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USDCが急落 ― SVBショックが示したステーブルコイン“1ドルの信頼”の危うさ【第2部 前編】

<SVBショックが突きつけた冷酷な現実>
2023年3月――シリコンバレー銀行(SVB)の破綻が発表された瞬間、世界のステーブルコイン市場が揺れた。

Circle社は、USDCの準備資産のうち約33億ドルをSVBに預けていたことを公表。直後に、USDCは取引市場で一時0.815ドルまで急落した。

1コイン=1ドルのように、“常に”安定した価値で交換できることを大前提としているステーブルコイン。それにもかかわらず、発生した「1ドルから20%近い乖離――」。

USDCにとって、信頼を失墜しかねない事件であった。

原因は、USDCの発行主体Circleが、裏付け資産の約33億ドルをSVBに預けていたことにある。このため、SVB破綻により預金が一時的に凍結され、Circleは即時償還に応じられない状況が生まれた。

結果、市場は「USDCの1ドル保証が崩れるかもしれない」と恐れ、瞬時に売りが殺到、ドルとの連動が外れたのである。

これは今後防ぐことができるのか?それともステーブルコインそのものに内包するリスクとしてあきらめるほかないのか――。

前回は、GAFAMがなぜ金融の中枢に踏み込めないのか――制度という“見えない壁”がいかにGAFAMの行動を縛っているか――を見た。その一方で、SoFiはその壁の内側で、国家が支配する“金融インフラ”と同じ舞台に立とうとしている。

今回は、壁の内側にいるものが得られる「FRB口座」へのアクセス権が生む決定的な競争優位性を見ていく。

「FRB口座」へのアクセス権があれば、SVBショック時に、カウンターパーティーリスクに陥った結果、USDCがドルとのペッグを外したような事態は避けられる。少なくともそのような運用設計ができる。

【カウンターパーティーリスク】
取引相手(カウンターパーティー)が倒産したり、資金繰り悪化などにより支払い不能に陥ったりして、本来履行されるはずの支払い・返済・資産の引き渡しといった契約上の義務が守られなくなるリスクを指す。

リーマンショックが顕著な例で、金融機関や投資家が取引相手に疑心暗鬼に陥ったことから、カウンターパーティーリスクが連鎖的に爆発し、信用が完全に止まり、資金の流れが凍結。結果として、金融市場全体が「誰も信用できない」状態に陥り、世界的な金融危機(信用収縮)を引き起こし、株式市場も大暴落した。

<FRB口座への直接のアクセス権>
米国の金融システムにおいて、すべての資金決済が“最終的に”収束するFRB口座を保有できるのは、基本的にSoFiのように商業銀行免許を有する金融機関のみである。

USDCを発行するCircle社が免許の取得を進める全国信託銀行や、PayPalやCoinbaseなどが利用するマネーサービス事業(MSB)は、ステーブルコインを発行できたとしても、原則FRB内に口座を開設できない。

これは、商業銀行とそれ以外の金融機関の間に横たわる構造的格差であり、決定的な差別化要因となる。

SVBショック時に重要であったことは、SVBが商業銀行であり、FRBに口座を持っていたにもかかわらず、Circle自身はその口座にアクセスできなかったという点だ。

Circleはあくまで「SVBの一顧客」にすぎず、預けた資金はSVBの貸借対照表上の「負債」に計上されているにすぎない。SVBが破綻すれば、USDCの資産(=ステーブルコインの裏付け資産)は連邦預金保険公社(FDIC)管理下に置かれ、資金を動かせなくなる。

「裏付け資産があっても引き出せない――」という状態に陥った結果、市場が疑心暗鬼になり、USDCに売りが殺到、ドルとの連動が崩れたのである。

その後、米当局がSVB預金を全額保護する方針を発表し、USDCは数日で1ドル近くに戻った。しかし、もしこの決定が遅れていたら、USDCの信用は致命的に失われていた可能性がある。

一方、SoFiのように、FRB口座を直接保有する商業銀行がステーブルコインを発行した場合、状況はまったく異なる。裏付け資産をFRB口座に置く運用設計にしていれば、中央銀行の倒産が想定されない以上、SVBショックのような「カウンターパーティーリスク」を排除できる。

今後、たとえ市場でいかなる事態が発生しても、金融資産の裏付けが完全である限り、1ドルを割り込む合理的理由がなくなる。すなわち、1ドル=1コインの価値は理論的に崩れない。なぜなら、ユーザーから償還要求があった場合でも、SoFiはFRB口座から即時・確定的に支払いを実行できるからだ。

“常に”安定した価値で交換できることを本質とするステーブルコインという以上、この差は極めて大きな意味を持つ。

FRB口座を持つことは、信用リスクゼロの資金保全とリアルタイム決済の完全性――ステーブルコインにとって最も重要な“信頼の根幹”――を手にすることを意味する。

だからこそ、SoFiのようにFRB口座を直接持つ銀行のみが、ステーブルコインの価値を中央銀行マネーで担保できる唯一の存在になり得るのだ。

後編へ続く。

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