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星付きレストラン、ジャンジョルジュとの出会い

先日から、20年程前の、ニューヨークにいた頃のことを書いています!

21歳で勢いで渡米して、イーストビレッジのジャパニーズレストランLANで働き始めたことで、ニューヨークの料理というものに少しずつ面白味が見えてきた頃の話です。


NYに日本食ブーム

この頃のニューヨークにおけるレストランの時代背景を整理しておくと、まさに変革期そのもの!

というのも、2001 年に起きた9.11同時多発テロの影響で一度縮小していた外食・ナイトライフの市場が急回復。資産家やホテル会社などが、この界隈に巨額の資本を投資。

その結果、マンハッタンのミートパッキング地区やチェルシーに「食事とナイトライフを組み合わせたどデカい店」が増えていました。

中でも有名なのは、ダウンタウンで今も健在のTAO(道)

 TAOグループ公式サイトより

ナイトクラブとレストランを合体させたド派手な大箱アジアン系レストランで、この時大当たり!2018年にはレストラン1店舗だけでなんと年間約36億円も売り上げ、独立系飲食店売上ランキングで全米6位(ニューヨークではもちろん1位)に躍り出ました。

その波に、日本食ブームの第二波が重なったのです!
それまで日本食=寿司だったのが、ラーメンや居酒屋メニュー、炭火や炉端焼き、日本酒などにも注目が集まり、流行に敏感なニューヨーカー達は日本食に興味津々の時代を、僕は現地で感じていました。

料理人人生で一番働いた「Matsuri」時代

https://www.yelp.com/biz/matsuri-new-york

そんな時代の変わり目の中で、有名敏腕クラブプロデューサー、ショーンとエリックの2人が、新しい時代の流れを汲んだ日本食の大規模店舗"Matsuri"をオープンさせるらしい、というニュースが2003年にニューヨーク中で話題になりました。

このMatsuriのシェフを務めることになったのが、小野正さん。

小野さんは日本人で唯一三つ星のシェフだった人で、僕がニューヨークで最初にお世話になった横田シェフからも「尊敬する人の1人」とよく聞かされていた人。

僕はそんな小野さんと働いてみたくて、Matsuriの面接を受け、無事に合格!

そしてMatsuriは、オープンするや否や、とんでもない大人気店になりました。

時代の最先端を取り入れたイケてるお店だという前評判もさることながら、Matsuriの経営オーナーの2人の人脈や人望も功を奏して、もう連日、誰もが知ってるような大スターが続々とやってくる!

Jay Zとビヨンセが貸し切りでイベントしたり、リンゴスターが美女10人連れてきたり、全盛期のデビットベッカムブリトニースピアーズに……。今でも信じられないような顔ぶれがズラリ。

もう、仕込んでも仕込んでも、料理がどんどん出ていく!普通のサイズのお店(約20席)だったら1日1〜2本で足りるサーロインが、このお店では最低でも毎日10本は掃除していた気がします。

それもそのはず、席数も150席くらいの巨大箱。それを驚異の3回転で、毎晩450人くらいの客入り!

今振り返っても、この時が、料理人人生で一番働いた時期だと思います。

何よりこのお店にはニューヨークにいる優秀な日本人達がスタッフとして集まっていたこともあり(最先端でイケてるお店というのはチップが稼げるので、自然と優秀な人が集まるんです)それにもめちゃくちゃ刺激を受けました。

その一方で、"僕がニューヨークで学びたかった料理"がもっと別のところにあることに気づけたのもこの頃。

毎日がむしゃらに目の前の仕事をこなす中で、少しずつ「もっとニューヨークっぽいレストランで働いてみたい!」と思うようになってきていました。

僕の言う「NYらしい料理」とは?

ニューヨークでは、今も昔も、イタリアンやフレンチをベースにして、全く想像もつかないような素材を組み合わせたり、アートのような斬新な盛り付けをするお店がたくさんありました。その土地柄や文化的背景の影響もあるのでしょう。

僕はもともと日本では"ど直球なイタリアン"だったイルボッカローネで修行していた身。

だからこそ、ニューヨークで出会った、西洋料理に自由な発想でアレンジを加える創造性に驚きと魅力を感じていました。

更に、そこにアジアのフレーバーやフルーツを重ねた料理なんかもあったりして「西洋料理に、こうやって東洋のエッセンスも取り入れられるんだ!」と目から鱗。僕もこんな料理を作ってみたい、と思うようになっていたんです。

「NYらしい料理」を求めて"週末スタジエ"

とはいえども、やる気はあってもコネクションはなかったので(笑)街でいいなー!と思うレストランを見つけたり「あの店いいよ!」なんて噂を聞きつけては店に拙い英語で電話して、週末の休みを使って"スタジエ"をさせてもらうようになりました。

スタジエとは、料理人が 「無給またはごく少額で、他店のキッチンに入って、技術とオペレーションを学ぶ短期研修」 みたいなもの。フランス語 stagiaire(スタジエール=実習生)が語源で、英語圏では stage とも呼ばれます。まあいわゆる、タダ働きです。

でも、このスタジエが当時の僕にとってとても楽しかったんです。

どのスタジエ先も、大体その日の業務時間終了頃になると「何が食べたい?」と給料代わりの1皿作ってくれました。

ここで、僕が憧れている「ニューヨークらしい料理」を食べさせてもらえるのが楽しくて!

四角く切り揃えられたマグロとハマチが格子柄に並べられたカルパッチョなんかが出てきた時は、もう、アート鑑賞しているような気分!(それでいてめちゃくちゃウマい!)

