“FRB口座”を持つ唯一の銀行 ― SoFiが握るステーブルコイン時代の覇権【第2部 後編】
「第2部 前編」では、SVBショックが突きつけた「ステーブルコインのリスク」を見た。Circle社がFRB口座を持たなかったがゆえに、1ドル=1コインの前提が崩れた瞬間である。
今回の後編では、FRB口座を持つ商業銀行SoFiが、どのようにこの構造的メリットから“ノーリスク・ハイリターン”の収益源を手にし、ステーブルコイン事業における総合的優位性を築いていくのか――その実像を掘り下げていく。
<ノーリスク・ハイリターンの高い運用収益>
信託銀行は、ステーブルコイン準備資産を自らの信託勘定で保管・運用できる。しかし、原則FRBの決済システムに直接参加することができない。結果として、運用する短期国債といった資産も、FRB口座を通じた直接決済は不可能のため、最終的には商業銀行を経由せざるを得ず、利息の一部は商業銀行側に帰属する。当然、マネーサービス事業(MSB)も同様だ。つまり、彼らは常に銀行インフラの“上に乗る存在”となる。
一方、SoFiは国家認可の商業銀行(National Bank)として、FRB口座を直接保有している。ステーブルコイン発行の裏付けとなる準備資産、たとえば現金を何も考えず、FRB口座に直接ただ預け入れるだけで、政策金利から生まれる利息収入をFRB内の口座で享受できる。今のような高金利環境下では“ノーリスク・ハイリターン”の金利収入を生む。
以前見たように、あくまで一つのシナリオにすぎないが、仮に2030年、SoFiのステーブルコイン発行残高が約1,000億ドルに達し、FF金利が2%の場合、運用収益は20億ドルに達する。この運用収益部分は実質的な原価はほとんどないことから、90〜100%近くの営業利益率が見込める。SoFiの2025年の最終損益予想が4.6億ドルであることを考えると、ノーリスクで20億ドルの収益は極めて大きなインパクトを持つ。
<ステーブルコイン事業におけるSoFiの優位性>
CircleやPaxosが信託銀行免許を取得したとしても、銀行免許を持つSoFiと比較した場合、原則FRB口座へのアクセス権を持てないため、信頼性と収益性で劣る。また預金・貸付・証券などの金融サービスを展開できない上、直接消費者との接点を持つことは難しく、ステーブルコイン事業として進出可能な領域は機関投資家間決済(B2B)のみである。
一方、SoFiはFRB口座へのアクセス権を持つ。またBaaS(Banking-as-a-Service)事業を通じたB2B市場へのアクセスを持ち、2025年末には約1,300万人を超える会員、BaaS事業を通じて約1億6,000万人ものユーザー基盤ともつながっていることから、B2C市場に対しても強いアクセス権を持つ。
加えて、SoFi Bankの預金はFDIC(連邦預金保険公社)による保護対象である。つまり、FRB口座による「中央銀行マネー」としての安全性に加え、万が一の際には連邦政府による預金保護が機能する。
この二重の安全網「FRB×FDIC」こそが、SoFiを他のステーブルコイン発行体と根本的に分ける制度的優位性である。
あらためて市場を振り返ってみると、次のような状況である。
・市場シェアNo.1のTether社(USDT)は、法制度への順守姿勢が不明確であり、米国内で大きなシェアを持つことはない。
・市場シェアNo.2のCircle社(USDC)や、3番手グループの一角を占めるPaxos社(PYUSD)は「全国信託銀行免許」を申請中である。
・大手銀行のJ.P.モルガンやCitigroupも、ステーブルコインの実証実験を進めている。ただし、これらはいずれも法人間決済など限定的な用途にとどまり、一般向けのステーブルコイン発行を正式に公表していない。
・GAFAMがステーブルコインを発行する可能性は極めて低い。
・米国で銀行免許を持ち、かつ事業として成功しているフィンテックはSoFiのみ。そして、ステーブルコインの発行を明言している。
このような状況から、少なくとも当面は、FRB口座にアクセス権を持つステーブルコイン発行事業体はSoFiのみであり、唯一無二の存在となりそうだ。
以前、B2B市場におけるSoFiのシェアを2030年に5%程度と試算したが、前編で述べたカウンターパーティーリスクを重く見る動きが広がれば、B2B市場でもSoFiの存在感は一段と高まる可能性がある。
───
最終的に、機関投資家は「信頼性」で判断する。
現時点でSoFiにはステーブルコイン発行の実績こそないものの、FRB口座を通じて国家の決済インフラに直接アクセスすることで、決済不履行リスクを極限まで排除できるという点で、他社にはない絶対的な信頼の基盤を持つ。今後実績が積み上がるにつれ、カウンターパーティーリスクを内包するCircleよりもSoFiを選ぶ企業・投資家が増えていくだろう。
“信頼”こそ金融の本質――市場は、その真価を静かに評価し始めるときが来る。
面白かったという方は、「スキ」💖やフォロー🙌、SNSでの拡散📢をお願いします!!多くの「スキ」や「フォロー」が、次の原稿を書き続ける大きな力になります💪
【免責事項】 本ブログは情報提供を目的とし、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。内容は執筆時点の情報に基づき、将来的に変更される可能性があります。投資判断は自己責任で行い、十分な調査のうえ決定してください。本ブログの内容を基にした投資損失について、当方は一切の責任を負いません。また、外部リンクや第三者情報の正確性も保証するものではなく、各自の判断でご利用ください。

