ステーブルコインはドル箱?SoFiへの株価インパクトを試算① ―「Tether・Circleを超える構造的チャンス」
序章では、「ステーブルコイン=打ち出の小槌」という驚異の利益構造を見た。今回は、その「ドル箱市場」の主役であるTetherとCircle、そしてそこに挑むSoFiが、どんな構図で競い合おうとしているのか、その全貌を解き明かしていく。
<市場規模と主要プレイヤー整理>
ステーブルコインの発行額は2025年時点では既に数千億ドル規模に達しており、2030年には数兆ドルに急拡大すると見込まれている。
また主要プレイヤーとして、2025年現在では、USDT(Tether社)が65%~70%、USDC(Circle社:CRCL)が25%~30%、そのほか3番手グループが数%程度を占める。事実上、2社の寡占状態だ。

【グローバル市場最大手USDT】
2014年に発行されたUSDTは、最も歴史が長く、世界の仮想通貨取引所の多くで「基軸通貨」として採用されている。BTC(ビットコイン)やETH(イーサリアム)を買う時の中継通貨として使われる比率が非常に高い。
また、特にアジアや新興国では規制の差はあるものの、実質的なドル代替通貨として流通し、トルコ・アルゼンチン・ナイジェリアなど自国通貨のインフレが激しい国では「USDT = デジタルドル」として利用される例が多い。さらに非公式な国際送金インフラとしての役割も担っている。
しかし、Tether社が現在も完全な監査を受けていない点は信頼性を欠く。
Tether社は「暗号資産業界の未成熟さやリスクから大手監査法人が対応に消極的である」と指摘する。しかし実際には、ステーブルコインの裏付け資産の全容を明らかにすれば都合の悪い事実が露見する可能性や、本社がオフショア地域に登記されていることなどからも、監査を避けているのが実情だと指摘する声もある。
米国の規制当局から資産の不透明性を理由に制裁を受けた過去もある。いまもTetherが公表しているのは「限定的証明」にすぎず、それは特定の時点での残高を確認するだけのものであり、会計上の「完全監査」とは異なる。
つまり、Tetherは世界最大のステーブルコイン発行体でありながら、裏付け資産の中身を誰も完全には検証できない状態にある。その意味においては、真に信頼される決済インフラにはなり得ない。
事実、米国での利用は一部にとどまる。また欧州での利用も限定的で、今後の規制動向によっては取引が制限される可能性もある。
【USDCのB2B戦略】
「USDCを決済・資金移動インフラとして位置づけるB2B戦略」を展開し、Visa、Mastercard、Stripe、PayPalなどの大手決済ネットワークやフィンテック企業と連携。USDCを通じてグローバルに資金を移動する法人が増加している。
USDTがグローバルに広く利用されている一方で、米国規制への厳格な準拠を重視するUSDCは、利用できない地域や取引所も多い。その結果、取引量ではUSDTに劣るものの、信用度では優位に立つ。
なお、USDCの発行体であるCircle社は、米国規制に準拠し、監査体制と透明性が高い。準備金(ステーブルコインの価値を保つための裏付け資産)は主に米国短期国債と現金で構成されており、資産の安全性と流動性の両立を実現している。
【3番手グループの動向】
PayPalが提携するPaxos発行の「PYUSD」をはじめ、Binanceが採用する「FDUSD」やGeminiの「GUSD」など、第3グループに位置するステーブルコインも登場している。これらはいずれも発行規模ではUSDTやUSDCに劣るものの、それぞれの事業基盤を活かした独自の流通モデルを展開している。
特にPayPalは、自社決済プラットフォームに「PYUSD」を組み込み、ユーザーが日常的にステーブルコインを利用できる環境整備を進めている。一方、Binanceの「FDUSD」は取引所内の基軸通貨として流動性を確保し、Geminiの「GUSD」は規制準拠の安心感を武器に限定的ながらも一定の流通を維持している。
ここまで見てきたように、ステーブルコイン市場はすでに「ドル箱」と化し、TetherとCircleが圧倒的なシェアを握っている。しかし、いずれのステーブルコイン発行体にもない、日常生活と直結した金融サービス網をSoFiはすでに手中に収めている。
次回は、SoFiの圧倒的な会員基盤とワンストップ型の金融プラットフォームを背景に、ステーブルコインをどのように活用しながら競合との差別化を進め、市場シェアを広げていくのかを掘り下げていく。
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