シンウルトラマン」でしつこいほどオマージュしてました。

「シンウルトラマン」

・・で、こういうクセの強い画作り、当然我々は実相寺さんのアート志向、シュールレアリスム志向みたいなものがそこにあると考えるじゃん?
でも、意外と実相寺さん自身は全然そういう言い方をしないんだよね。

じゃ、一体なぜこういう画作りをしたのかについて、彼はこう言ってるんだ。

「予算がなかったから・・」

おいおい・・(笑)。
これって、実相寺さんなりの照れ隠しなんですかねぇ?

そのへんはよく分からんけど、とにかく彼が言うには予算がなくてセットも役者も何もかもチープな環境だったので、こういう「逆光」や「目隠し」の撮り方でもしないと「画がもたない」ということだったらしいのよ。
つまり撮り方のケレン味で被写体のアラをごまかす、みたいなニュアンス。
あと夕陽をやたら多用する意味も、当時はフィルムの発色が悪くてオレンジ以外は綺麗な色が出ない、という現実もあったらしい。
よって、できるだけ夕焼けのシーンを撮ろう、と(笑)。

いや、現実はそうだったのかもしれないけど、それを見て育った庵野さんは完全に夕陽に毒されちゃってるんですけど・・↓↓

「エヴァンゲリオン」

で、こういう「予算がなかったから」といってケレン味でごまかしていくという方法論、あれ?これどっかでも同じこと言ってた監督さんがいたような気がするなぁ・・と思ったら、はい、この人でしたわ↓↓

出崎統

この出崎統もまたケレン味たっぷりの演出家だったわけだが、その出崎演出の意味を問われた際、確か「予算がなかったから」と答えてた記憶がある。
その止め絵や3回panなど、確かに作画枚数節約の意味もなくはないんだよね。

じゃ、具体的にその<出崎演出>というやつを見ていこう。

<逆光>

<夕陽>

<極端な遠近法>

<遠近法と入射光>

<ビネット(周りを暗くする)>

・・お分かりになります?
ぶっちゃけのところ、

<実相寺演出=出崎演出>


といっても過言ではないんだ。
・・じゃ、どちらかがどちらかをパクったのかというと、多分それはないと思う。
とはいえ、この御二人には「映画狂」という共通点があるようで、あるいはお互い「元ネタ」みたいなものはカブってたのかもしれないね。
多分、元ネタは具体的には知らんが外国の映画だろう。

・・あ、そうそう、あと「ウルトラセブン」で欠かせないのが音楽。
特に有名なのが、最終話「史上最大の侵略」で流れた、シューマン「ピアノ協奏曲イ短調」ですね。

この最終話は実相寺さんの担当ではないんだが、敢えてシューマン「ピアノ協奏曲」をチョイスしたあたりは彼が無関係とは思えん。
実相寺さんはクラシック音楽に造詣が深く、晩年はオペラの演出を手掛けたほどなんだからね。

・・で、例によって庵野さんはこういうところにも影響を受けてるんですよ。
そう、「エヴァ」のベートーベンさ。

もうね、ひょっとして「ウルトラセブン」には庵野成分の全てが詰まってるんじゃないかと思えるほどにフルオマージュである。
これはあくまで推測だが、

庵野さんが一番好きなのは「ウルトラマン」でも「仮面ライダー」でもなく

実は「ウルトラセブン」じゃないのか?

マジでそんな気がします。

何より、この世代の人たちってアンヌ隊員(ひし美ゆり子)に対する憧れがトンデモないのよ。

アンヌ隊員(ひし美ゆり子)

この美貌、そりゃ1967年当時とすりゃ破壊力ハンパなかったでしょう。
もはや伝説ですよね・・。

とりわけ、庵野さん以上にアンヌ隊員にハマったのが押井守で、彼はアンヌ隊員を脱がせたいというオトコの欲望だけで一本映画作ってますから(笑)。

「真女立喰師列伝」(2007年)

「金魚姫 鼈甲飴の有理」監督/脚本:押井守 主演:ひし美ゆり子

これはもう、完全に押井さんの趣味である。
当初、ひし美さんはオファーを断ったらしいのに、押井さんに「芝居なんてしてくれなくていい。ひし美さんが出てくれるだけでいい」と言われて強引にブッキングされ、結果的には上の画のように脱がされたそうだ・・(笑)。
このジジイ、アンヌ隊員になんちゅーことするねん!

・・と、普段はロクに仕事をしないジジイがハッスルするほどに「ウルトラセブン」って何か特別なモノなのよ。
押井、庵野という日本アニメ界BIG2の原点ともいえる作品ゆえ、まだ未見という方は是非ご覧になってみてください。
ある意味、日本のサブカル基礎教養です。

なお、全48話(ホントは全49話だが事情があって第12話は封印されてる)は長すぎてあれだわ・・という方は、せめて最低限として次のエピソードだけでもご覧いただきたい。

第8話「狙われた街」

メトロン星人は押さえておくべき

第14/15話「ウルトラ警備隊西へ」

巨大ロボット/キングジョーは押さえておくべき

第26話「超兵器R1号」

社会的テーマが非常に重い

第39/40話「セブン暗殺計画」

磔の情景が美しい

第42話「ノンマルトの使者」

社会的テーマが非常に重い

第43話「第四惑星の悪夢」

ほぼ「世にも奇妙な物語」

第48/49話「史上最大の侵略」

ダン⇔アンヌの別離の演出が秀逸

前作「ウルトラマン」より巨大怪獣の出番が少ないが、それは予算の都合である(笑)。
必然、怪獣の代わりに宇宙人(侵略者)の出番が増えてて、私はこれが逆に功を奏したと思うよ。
脚本家のリーダー/金城哲夫さんが沖縄出身の人で(当時沖縄はまだ返還前)こういう人に「侵略」をテーマで書かせると、やっぱスゴイの仕上げてくるわけさ。

秀逸なドラマです。


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