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鉄道と都市開発の戦略(TOD)〜鉄道事業者の街づくりビジネス〜

日本は、戦後の都心部への人口流入により、住宅不足や交通渋滞と大気汚染が問題となり、その解決のために鉄道を延伸しながら駅周辺を都市開発した。結果、住宅の大量供給と商業施設が立地して市街地が郊外に拡大しました。
現在、この取組みがTOD(公共交通志向型開発)として、1960年代の日本のような住宅不足と交通渋滞に直面している東南アジアなどで注目されているのをご存知でしょうか。各国が日本のTODノウハウを求めて、来日して視察をしています。
今回、鉄道各社が進める鉄道と都市開発を紹介します
近年、鉄道トラブルが多くなったと感じます。経営資源の配分が鉄道から都市開発へ重点が変わった影響ではないか、と考えてしまいます。


1 TODとは

  • Transit-Oriented Development、日本語では「公共交通指向型開発」と訳されます。鉄道駅やバス停などの公共交通機関の駅周辺に、住宅、商業施設、オフィスなどを集約し、徒歩や自転車での移動を促進する都市開発手法です。環境負荷の低減、都市の活性化、利便性の向上などを目指しています。

  • TODの主な利点は以下にまとめます。

持続可能な都市開発

  • 環境負荷の低減: 公共交通機関の利用促進により、自動車利用を減らし、CO2排出量削減に貢献します。

  • エネルギー消費の抑制: 徒歩や自転車での移動を促進することで、エネルギー消費を抑えられます。

  • 都市のコンパクト化: 高密度な開発により、都市の広がりを抑え、緑地や水辺の保全に役立ちます。

生活の質向上

  • 利便性の向上: 駅周辺に商業施設や住宅が集まることで、日常生活に必要なものが徒歩圏内に揃い、利便性が向上します。

  • 歩行者・自転車に優しい環境: 歩道や自転車道が整備され、安全で快適な歩行・自転車走行環境が実現します。

  • コミュニティの活性化: 駅周辺に人が集まることで、交流の機会が増え、地域コミュニティが活性化します。

経済活性化

  • 不動産価値の向上: 駅周辺は利便性が高いため、不動産価値が向上し、税収増加に繋がります。

  • 雇用創出: 商業施設やオフィスが集まることで、雇用創出に貢献します。

  • 観光客誘致: 駅周辺に魅力的な施設が集まることで、観光客誘致にも繋がります。

社会的インクルーシブ

  • 高齢者や障がい者への配慮: 駅周辺はバリアフリー化が進み、高齢者や障がい者も安心して暮らせる環境が実現します。

  • 多様なニーズに対応: 様々なライフスタイルに対応できる住宅や商業施設が揃うことで、多様な人々が共存できる社会の実現に貢献します。

その他

  • 防災性の向上: 駅周辺は避難場所や防災拠点として機能するため、防災性の向上に繋がります。

  • 交通渋滞の緩和: 公共交通機関の利用促進により、交通渋滞の緩和に貢献します。

TODは、都市開発における様々な課題解決に貢献する有効な手段です。

ただし、TODには以下のような課題も存在します。

  • 高密度開発による生活空間の圧迫

  • 地価上昇による住宅価格の高騰

  • 開発に伴う環境負荷

これらの課題を克服するためには、適切な計画と住民との協調が不可欠です。

TODのタイプ
TOD に必要な都市機能

2 街づくりビジネス

鉄道業界は今、「街づくりビジネス」に注力しています。多くの方々が鉄道ビジネスからイメージするのは、鉄道車両に客を乗せて運ぶ、いわゆる運輸業でしょう。運輸業の乗客を増やすため、沿線にマンションや戸建て住宅あるいはオフィスや駅ビルをつくり、通勤や通学などで利用客が増えれば運輸業の収入が増えます。
鉄道会社は沿線でマンション等やオフィスビル等を開発してくれる企業の登場を期待しているだけではなく、自らが沿線でマンション等やオフィスビル等を開発しています。そうすることで積極的・主体的に乗客を増やすことができます。

例えば東急の東急多摩田園都市や、渋谷スクランブルスクエア、阪急阪神ホールディングスの阪急西宮北口住宅地、阪急グランドビルなどです。JR東日本は、山手線に新駅の高輪ゲートウェイ駅を設置して、大規模な都市開発を進めています。

