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東日本大震災から学ぶ都市防災と復興〜国内外に講演したポイント〜


1 はじめに

2011年3月11日の東日本大震災は、太平洋沿岸部の広範囲に甚大な被害をもたらした。発災直後から被災地の復旧・復興を支援するとともに、2012年1月から被災自治体の要請に基づいて復興市街地の整備や災害公営住宅の建設に着手し、復興まちづくりを着実に進めた。被災自治体を通じて支援してきた復旧・復興について、震災発生から5年間の取組みを報告するとともに、最後に、この大震災で学んだ教訓を今後どう活用するかについて紹介する。

2 復旧・復興への取り組む

1)東日本大震災直後の復旧支援
これまで阪神・淡路大震災や新潟県中越沖地震等において、応急仮設住宅用地の提供や、被災建築物応急危険度判定士の派遣等を行ってきた。
東日本大震災においては、これらの経験を活かし、発災直後から以下のような復旧支援を行った。
○被災者への賃貸住宅の提供
○応急仮設住宅建設用地の提供
○応急仮設住宅の建設支援要員の派遣
○被災宅地危険度判定士の派遣

(2)復興計画策定の支援
復興のマスタープランとなる復興計画は、復興まちづくりを速やかに着手させるため、早急に策定される必要がある。しかし、東日本大震災は、広範囲で甚大な被害を受けたことや、被災自治体の職員に復興まちづくりの経験が少ないことから、復興計画の策定に時間を要することが懸念された。
そこで、被災自治体からの要請を受けて、2011年4月から宮城県、岩手県、福島県の1県18市町村に職員を派遣し、復興計画の策定に係る技術支援を行った。

(3)現地支援体制の整備
 がれき処理や応急仮設住宅の建設が進み、被災地が復旧から復興に歩み始めた2011年7月、復興まちづくりの現地支援の最前線となる拠点事務所を岩手県盛岡市と宮城県仙台市に開設した。
 拠点事務所の開設後は、22の被災自治体と「復興まちづくりの計画策定」や「復興市街地整備事業の実施」、「災害公営住宅の整備」に係る相互協力と事業推進を確認する覚書・協定等を締結。
 これを受けて、各被災自治体に現地復興支援事務所を開設。その後、事業進捗にあわせた現地支援体制の強化・確保を行い、着実に復興まちづくりを進めた。

図1 現地支援体制

3 復興まちづくりを実現する方法

(1)復興市街地整備事業
 復興市街地整備事業は、土地区画整理事業、防災集団移転促進事業、津波復興拠点整備事業、漁業集落防災機能強化事業等により、住宅の高台移転や平地部の嵩上げ、道路・公園等の公共施設整備を行うものである。12の被災自治体からパッケージ(計画、換地、補償、工事、調整等)で一括委託を受けており、2012年度から22地区、約1,300haで復興市街地整備事業を実施。
東日本大震災の復興のために実施している復興市街地整備事業のうち、支援比率は図2のとおり。

図2 復興市街地整備事業

(2)災害公営住宅整備事業
 災害公営住宅整備事業は、震災により住宅を失い、自力での住宅確保が難しい方に低廉な家賃で賃貸する公営住宅を整備するものである。
 大都市圏を中心に約150万戸の賃貸、分譲住宅建設してきた経験を活かして、被災自治体からの要請に基づいて災害公営住宅を建設し、建物の完成後に被災自治体に譲渡している。
 16の被災自治体から約5,900戸(85地区)の災害公営住宅の建設要請を受けており、2016年7月時点で約2,800戸が完成、入居を開始。
 東日本大震災の復興のために実施している災害公営住宅整備事業は図3のとおりである。

