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全世界の「ドラクエ」ファンを敵に回した山崎貴というツワモノ

今年2026年は、「ドラゴンクエスト40周年」というメモリアルイヤーなんだそうです。

RPG「ドラゴンクエスト」1作目(1986年)

確かこれ、鳥山明先生がキャラ原案をやってたんですよね。
1986年は「ドラゴンボール」連載中(しかも初期)で多忙だっただろうに、こういう畑の違うデザインの仕事をよく引き受けたものである。
だがこのゲームが爆発的ヒットした背景に、鳥山効果もまた大きかったのは間違いないと思うぞ。

現在、ラノベの歴代発行部数1位は「転スラ」なわけだが(約5600万部)、思えば、このスライムが初めて世間で脚光を浴びたのは「ドラクエ」だったかも。
鳥山先生の描くスライムは可愛かったからなぁ・・。

多分、今なお深夜アニメで興隆してる異世界ファンタジーの源流を辿れば、必ずこの「ドラクエ」に辿り着くんですよ。
あくまでこのRPGが<基本>で、今に見る異世界転生系の「なろう」作品はそれがガラパゴス進化した形態の一種。

「転生したらスライムだった件」

しかし皆さんは、この80年代中盤にいきなり湧いた「ドラクエ」ブームに、どこか違和感を覚えませんでした?
というのも、「ドラクエ」が出てくるまでは「剣と魔法のファンタジー」という世界観が日本でメジャーな文化だったとはとても思えないから。
どっちかっつーと、80年代ってのは「ガンダム」「マクロス」等SF文化の方が主流だったと思わない?
正直「剣と魔法のファンタジー」なんて、傍流でしたよ。
なのに、そこに「ドラクエ」が出てきて突如の逆転現象が起きた。

この文化って、一体いつ、どこから湧いてきたものなんだ?

「ドラゴンクエスト/ダイの大冒険」

識者に話を聞くと、どうやらこれはアメリカから渡ってきた文化らしい。

それはアメリカのRPGで、特に1981年から入ってきた「ウィザードリィ」というやつがゲーム好きの間ではかなり人気だったそうだ。

世界的に大ヒットしたRPG「ウィザードリィ」

私、ゲームやらん人なので、正直こういうの全然知らなかった。
どうやら「ドラゴンクエスト」もこの「ウィザードリィ」を意識した作りになってるらしく、つまりこれこそが原点オブ原点ということだな?
・・と興味が湧いたので、OVAとしてアニメ化された「ウィザードリィ」というのを実際に見てみた。

OVA「ウィザードリィ」(1991年)

その内容は、パーティがダンジョンに入ってラスボスを倒す系のコッテコテのハイファンタジーでしたわ。

あまりにもスタンダードすぎて面白くも何ともなかったんだが(つまり私もまた「なろう」の変化球に毒されすぎているのか・・)、なるほど、確かに「原点だな」という作品ではあった。

さて、ここで近年かなり話題になった「ドラゴンクエスト」3DCGアニメをひとつご紹介しましょう。

「ドラゴンクエスト/ユアストーリー」
監督:山崎貴(2019年)

はい、この作品は

とにかく山崎貴が「ドラクエ」ファンから罵倒されまくった作品として超有名です(笑)

2019年だから、山崎さんが米アカデミー賞でオスカー獲る前の作品ですわ。
この人は今でこそあれだが、オスカー獲るまでは散々「死ね」とか言われていた監督さんなんだよね(笑)。

でもさ、「ドラクエ」ファンがこの作品をディスるキモチも分かるんだわ。

そもそも、「ドラクエⅤ」の壮大なスクリプトを100分に詰め込むことには最初から無理があったのに、でも山崎さんはそれをやっちゃったんです。
しかも、ひとつ重要なことは、

山崎さんは「ドラクエ」が好きだからこの作品を作ったわけじゃないらしくて(笑)

じゃ、一体なぜ作ったのかというと、

「ある面白いアイデア」(つまりこの作品のオチ)を思いついたので、それをやりたいが為に本作を作ったらしいんですね・・

・・で、この「面白いアイデア」そのものが「ドラクエ」ファンの逆鱗に思いっきり触れたんですよ。

え~っと、この話はオチをネタバレしないと出来ないので、申し訳ないけど今回はラストをバラしちゃいますね。
5年も昔の作品だし、もういいでしょ?

<ネタバレ>

この作品のラストは、クライマックスでラスボスを倒した後に急に謎の人物が現れ、「この世界はゲームですよ、プログラマーが創った絵空事ですよ」と告げるんですね。
どうやらこのアバター、ゲームに没頭しすぎるユーザーを憂うプログラマーが自らゲーム世界破壊の為に仕込んだ「ウイルス」だったらしい(というかこのウイルスこそが、このゲームを揺るがしてた厄災の根源っぽい)。
その「ウイルス」はこう言う。

「大人になれ」

つまり、「妄想世界」に浸ってばかりおらず、ちゃんと「現実世界」の方を生きなさい、ということですね・・。

で、主人公はそれに対し「リアクション」をとるんだが、さすがにそこまでバラすのもちょっと野暮だし、これを未見で、かつ興味ある方は本編でその「リアクション」が一体どういうものだったかをご覧ください。
(「DAYLYMOTION」にアーカイブされてるので無料視聴可能ですから)

・・さて、皆さんはこの展開をどう思います?