僕がキッチンの端っこであまりに嬉しそうに美味そうに食べるもんだから(笑)お店の人も嬉しくなっちゃうのか「これも食べるか?!」と他の料理も出してくれたり……

この頃は体力はあるけど、お金はなかったので、休日遊びにいく代わりにスタジエしているような感覚でした。

ジャンジョルジュとの出会い

そうやって様々なお店でスタジエをしていく中で、ニューヨークのレストランの評価ガイドZagat(ザガット)の存在を知りました。

今は料理の評価ガイドといえば「ミシュラン」が有名ですが、実はミシュランは後発の評価ガイド。ニューヨーク版が出たのは2005年。(東京はその2年後の2007年)

僕が当時ニューヨークにいた頃は「Zagat(ザガット)」と呼ばれるレストラン評価ガイドがまだ主流でした。(1979年にスタート、現在はGoogleに買収されています)

当時のザガットは30点満点で、ニューヨークでの最高得点は28点。
その最高得点を獲得していたのが、

Jean-Georges
(ジャンジョルジュ)
-フランス料理をベースに、アジアのスパイスやテクニックを取り入れたコンテンポラリー・フレンチ
Alain Ducasse at the Essex House
(アラン・デュカス エセックスハウス)
-クラシックを重んじた正統派フランス高級料理(オート・キュイジーヌ)
Daniel
(ダニエル)
-季節食材を生かすニューヨーク流のフランス・ファインダイニング
・Le Bernardin
(ル・ベルナルダン)

-フランス流シーフード・フレンチ(魚介主体の高級料理)

この4店舗。要するにこの4店舗が、ニューヨークレストランの四天王だったわけです。

やるなら、もっと上を目指したい。

そんな熱い想いを持っていた僕は、四天王レストランの住所を全部調べて、目の前まで行ってみました!

……が、アランデュカス、ダニエル、ベルナルダンは、かっこいい入り口だけがあって、もちろん中までは見えませんでした。「入り口かっこいいなー!」なんて思いながら、中まで突撃するような勇気までは持てず、トボトボ帰宅……。

しかし、ジャンジョルジュだけ違ったんです。

トランプホテルの1階に入っていたジャンジョルジュだけ、ガラス張りになっていて、外からすべてが見えたのです!

ジャンジョルジュ公式サイトより

その中にはまたガラス張りのピカピカの厨房があり、高さのあるコック帽子と真っ白のコックコートを着た料理人達が、手際よく料理をしていました。壁にはフレンチでよく見かける銅鍋もかかってた。

「こんな所で働けたらかっこいいだろうなあ……!」そんな思いで外からじっと観察。そして、厨房の中まで見えたことで、僕のポジティブシンキングが発動!

自分もあのかっこいい空間で働いている姿が頭に思い浮かびました。
そして、これこそが、僕が日本にいた頃夢見た世界!

この頃には結構な数のスタジエを経験していたこともあり、思い切ってジャンジョルジュのレストランにスタジエができないか、電話してみました。そしたらなんと、了承を取ることができたんです!

ついにジャンジョルジュにスタジエ

スタジエ当日、包丁ケースを持って、ジャンジョルジュに到着。この時ばかりはめちゃくちゃ緊張しました!

入り口で名前を告げると、当時スーシェフだったマークが入り口まで迎えに来てくれました。(今やマークも、在籍20年を超える超ベテランに!)

「ついにあのガラス張りのキッチンに入れる!頑張るぞー!」とワクワクしていたら、なぜかガラス張りのキッチンの前は素通り、そのまま階段を下るよう案内され、僕は頭にはてなマーク。

実は、ジャンジョルジュには、もうひとつキッチンがあったのです!

ガラス張りのキッチンを携えた「ジャンジョルジュ」と、隣接するカジュアルレストラン「ヌガティーヌ」とトランプホテルのルームサービスも担う地下のキッチン。

Nougatine at Jean Georges 公式サイトより

僕はしっかりヌガティーヌの地下キッチン行きでした!笑

そりゃそうです、ガラス張りの厨房が外からも見えたと言うことは、その中では一切失敗は許されない。そんなところにスタジエ初日で立てるようなお店が、Zagatで30点満点中28点なんて取れるわけがありません。

そして、見えなかったヌガティーヌのキッチンも初見ですごいことが解りました。

階段を下って扉を開けた途端"YES CHEF!!!"という、ほぼ怒号に近い掛け声が聞こえてきてビビりました。厨房を目に止まらぬ速さでテキパキ動く料理人達。超活気のあるキッチン!

その気迫に圧倒され、ガラス張りのキッチンに入れなかった落ち込みなんか忘れて、地下キッチンに足を踏み入れました。


次の記事では、そんなジャンジョルジュでの奮闘記をお届けします!


No Codeのご予約について

ご予約は下記サイトから承っています。
Tablecheck
OMAKASE

店名:No Code
営業時間:(2部制※各回一斉スタート) 17:00~ / 19:45~
料金:料理 おまかせコース 13,500円(税込サ別) ドリンク ペアリング 10,000円(税込サ別) ※ファーストドリンク別 ※ドリンクはグラス、ボトル共にアラカルトオーダー可能、ノンアルコールペアリングは御座いません。料理:メキシカン-フレンチ
予約:電話、ネット予約※テーブルチェック推奨
座席:8席(カウンターのみ)
ドレスコード:スマートカジュアル
キャンセル料:~1週間前30% / 前日50% / 当日100%

※2025年6月時点の情報です。最新の内容は予約ページなどをご確認ください。

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(arranged by 菅原きこ



#創作大賞2026 #エッセイ部門


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