図3 災害公営住宅の整備

3)復興事業を推進していく上での課題と対応
 発災以来、国、県、市町村、民間企業、NPOなど多くの主体が連携し、復興を推進しているが、その過程で、以下のような課題が明らかとなった。
・ 復興のスピードが求められる中、事業が広範囲で同時期に集中するため人手、資材等が不足している。
・ 被災自治体の財政・職員数等規模が小さく、技術者も不足している。
・ 地元住民の高齢化が進んでいる。
・ 地元住民の意向を踏まえた、計画・工事展開見直しと先行工事を並行して進めるなど、事業上のリスクを予見しにくい。
 復興市街地整備事業においては、スピードが求められる状況を踏まえ、後に説明するCM方式の導入などを行っており、また、災害公営住宅整備事業においては、震災による地域コミュニティの崩壊・分断や住民の高齢化を踏まえ、コミュニティ形成支援の取組みなども行っている。

4 復興市街地整備事業の取組み

(1)市街地の復興方針の類型
 被災自治体からの委託を受けて、土地区画整理事業、防災集団移転促進事業等を組み合わせながら、復興市街地整備事業を進めている。
最初に、被災地の復興まちづくりの方針について、3つの類型に分類して説明する(図4)。

図4 市街地の復興方針の類型

○類型A:まち機能を再編
 浸水した低地部は嵩上げして、住宅以外の水産関連施設等のゾーンとして、住宅や行政施設等は高台へ移設する。
 宮城県では、南三陸町志津川地区、女川町、東松島市野蒜北部丘陵地区が、岩手県では、宮古市田老地区、山田町織笠地区、山田地区、大沢地区、釜石市花露辺地区、陸前高田市高田地区、今泉地区が該当する。

○類型B:まち機能を現位置復興
 浸水した場所を嵩上げして、防潮堤や高盛土道路等で多重防御することにより、現位置に住宅も復興させる。
 宮城県では、気仙沼市鹿折地区、南気仙沼地区、石巻市新門脇地区が、岩手県では、宮古市鍬ケ崎・光岸地地区、大槌町町方地区、釜石市片岸地区、鵜住居地区、大船渡市が該当する。

○類型C:新市街地整備
 広域的な集団移転先として市街地を新しく内陸部に整備する。
 宮城県東松島市の東矢本駅北地区が該当する。

(2)各県における当時の進捗状況
○宮城県・福島県
 6市町から10地区約690haの復興市街地整備事業を受託。
 事業着手から概ね2~3年が経過し、受託した全地区で土地の引渡しが開始されており、2016年3月末時点で、約140haが完成・引渡し済み。
 特に東矢本駅北地区(土地区画整理事業区域)では、2015年10月に工事が完了し、全宅地の引渡しを終了している。

○岩手県
 同じく6市町から12地区約620haの復興市街地整備事業を受託。
 宮城・福島と同様に受託した全地区で土地の引渡しが開始されており、2016年3月末時点で約110haが完成・引渡し済み。
 特に釜石市花露辺地区では2016年2月に工事が完了し、全宅地の引渡しが終了している。

(3)地区事例
①宮城県女川町(中心部地区、離半島部地区)
【被災状況等】
 女川町は、宮城県の東端、牡鹿半島の付け根に位置し、人口約1万人、面積65.8平方キロメートルの漁業が盛んな町だったが、震災では死者・行方不明者など800人超、損壊建物は町全体の85%という未曽有の被害を受けた。

被災後の女川中心部

【復興計画等】
 発災から6か月後の2011年9月、女川町は「とりもどそう笑顔あふれる女川町」を基本目標とした復興計画を策定、原状復旧にとどまらない新しい「港町おながわ」の再生に取組んだ。
2012年3月に町と「パートナーシップ協定」を締結し、中心市街地のほか離半島部を含めた町全体の復興に向けて、包括的、総合的に町をサポートし、協力して早期復興を図ることを確認した。
復興計画は、住宅を安全な高台に移転するとともに、低地部を嵩上げして、JR石巻線女川駅周辺を商業エリア、海沿いを水産加工団地として活用するものである。

女川中心部 復興土地利用計画

【当時の状況】
 復興のシンボルであるJR仙石線女川駅は2015年3月、当初のスケジュール通りに開業し「まちびらき」。
を迎えた。続いて同年12月に駅前の商業施設や地域交流施設が完成、高台住宅地等も次々と完成し、復興は着実に進んだ。