沿線にスーパーマーケットがあれば、各駅が便利になって生活しやすくなり、沿線住民が増えます。電車で通勤し、自宅最寄りの駅で下車してスーパーマーケットで買い物をして帰る生活を経験したことがある人も多いのではないでしょうか。

3 沿線活性化と多様な事業展開

百貨店や商業施設が沿線にあれば、平日だけでなく土日も沿線が活性化します。通勤、通学する人口以外にも人が集まります。鉄道会社はスーパーマーケット、百貨店、商業施設などの流通業を誘致するだけでなく自らが主体となって不動産事業を行うこともあります。

鉄道会社グループが運営するスーパーマーケット、百貨店、商業施設は例えば東急が運営する東急ストア、東急百貨店、渋谷ヒカリエ、阪急阪神ホールディングスが運営する阪急オアシス、阪急百貨店・阪神百貨店、阪急三番街など枚挙に暇がありません。鉄道会社の決算書をみれば、流通業が大きな売上を占めている会社もあります。

特にオフィスビルと商業施設の両方の要素を有している駅ビルは他の不動産会社から見れば、まねしたくてもまねできない施策です。鉄道会社だからこそ、駅の直上にビルを建てることができるのです。

JR東日本が約5,800億円をかける高輪ゲートウェイシティには、2025年3月を目処にKDDIの本社が移転します。これを契機にKDDIとJR東日本は連携して、以下に取組みます。

  • 携帯電話事業で培った通信技術を応用した街の構築を加速させる

  • 分散型まちづくり「空間自在プロジェクト」

  • KDDIの持つ人流データとJR東の持つ鉄道の乗降データを掛け合わせることで人の行動パターンを把握し、街づくりに反映させることなどを想定する

品川駅周辺は、NTTの拠点があるので、これで電気通信分野の拠点が形成されます。このように、TODは沿線の活性化や産業構造の変化のきっかけにもなります。

それ以外にも沿線に遊園地を開発することで活性化を図ったり、豊富な人流を活かした広告ビジネスを展開したりもします。
例えば、富士急行が運営する富士急ハイランドや、京阪ホールディングスが運営するひらかたパークなどです。

4 鉄道各社の3つの類型

鉄道業界は「街づくりビジネス」を進めており、活気のある街を生み出すことが利益へとつながります。そこで鉄道会社を大きく3つに分類してみます。

運輸業収益比率(出典:四季報)

第1は、運輸収益特化型です。
東海旅客鉄道東京地下鉄は、売上の大半が運輸業の売り上げです。
この点、不動産業や流通業に売上を分散させている他の都市圏鉄道や地域鉄道とは大きく異なることからあえて別の分類としました。運輸業の利益率が非常に高い傾向にあります。
そして、この2社の共通点は、ドル箱路線を持っていることです。不動産業や流通業に多角化する必要がないくらい運輸業が儲かっています。

第2は、都市圏鉄道です。都市圏内や都市圏と郊外を結ぶ鉄道を運営する事業者です。東日本旅客鉄道西日本旅客鉄道、東急、京王電鉄近鉄グループホールディングス、阪急阪神ホールディングスなどです。

都市圏鉄道の会社は、都市圏であるため乗客数が多く、TODを積極的に進めています。東急は、運輸業比率が20%まで低下しました。社名からも電鉄が消えました。鉄道会社ではなく、自他ともに認める不動産事業者になったのです。

第3は、地域鉄道です。都市圏以外において鉄道を運営する事業者です。山陽電気鉄道広島電鉄京福電気鉄道などが挙げられます。地域鉄道は、乗客数が少ないことなどから、運輸業の利益率が低い傾向にあります。利益率は平均すると5%前後になります。

鉄道会社のビジネスモデルの特徴は以下の点にあります。
① 運輸業だけでなく不動産業などの多角化経営(街づくりビジネス)
② 大規模装置産業

②の大規模装置産業について、見てみましょう。鉄道業界は、前回の建設業界が労働集約的であったのと対照的に資本集約的で、「大規模装置産業」といえます。大規模装置産業は、その事業を始めるために多額の初期投資が必要となります。鉄道会社の場合は、土地の購入、線路の敷設、ときには橋脚の建設やトンネルの掘削なども必要です。

例えば、東日本旅客鉄道は鉄道事業に関連する資産として約12兆円の資産を保有しています(2024年3月決算。ただし減価償却を行っているため簿価は約5兆円となっています)。まさに大規模な初期投資を必要とする大規模装置産業といえるでしょう。



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