ステーブルコインはドル箱?SoFiへの株価インパクトを試算⑦【前編】2030年世界市場の全体像
前回描いた「SoFi Coinが日常に溶け込み、お金が生きて回る経済圏」。この循環が本格的に動き出したとき、SoFiの収益構造はどう変わるのか。
ここからは、ステーブルコイン事業を通じたSoFiへの株価インパクトを見ていく。まず、収益予想の前提として、2030年の世界のステーブルコイン市場を次のとおりとする。
―2030年:世界のステーブルコイン市場―
・ステーブルコイン発行残高:2兆ドル
・ステーブルコイン発行残高のドル建て比率:90%(1.8兆ドル)
・ドル建てステーブルコインB2B・B2C比率:90%(1.62兆ドル)・10%(0.18兆ドル)
それでは、それぞれの項目を見ていく。
<2030年世界のステーブルコイン発行残高:2兆ドル>
2025年10月現在、世界のステーブルコイン発行残高は3,000億ドルを突破した。2023年末時点で約1,300億ドル、2024年末時点で約2,000億ドルだったことを踏まえると、年率50%を超える驚異的な成長スピードである。(このままのペースを保つことができれば2030年に2兆ドルを超える。)
主要金融機関も今後の成長を予測している。Citiは最新レポート「Stablecoins 2030」で、2030年の世界におけるステーブルコイン発行残高をベースケースで1.9兆ドル、強気シナリオで4兆ドルを想定している。
また、Standard Charteredは、ステーブルコイン発行残高は“2028年末”までに2兆ドルに達するというシナリオを示し、米国財務省の諮問委員会が公表したレポートでも、この数字が政策分析の前提として採用されている。
さらに決定的な追い風となるのが、米国の「GENIUS Act」である。この法案の施行により、企業や個人が安心してステーブルコインを活用できる環境が整うため、米国を中心にステーブルコイン発行が急速に拡大していくだろう。したがって、「2030年に2兆ドル」という数字は十分に到達可能な水準と言える。
<世界のステーブルコイン発行残高:ドル建て比率90%>
2030年時点でステーブルコイン市場の約9割は米ドル建てと想定する。その最大の理由は、米ドルが世界の「基軸通貨」であり続けるからだ。
現時点においても、主要なステーブルコインの発行残高のほぼ100%が米ドル建てである。これは偶然ではなく、国際貿易・資本取引・商品取引など、グローバル経済のあらゆる基盤が長年にわたりドルを中心に形成されてきたためである。この支配的地位が今後も簡単に崩れることは考えづらい。
さらに制度面でも、米国が他地域を大きくリードしている。
EUはステーブルコインに関する包括的な規制(MiCA)を世界に先駆けて2023年に採択したものの、「拡大」よりも「統制」を重視する姿勢が強く、さらに単一通貨圏でありながら27か国それぞれの監督当局が並立しているため、スピード感を欠く。
日本においても安全性と信頼性を最優先に制度整備を進めているが、国内利用に特化しており、国際的な発行・流通を前提とする仕組みにはまだ至っていない。
中国もCBDC(中央銀行によるデジタル法定通貨)を国際化させれば、特定地域では普及する可能性があるが、厳格な為替管理を踏まえると、世界市場で主流になるには相当な時間と制度変革が必要である。
また仮に、EU・日本・中国が法制度を万全に整えても、もともとユーロ・日本円・中国元は国際的な取引シェアが小さく、金融ネットワークの広がりも限定的であることから、これらステーブルコインが世界中で使われる可能性は低い。制度面での先進性と、通貨の国際的な影響力は一致しないからである。
このような背景から、2030年時点でも世界のステーブルコインの9割程度は米ドル建てと見るのが自然である。
<ドル建てステーブルコインB2B・B2C比率:90%・10% ※発行残高ベース>
現在のステーブルコイン利用は、主に暗号資産取引所やDeFi(分散型金融)内での機関投資家間決済(B2B)に集中している。一方で、消費者向けの利用(B2C)は限定的であり、PayPalやShopifyなど一部の決済プラットフォームで試験的な導入が始まった段階にとどまる。
しかし、今後、B2C領域が拡大していくのは確実だ。特に米国では、制度設計が進み、法に沿った形でステーブルコインが発行されていく。スマホ決済やデジタルウォレットの普及も進み、消費者が意識することなくステーブルコインを利用できる環境が整っていく。
企業から個人への送金や、国際送金・決済といった領域では、すでにステーブルコインの利用が意識され始めている。実際に、Airbnb・Uberがステーブルコインでの支払いを検討中という記事も多く、ShopifyもUSDCでの支払いをすでに受け付け始めている。
こうした環境変化により、現在ほぼゼロに近いB2C利用も、2030年までに全体の1割前後にまで拡大し、発行残高ベースで1,800億ドル規模に達することは十分現実的だろう。むしろより高い割合になっても何ら不思議ではないものの、ここではB2B・B2Cの比率:90%・10%と仮置きする。
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