女川プロムナード(初日の出が正面に見える軸線)
女川中心部の工事状況

女川離半島部においては、14の漁業集落の生業再生と安全な居住地確保を目指して、住宅地は低地部から高台へ移転、跡地を水産関連施設用地として利用する計画を策定した。高台部は全て着工済みで、入居が完了している地区もある。

女川半島部の復興計画

②宮城県東松島市(野蒜北部丘陵地区)
 津波により被災した野蒜地域の移転先として、北側の丘陵地(高台)へまちと鉄道をまとめて移転させる事業である。高台造成により発生する大量の土砂をベルトコンベアで搬出することにより工期短縮を図った結果、2014年6月に鉄道用地をJRに引渡し、1年後の2015年5月にJR仙石線全線開通させることができた。2016年中には地区内の全宅地の引渡しが完了。

東松島市野蒜地区の復興計画
野蒜地区の造成工事状況(当時)
JR仙石線野蒜駅の開業(移設後)

③岩手県宮古市(田老地区)
 田老地区は、これまでも繰り返し津波の被害を受けてきた地区であり、過去の津波の教訓をもとに建設した巨大防潮堤が、東日本大震災による津波により破壊された。
 二度と津波による犠牲者を出さないという決意のもと、市街地は山側を嵩上げして海側は低地部として利活用、住宅は主に高台を造成して移転という計画のもと事業を進めた。
 地元住民の合意形成もスムーズに進み、2015年9月には高台宅地が完成、順次建築・入居が進捗した。

宮古市田老地区の復興計画

④岩手県陸前高田市(高田地区、今泉地区)
 陸前高田市では、気仙川を挟んで、高田地区と今泉地区で事業を実施中である。両地区あわせて約300ha、市街地復興事業としては最大級である。
 今泉地区の高台造成で発生する大量の切土を、気仙川の対岸の高田地区の嵩上げ用の盛土として活用するため、ベルトコンベアを活用した。
 それによって、通常のダンプトラックでの運搬に比べて約6年の大幅な工期短縮を実現させることができた。

陸前高田市ベルトコンベアによる土の搬出

(4)CM(コンストラクション・マネジメント)方式の導入
 復興市街地整備事業の実施にあたっては、一日も早い住宅再建、まちびらきが求められていることから、従来型の契約方式ではなく、官民が明確な役割分担のもと事業を強力に推進するCM方式を導入している(図5)。
 東日本大震災は、被災規模が極めて大きく被災地も広範囲にわたるため、これまでに経験したことのない非常に多くの大規模工事を同時期に発注することになり、これに従事する技術者や作業員だけでなく、建設に必要な資材、建設機械等が不足することが懸念された。
 そこで、段階的な工事を大括りにして早い段階でCMR(コンストラクション・マネジャー)に発注、事業参画させることで、民間のノウハウを活用し、工期の短縮や資機材の早期調達、施工方法の工夫によるコスト縮減を図っている。また、地元経済の復興、活性化に寄与するため、CMRが発注する調査、工事には、地元企業を優先して活用している。
 このCM方式は、復興市街地整備事業の19地区で採用している。CM方式の導入によってCMRに調査、実施設計及び工事施工等を包括的に委ねることによって、複数地区のマネジメントや事業推進に向けた総合調整に注力した。

図5 CM方式の概念図(本格的導入は日本初)

5 災害公営住宅整備事業の取組み

①宮城県女川町(女川町民陸上競技場跡地地区)
 当地区は全8棟200戸で構成されている。高台に位置して被災を免れた陸上競技場を解体し、その跡地を活用することで用地確保の期間を短縮し、あわせて工期短縮を図ったことによって、着工から11ヶ月後の2014年3月に完成した。
 また、コミュニティ形成に配慮し、共用部にベンチや溜り場を設けるとともに、地域の拠点となるコミュニティプラザを併設した。

