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ステーブルコインはドル箱?SoFiへの株価インパクトを試算⑧【中編】B2B市場から見た収益インパクト

前回、2030年の世界のステーブルコイン市場を以下のように想定した。
・ステーブルコイン発行残高:2兆ドル
・ステーブルコイン発行残高のドル建て比率:90%(1.8兆ドル)
・ドル建てステーブルコインB2B・B2C比率:90%(1.62兆ドル)・10%(0.18兆ドル)

今回は2030年の世界のステーブルコイン市場で、SoFiが発行するステーブルコインがB2B市場で何%のシェアを取れるか、そしてそのときの収益インパクトを見ていく。

<FRBが警戒する通貨の影>
米国政府がステーブルコインの規制強化に動く大きな理由の一つは、金融政策の支配権を失うことへの恐れからだ。Tetherをはじめとした民間発行のステーブルコインが無秩序に流通すれば、FRBの監督を受けない「ドルのコピー」が経済圏に大量に存在することを意味する。

この影響が広がれば、FRBが政策金利を操作しても市場が思惑どおりに動かなくなる。そのため、法的には非銀行事業体にも発行を認めつつ、実質的には銀行と同等の監督体制を求める方向に進んでいる。この方向性は米国だけでなく、EUや日本でも同様であり、厳しい監督下での発行が国際的な標準となっていくだろう。

この流れを踏まえると、現時点で圧倒的シェアを有しているTether社も、各国の規制に準拠しない限り、利用範囲を徐々に狭めていく。

一方、米国大手のステーブルコイン発行体であるCircleは2025年6月末に全米信託銀行(National Trust Bank)チャーターを申請し、PayPalと提携するPaxosも同様に全米信託銀行チャーターへの転換申請を進めている。

もっとも、CircleやPaxosが申請している全米信託銀行(National Trust Bank)チャーターは、一般的な銀行免許とは異なり、取得しても“商業銀行”になるわけではない。それでも、非銀行の発行体が全米信託銀行という“銀行に近い監督枠”に自ら近づこうとしていることは明らかだ。

このように、「ステーブルコイン発行者=銀行」という構図が、今後の世界的潮流になると見られる。また、これはすなわち、GAFAMを筆頭とする巨大テック企業が参入するシナリオもほぼ消滅したことを意味する。これはSoFiにとって大きな意味を持つ。

<引き続き続く二強体制>
現在のステーブルコイン市場は、USDT(Tether)が約65〜70%、USDC(Circle)が約25〜30%を占める二強体制である。

Tetherは主要国での拡大には限界がある一方、規制の緩い地域や通貨不安が強い国々では「ドルの代替通貨」として定着している。そのため、市場シェアは下落傾向をたどるものの、今後も決済・送金インフラとして存続し続けるだろう。

Circleは、すでに世界185を超える国と地域でUSDCネットワークを展開し、Stripe、Shopify、Coinbaseなど主要な決済・金融プラットフォームが接続している。この先行者利益とネットワーク効果は大きく、今後もシェアを拡大していく可能性が高い。

このため、B2B領域では引き続き、Tether・Circleの二強が70〜90%のシェアを獲得・維持し、残りを複数のプレイヤーが分け合う構図を想定しておくのが無難だろう。

そのなかで、SoFiは米国内で銀行ライセンスを保有する数少ないフィンテックであり、かつBaaS基盤を保有する。よって、SoFiはステーブルコインを自社で利用するだけでなく、ほかの銀行やフィンテック企業がSoFiのBaaS基盤を介して、自社ブランドのステーブルコインやウォレット機能を展開することが可能だ。

この「銀行×テック」の二重構造が、ほかのフィンテックにはない強みとなる。特に、フィンテック自らがステーブルコイン発行者に簡単になれないGENIUS Actの下では、このモデルが有効に機能し、一定の市場シェアを獲得することが可能だ。

一方、実績のないSoFiが、B2Bトランザクションの中核を握る国際的な決済ネットワークに大きく食い込んでいく姿は想像しがたい。SoFiが狙える現実的な領域は、現時点では既存顧客を中心とした「新興フィンテック」や「Airbnb・Uberといったプラットフォーム企業」になるだろう。

<2030年時点の主要企業と想定シェア>
では、このSoFiがB2B市場で、どれほどの収益インパクトを生むのか。

2030年の世界のステーブルコイン市場(B2B)のシェアは以下のようなイメージで、SoFiはそのなかで5%程度を占めるのではないだろうか。

・Circle(USDC):40~50% ※先行社利益拡大・米国機関投資家中心
・Tether(USDT):30~40% ※グローバル・非米圏
・そのほか(J.P.モルガン、Paxosなど):10〜20% ※大手法人・特定セグメント
・SoFi:5%前後 ※フィンテック・プラットフォーマー向けBaaS展開

ドル建てステーブルコインB2B市場約1.6兆ドルを前提とすれば、SoFiのシェア5%は約800億ドルの発行、Velocity(決済回転率)を30倍とすれば、約2.4兆ドルの年間取扱高に相当する。

※Velocity:お金がどれだけ経済の中を回転して使われているかを示す指標。Velocity30倍ということは、発行された1ドル分のSoFi Coinが30回/年(30ドル/年)使われることを意味する。Citiのレポートでは50回/年を想定しており、30倍という前提は控えめな水準といえる。

先日の記事と同じ方法で計算するとB2B市場から得られるSoFiの収益インパクトは以下となる。

・準備金運用収益:800億ドル×2%=16億ドル
・手数料収入:2.4兆ドル×0.05%=12億ドル
・最終利益:(16億ドル×90%+12億ドル×50%)×(1−25%)=約15億ドル
(利益率:準備金運用収益90%、手数料収入50%を前提)

2025年の最終利益予想が3.7億ドルのため、約4倍の利益押し上げ要因となり、ステーブルコイン事業は、SoFiにとっては強烈な収益エンジンとなる。

SoFiが奪取可能なB2Bシェアとして、10%は理想、5%が現実、そして3%でも株価インパクトは大きい――。これが、現時点での現実的な結論ではないだろうか。

次回はこのシリーズの完結編、B2C市場を含めた株価インパクトの最終試算となる。

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