どうでもいい手すりならば、英語でこんなに種類ありません ~手すりにまつわるエトセトラ ③
手すりってそもそもなんぞや、を改めて深堀りするシリーズ、第三弾は英語から眺めてみる手すりの巻。
このシリーズの初回で、こんなことを書いたのですが。
そもそも、英語で手すりってなんていうの、と調べると、介護系の教科書にはグラブバーとハンドレール(単にレールとも呼ぶらしい)である、と書かれていたりする。なるほど、握るか握らないか、その機能によって単語がちゃんと分類されているのですね。
冷静になってみると、英語ではそれどころではないたくさんの単語が、手すりというものに当てはまっているのでした。握るかどうかだけではなく、装飾性が高いかそうでないか、竪専用かどうかなど、種々の分類があるんですよ、実は。
というわけで本日は、英和辞書風、かつ図鑑風に手すりをABC順に分類してみるのです。それぞれを深堀りすることで、いったい手すりとは何かを考えるための、よすがになれば。
Armrest
アームレスト。訳して肘掛け。椅子などへの立ち座りの際、座面より高いところで手を受け止めて反力を与え、身体の位置を調整しつつ、上肢を手によって持ち上げさせる装備です。

ちなみに日本では、車いすの肘掛けはJIS(日本産業規格)により、アームサポートと呼び習わすことになっております。
用語の見直しの中で、アームレストといった表記については、乗員が休息する意の「レスト」が、介助者が支えるといった意味合いを持つ「サポート」という表現に変更されました。
自動から他動であるもの、という見立ての変更ですかね、restは自動詞、supportは他動詞ですので。腕を休めるものから、腕を支えてもらうものへ。

Banister
バニスター。こちらは、どちらかというと機能性より、装飾性の高い手すりを指し示しているとのこと。こういう、手すり子が連続して設置されている、昔ながらの手すりなどですかね。太めの木材を使う形になるため握りやすくはないけど、寄りかかって安心、見てうっとり、なタイプ。

ちなみに「バニスター」で検索をかけてみると、靴屋さんと野球選手が出てきます。あまり日本語化していない英単語ですね、こちら。
Balustrade
バラストゥレイド。欄干、みたいな意味です。こちらは掴む手すりでなく、転落防止柵の意味合いが大きい。斜めのところでなく、バルコニーの先端などのものですね。Banisterと同じく、装飾性の高さがポイントです。

こちらも試しにカタカナで検索かけてみたら、スガツネさんの製品がヒット。バルコニーのおしゃれなガラスフェンスの支持金物でした。
Grab bar (handle,Grip)
グラブバー、グラブハンドル。掴み棒、ですね。主に縦手すりの表現になるかと思いますが、掴む目的なら横向きでもグラブバーかと。
たとえば、こういう水飲み場の掴み棒も、それに当たるかと思います。しっかり握って、もしくは手を引っ掛けて、反力を貰うためのものです。

車いす利用の方のトイレ手すりで、立ち座りの使いやすさに特化してこんな形で付けた手すりもありました。二本の間を繋いでH型にしても使いやすいかもですが、ひとまずこんな形で落ち着いたこちらもグラブバーですね。

Handrail(Railing,Rail)
ハンドレール。略してレーリング、もっとあっさりとレール、とも言うそうで。要は人をガイドして連れて行くニュアンスがあります。おおよそ線路とおなじですね。なので、これは横もしくは斜め手すり、手を滑らせながら使うタイプということになるかと。レールに手を乗せて動くわけですね。

レーリング、って表現するとオシャレ感がありますね、なんとなく。
建築には人の動きをコントロールするという隠れた?仕事があるのですが、空間のサイズを決めて、最後の仕上げがこれ、っていう感じに使われたりするのでしょうね。やっぱり、人は支えが欲しくなるのです。
Parapet
パラペット。パラペットウォールとも言うそうな。建築系の皆様ならご存知のこれ、一般の方はハテ?となるものでもあります。

こういう部分ですね。これでもよくわからない、という方にはこちら。

要は、屋根の端部に作られている立ち上がりのことです。防水の端末処理に必須なだけではなく、ちょっとした転落防止にも役立ちます。
主に鉄筋コンクリートの建物に必須と言えますが、木造でもうだつや看板建築など、壁が屋根に対して飛び出しているものは、広義のパラペットとなるのかもしれませんね。手すりとは言えなくなってきますが。

かつてこの手すり屋の仕事が軌道に乗る前、よく友人の設計事務所が請け負った、古い建物の現地調査の仕事に行っていたのですが、屋上にひたすら登る仕事だっただけに、このパラペットがないと、疲れてきたときに屋根の上がどれだけ怖いか、ということは実感として知っているものであります。
Stanchion+Rope
スタンション。現場監督経験者なら知っているコレ。自分は鉄骨の建て方のとき、泣く子も黙る鉄骨鳶の親方が、クレーンで揚重する前の梁にコレを付け忘れてた若手くんに、
『ス”タ”ン”シ”ョ”ーーーーーーン”!!!』
と、柱に取り付いたまま怒鳴っていたことで覚えました。親綱張れないもんねこれがないと。
そういった、仮設の転落防止のための、垂直の親柱のことをスタンションと現場では呼んでいます。コレに親綱(ロープ)を掛けて、そこに職人の皆さんが安全帯を引っ掛けるわけですね。

実はもうひとつスタンションと呼ばれるものがあるんですが、そちらは別の投稿で改めて。
ちなみに、スタンション無しでロープ、もしくはチェーンのみという場合もあります。でもそれが反力を受け取るための手すりであること、登山される方ならよくご存知かと。

Strap
ストラップ。ハンギングストラップとも言うそうで。電車のつり革など、ぶら下がった綱状のものに掴まるタイプですね。コレも手すりに含めるの?という方もいらっしゃるかもしれませんが、手すりとは反力生成装置であるからには、含めないわけにもいかないな、と。
下記の画像は、箱階段の横にさり気なく吊るされたそれ。木の玉が通してあるのですが、徐々に下の方が大きくなるのでそこで手が掛かる。壁側はあまり手がかかるところがないので、特に下りは頼りがいがあります。
なんだこれ、つくったやつ只者じゃないだろ、とお気づきの方、お目が高い。民藝の祖のおひとり、河井寛次郎のご自宅だった記念館で見つけた、とっておきでございます。用の美の造形を追求されていた頃の逸品です。

いかがだったでしょうか。
日本語だと手すりであっさり纏められてしまうものが、英語だとこれだけバリエーションがあること、調べてみて自分も新鮮な気持ちになっております。特に、装飾としての手すりには、違う単語がちゃんとあるのが面白いですね。
タイトルは、リオのカーニバルさながらとまではいきませんが、そんな様々な手すりのいろいろに倣ってのものでございます(ちょっと苦しい)。このシリーズ、ひたすらPUFFYの1枚目のアルバム縛りを自らに課しているので。
しかし、リーヅモチートイ裏ドラドラ、どんどん飛んでみよう、という原曲の歌詞はあんまりですね、改めて聞いてみると。
次回は、飛ぶものは含まれませんが、動くものの手すりをまとめてみますよ。慣性、もしくは運動量保存則にひとが逆らうための手すりです。
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