女川第1期災害公営住宅

②宮城県多賀城市(桜木地区)
 当地区は浸水したエリアに立地するため、安全性に配慮し、2階以上に住宅を配置するとともに、外部階段から上がれる屋上に避難スペースと防災倉庫を整備することで、津波避難機能を持つ地域の防災拠点となった。
 また、コミュニティ形成支援の一環で、2階レベルをデッキで連結し、デッキに面して「みんなのリビング」という居住者の交流スペースのほか、地域で開かれた集会所を設けるなど、居住者のみならず地域住民も交流できる場を整備した。
 なお、災害公営住宅の整備にあわせて高齢者生活相談所を併設し、地区内に被災した保育所を再建するなど、高齢者や子育て世代などの多様な世代が共生する、ミクストコミュニティが実現しやすい環境となっている。

多賀城市の災害公営住宅

③岩手県大槌町(大ケ口地区)
当地区は、震災前は町営住宅だった敷地に70戸の災害公営住宅を建設。
 地域での先行地区となることから、シンボル性も持たせながら、地元産材を使い低層和風住宅とすることで地域の風景に馴染むデザインとなっている。また、入居者間や地域とのコミュニティ形成に配慮して、既存の町との結節点に集会所を配置したり、交流の場としての広場を設置している。

大槌町の災害公営住宅

④岩手県釜石市(花露辺地区)
 市内の半島部漁村集落の高台部に、当集落での被災者のために13戸の災害公営住宅を建設。当集落は漁業を生業としている高齢者が多いことから、漁具を洗ったり乾かしたりする水場(掛け下げ)や漁具等を収納するための外部収納を設置している。
 集会所は海の見える位置に配置し、非常時は地域の住民も受け入れ可能な規模としており、あわせて防災備蓄倉庫も設置している。

釜石市花露辺地区の災害公営住宅

6 東日本大震災に学ぶ災害に強いまちづくり

南海トラフ地震等、津波の被災が予想されている地域において、東日本大震災から学んだことを活かす取組みが全国で行われている。
最後に、その紹介とあわせて、復興の現場で経験したことを踏まえて、震災が起こる前に策定する「事前復興まちづくり計画」の重要性について簡単に触れたい。
東北での復興の経験を各地で講演し、減災や事前防災計画の参考にして頂くように努めた。
(1)災害に強いまちづくりの取組み事例(高知県中土佐町)
 中土佐町は高知県の中西部(高知市より西に約50km)、土佐湾に面した面積200km2弱、人口約7,000人の小さな町である。
過去の地震での被災等を分析し、国が中心となって「災害に強いまちづくりガイドライン」を作成し、更に当町等地域モデル別に「災害に強いまちづくり計画」を検討している。
主要な取組みとしては、防災拠点となる中土佐庁舎、消防庁舎の移転整備を図るとともに、避難タワーの整備、公共施設の耐震化等、あらゆる施設の防災面の強化を図っている。

中土佐町の避難タワー

(2)事前復興まちづくり計画
 東日本大震災での復興現場での経験等を踏まえ、復興の迅速かつ効果的な実施のため、復興の基本的な考え方を事前に検討し、津波が発生した場合のまちの被害の軽減を目指すことを目的とした、いわゆる「事前復興まちづくり計画」に関する情報提供を実施している。
 重要なポイントとしては以下の3つが挙げられる。
① 復興時の整備方針等の事前準備について
  スピードと品質の両立が必要な復興事業においては、短期間での決定が求められる整備方針は極めて重要であるので、その事前準備が必要
② 必要な用地の確保について
  災害応急対策、仮設住宅、災害公営住宅等で早期に必要な高台や内陸部のアクセス可能な平地の準備が必要
③ 復興推進体制等について
  事前復興まちづくりの重要性について、地元関係団体や「相互応援協定」等を締結した市町間で、あらかじめ理解を深めることが必要。

ここまで読んでいただき、大変りがとうございます。
別添は、内容をスライドで紹介したもの、海外に説明した英語の論文等です。何かの参考になれば幸いです。

<添付資料:日本語&英語>