世間一般的には「悪趣味」「ゲームファンを馬鹿にしてる」と否定する声が圧倒的に多いみたいですけど。

こういう「ファンタジー世界だと思ってたのに、実はここSF世界だった」という展開は実をいうと宮崎駿「風の谷のナウシカ」も同じことなんですよね。
映画版は区切り方が「ファンタジー」の段階だからきちんとファンタジーになってたけど、もしあれの続編をやるなら徐々にSF構造へと変貌していく流れにファンは耐えられるのでしょうか?

実をいうと、宮崎駿という人は

「大人になれ」派

だとされています。

アニメばかり見てるコドモたちの姿を見て嘆いてたクチらしく、自分の仕事がかえって彼らの健やかな成長を妨げてるんじゃないか?というジレンマを抱えてた時期があったらしいぞ。

また、宮崎駿と同世代のこの人↓↓も「大人になれ」派だとされています。

「大人になれ」派/富野由悠季

この人は、宮崎駿以上にイデオロギーの人なんですよ。
で、作るアニメには必ずといっていいほど「政治的メッセージ」を込めてるんだが、みんなモビルスーツ等の方にばかり食いつき、「ガンダム」ファンのほとんどが現状の政治/経済について何も語れない現実に愕然としてるのだという。
それはアニオタという「現実を見ない」人種を作った自分自身に責任があるのでは?と苦悩し、それが彼の鬱病発症の一因になったみたいなんだよね。
今でも彼は、政治を語れないアニオタに対する嫌悪感は全く隠してないですけど・・。

ひょっとしたら、90年代中盤(ちょうど「ドラクエⅤ」の頃)の富野さんがやたら鬱展開の作品を作ってたのは(「Vガンダム」あたり)

まさに「ウイルス」で「ガンダム」世界を破壊してやる!というプログラマーの心境だったのかもしれませんよね・・

「Vガンダム」(1993年)

一方、こういうゲーム世界ってのはその後メタフィクション化し、たとえば「ソードアートオンライン」のような大ヒット作を生んだりもしました。
その「ソードアートオンライン」では、作中主人公がこんなこと↓↓話してたのを覚えてますか?

「現実と仮想世界の違いは、<情報量>の大小でしかない」

つまり、仮想世界は絵空事なんかじゃないんですよ、というところまで現代のITの意識はきてしまってるわけです。

・・で、このデリケートゾーンに敢えて踏み込んでみせたのが山崎さんの「ユアストーリー」であり、これ見た私は世間の酷評の嵐をヨソに「あぁ、野心作だな」と率直に思ったクチでして。
ごめんなさい、これは「ドラクエ」ファンが原作レイプされたキモチになるのも当然なんだが、しかし私は「ドラクエ」やったことない人だから感想が少し違うんですよ(笑)。

いうなれば、山崎さんは監督業だけに宮崎駿や富野由悠季が抱えた「作家としてのジレンマ」を理解できる立場にいる人なんですよね。
その一方で、彼はCG畑の人でもあるから「ソードアートオンライン」の中のロジックも理解できちゃう人なのよ。
で、そんな人が「ユアストーリー」のオチをああいう感じにしたというのはそれなりに面白いことなんです。

あと、「ゴジラ」繋がりでいうと庵野秀明の存在も忘れちゃいかんわな?

この庵野さんは、90年代に「セカイ系」という内省のカタチを日本中に普及させた張本人ではあるが、その一方、彼はシリーズ完結編「シンエヴァ」で「永遠の14歳」に終止符を打ち、主人公シンジを「大人」にして現実世界に向かわせるという超マトモなオチでまとめましたよね?

実はあの庵野さんですら、ここにきて「大人になれ」派なんですよ(笑)

・・そういや、彼も「シンゴジラ」では、ちゃんと「政治」を描いてたもんなぁ。

なんかね、私は「ユアストーリー」という作品が山崎さんの仕掛けた壮大な釣り>だった気がしなくもないのよ。
だって、この人は決してアタマ悪い人じゃないもん。
だからこういう作品を作れば、「ドラクエ」ファンがどういうリアクションするかは事前にしっかり読めてたと思うんです。

で、案の定、やっぱり事前に想像していた通りのリアクション↓↓だよな、と。

いつもの「二ヤケ顔」の山崎さんが目に浮かびますってw

結局、私は思うんだが、こういう「大人じゃないリアクション」のカタチを世間に見せしめることこそが彼の本当の目的だったんじゃないかな、と。

ほら、こういう「大人になれない人」というのが世の中にいっぱいいるんですよ?ってね。

だから正直、彼はディスられればディスられるほど「思惑通りありがとう」という感覚だったと思う。
で、こういう炎上商法の効果なのかは知らんが、ぶっちゃけ興収もいうほど悪くなかったし・・。
この人、なかなかの「プロ」ですよね。

というわけで「ユアストーリー」、「ドラクエ」には興味ないという人にだけ、私はお薦めします。


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