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小松左京先生の作品で<ハードSF>の何たるかを知ろう!

今回は、日本を代表するSF作家・小松左京先生について少し書いてみたいと思う。

小松左京(1931年~2011年)

多分、この人の名を知らん人はおらんと思う。
そうね、日本の代表的SF作家といえば他にも星新一筒井康隆などもいるけど、それでも格としては小松先生が頭ひとつ抜けてるような気がする。

で、この小松先生は京都大学文学部卒というからバリバリの文芸畑の人かと思いきや、実はそうでもない。
どっちかというと、最初のうち彼は漫画家志望だったんだわ。
実際、「モリ・ミノル」名義で漫画家デビューを果たしていたらしい。

「大地底海」(1950年)

思えば、彼は手塚治虫先生と少し境遇がカブってるんだよね。

手塚治虫・・1928年生まれ、兵庫県宝塚市出身、大阪大学へ進学

小松左京・・1931年生まれ、兵庫県西宮市出身、京都大学へ進学


まぁね、どっちもが「関西の良家のボンボン」であり、そういう育ちの人は当時の最先端モード、SF、そして漫画に食いついちゃう的な傾向があったのかもしれん。
ただ、小松先生の場合は同時代で先にデビューしてた手塚先生の才能に触れ「これは絶対に勝てん・・」と悟り、小説家の方に転向したわけね。

いや、この転向の判断を私は正しかったと思う。
ぶっちゃけ、小松先生はそのまま漫画家として踏ん張っていてもきっと大成はしなかっただろうから・・。
それは漫画の才能の問題というより、彼の作家性と漫画という媒体との相性という問題さ。
皆さんもご存じの通り、小松先生の作風はとにかく徹底してリアルである。

映画「日本沈没」(1973年)

彼の作風のリアルさを最も理解しやすいのが代表作「日本沈没」だが、これは70年代に映画化されて興収40億超えの大ヒットを記録した。
今なら「40億?大したことねーじゃん」と思うだろうが、1973年時点での40億のインパクトは、おそらく今の100億以上のものがあっただろう。

で、この映画の中での「なぜ、日本列島が沈没するのか?」という科学者による説明がめちゃくちゃ信憑性あり、当時としてこれ見た人の多くが恐怖に陥ったという。
で、想定以上にその動揺が大きかった為、小松先生自らがわざわざ「現実に日本列島が沈没することは絶対あり得ませんから」と自作の内容を否定するコメントを出さなくてはならない事態にまでなったらしい・・(笑)。

ちなみに、こういう「現実にあり得ることか否か、よく分からなくなる領域のSF」のことをハードSFといいます。
たとえば、今話題の「プロジェクトへイルメアリー」なんかはハードSFの一種でしょう。

基本、こういう小説家発信のSFにはハードSFが多く、逆に漫画家発信のSFには少ないものである。
だから手塚先生の作品の多くはハードSFにカウントされないし、逆に小松先生の作品の多くはハードSFにカウントされる。
御二人ともが天才的SF作家でありつつも、実はベクトルが全く違うということね。

手塚治虫系SF➾漫画➾アニメ

小松左京系SF➾小説➾実写作品

皆さんもお気付きだと思うが、手塚作品は実写化されることが少なく(逆にアニメ化は多い)、小松作品はアニメ化されることが少ない(逆に実写化は多い)。
これこそ相性というべき問題。

事実、「鉄腕アトム」の実写化はクソみたいなもんですし(笑)

漫画のSFは、エンタメ特化型として荒唐無稽な世界観を表現してナンボのものであり、それを映像化するにはやはりアニメーションこそが最適解なんですよ。
一方、小説のハードSFでは逆にリアルさの表現こそ何よりの真髄であり、そういう現実っぽいものを表現する媒体としては実写のチョイスこそベストなのは間違いないでしょう。

あ、そういや湯浅政明監督が以前、小松作品のアニメ化として「日本沈没2020」というのをリリースしてましたよね。

「日本沈没2020」監督:湯浅政明

結構この作品、リリース当時に賛否両論ありました(私は嫌いじゃない)。
かなり原作小説の内容を大きくイジっちゃってますからねぇ・・。
だけど、それはある意味でしようがないんですよ。
だってこれ、媒体が「アニメーション」だから。
実写なら原作を忠実に再現するやり方でもOKだろうが、アニメでそれじゃあまりにも表現として地味になりすぎる
ポイントは、そこなんですよ。

面白いものは、アニメ化しようが実写化しようが、どっちにせよ面白い。面白いものは媒体を選ばない」と言う人もごく稀にいるわけだが、私は一部の例外を除いて、その意見には賛同しかねるわ。
やはり、ほとんどの場合「アニメ向き」「実写向き」のどちらかに分かれるものですよ。

「日本沈没2020」

だけどさ、ごく稀にアニメと実写の二股をかける人っているでしょ?
有名なところで庵野秀明がそうだが、彼の場合は軸足をアニメ&特撮(仮面ライダーやウルトラマン)に置きつつ、意外とその作家性の一部に小松左京「日本沈没」テイストもしっかり入ってるんですよね。
シンゴジラ」なんて、まさしくそうだったと思わない?

「シンゴジラ」(2016年)
「日本沈没」(1973年)

そもそも庵野さんは無類の「仮面ライダー」好き、すなわち藤岡弘ファンのはずであり、その藤岡弘主演の「日本沈没」が嫌いなわけないのさ。

「日本沈没」主演:藤岡弘(ヒロインは故いしだあゆみ)

みんなもさぁ、藤岡弘といえばまず「仮面ライダー」主演の人というけど、それと同時に「日本沈没」主演の人でもあるわけだし、こっちも忘れないであげてください(笑)。

ラストシーンの藤岡弘の目ヂカラは圧巻である

さて、小松左京といえばあとひとつ、忘れちゃいけない映画がコレ↓↓です。

「復活の日」監督:深作欣二(1980年)

製作:角川春樹 主演:草刈正雄

はい、これは俗にいう「角川映画」の初期作品のひとつですね。
制作費24億というのが当時としてセンセーショナルでした。
・・いや、今でこそ高畑勲「かぐや姫の物語」が50億というから大したことない額に思われるかもしれんが、これはまだバブル景気に入る前の24億ですからね?
相場が今と全然違うんですよ。

じゃ、日本映画史上最高額(当時)をかけて本作が何を描いたのかというと

アポカリプス(人類滅亡)です・・

というかね、この映画の場合は開始早々「人類は、ほぼ滅亡しました」的なイントロで、「じゃ、なぜこんなことになったのか振り返りましょう」的なめっちゃ気分の悪い構成なんだわ。

状況をまとめると全ては天災でなく人災、ようするに米軍の生物化学兵器の殺人ウイルスが盗まれた➾漏れた➾増殖した➾世界中に蔓延したという流れで、もうあとは誰も真実を知らないまま、人々はただ死んでいく流れです。

次々倒れていく人々を救護してた医療班も、やがてウイルスに侵され力尽きていく・・

ただ、このウイルスは氷点下だと活動が鈍る為、全世界で南極越冬隊だけが難を逃れて生き残るわけだが、本国で家族たちが死んでいくのをただ黙って見ているしかない彼らが実は一番つらい立場なのかもしれん。

南極越冬隊

さすがは小松先生というべきか、このへんのリアル描写がもうハンパない。

で、小松先生も「日本沈没」の時と違い、この「復活の日」公開にあたって「こんなことは現実に起こり得ません」という声明を発表してくれてないんですよね(笑)。
困ったな、おい。

で、小松先生の作風の最大の特徴は「主人公はあくまで無力で、ただ事態に翻弄されるだけ」というものである。
「日本沈没」の藤岡弘なんて、まさにそうだろ?
いや、これが手塚先生だったら、この未曽有の危機に対し主人公(たとえばアトム)に何らかの手段を講じさせて、彼の英雄譚にするだろう。

なぜなら、それこそが「漫画」の文脈だから。

それに対し、この「復活の日」の主人公・草刈正雄は哀れなもんですよ。

彼にとって最大の見せ場、「核ミサイルの発射プログラムを解除し、発射を阻止すべし」というミッションに際し、これが手塚先生なら絶対にギリギリのところで成功させるじゃないですか?
0.1秒前のところで起動カウントが止まった、みたいなのがひとつのお約束。

だけど、小松先生はひと味違いますよ。

結局のところ草刈正雄は間に合わず、ミサイルが発射されていくのをただ見送るだけ・・

いや、そうだよね。
ただの研究員が、007みたいなスーパーなことできるわけないんだから。
だがこのせいで、人類は「二度目のアポカリプス」を享受することに・・。

というか、小松先生の描く「主人公の無力さ」はマジで徹底してて、それは恋愛関連でもそうなんですよ。

草刈正雄、オリビアハッセー

この草刈⇔オリビアは相思相愛っぽい雰囲気なんだが、しかし困ったことに南極越冬隊の男女構成比は

オトコ855名⇔オンナ8名

というトンデモない不均衡なんです。
ゆえに

SEXを1対1に限定するのは事実上無理だ
と委員会が判断

つまり、女性はランダムな抽選制度で不特定多数の男性とSEXをすることが義務付けられたんだ(人類存続の為に妊娠は必須、SEX自体は奨励)。

・・で、草刈とオリビアがいい感じになってる時にもモブが「今夜、抽選でボクに決まりました(今夜のSEX当番は自分です)」とやってくるわけで、その際、すっと身を引いてモブとオリビアがベッド行くのを促す草刈がまた妙に切ないんですよ。

私、この作品から「NTR」に目覚めましたねw

なお、哀れな草刈はラストこんな感じになってます・・

ちょっと「エヴァ」入ってますよねw

いや~、私はこの映画めっちゃ好きなんだが、でもこれをそのまんま忠実にアニメ化したら、まず間違いなくクソアニメになってしまうでしょう。
これ、やっぱ「小説」の文脈、そして「実写」の文脈でこそ面白いんですよ。
そのことを、私は「日本沈没」と「復活の日」で学びました。

皆さんも是非、「日本沈没」と「復活の日」をご視聴下さい。


「さよならジュピター」は、まぁ、任意ですねw


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