ステーブルコインはドル箱?SoFiが握る「競合優位性」と市場の主導権【株価インパクト試算②】
前回見たように、ステーブルコイン市場はTetherとCircleが寡占する「ドル箱産業」と化している。しかし、2社とも「金融サービスの全体像」を自ら完結できてはいない。

その中で、銀行・証券・ローン・クレジットカードなどを一体化したエコシステムをすでに構築しているSoFiは、次の主役となる可能性を秘めている。今回は、SoFiがどのような競合優位性を発揮し、市場で存在感を高めていくのかを見ていく。
<競合優位性>
現在の二大ステーブルコイン発行体は Tether(USDT)と Circle(USDC)であるが、SoFiは両社と明確に差別化できる余地を持つ。
2025年7月に成立したGENIUS Actは「米国の銀行・信用組合、または新たに認可を受けた非銀行事業者」によるステーブルコイン発行を優遇する枠組みである。このため、米国外のオフショアを本社とするTether社は相対的に不利な立場に置かれる。
加えて、完全監査を受けていないなど、ステーブルコインの裏付けとなる資産の透明性に問題がある。よって、個人的にはUSDTは今後シェアを落としていくとみており、少なくとも、米国内において、SoFiの強敵となることはない。
一方のCircleは、法人向け決済や資金移動インフラとしてのB2B領域に強みを持ち、Visa、Stripe、PayPalなど大手フィンテック企業との提携を通じて利用を拡大している。しかし、Circle自身はユーザー基盤を直接抱えていない。
<SoFiの強み>
これに対して SoFi は、すでに米国で約1,200万人の会員を有し、約300億ドルの預金残高を積み上げ、「金融スーパーアプリ」としてのエコシステムを確立している。したがって、SoFiがステーブルコインを発行すれば、単なる送金用途を超えて、日常の買い物や公共料金の支払いといった「日常決済」までをもカバーできる可能性がある。
実際、CEO Anthony Noto(アンソニー・ノト)は2025年9月にゴールドマン・サックスが主催したカンファレンスで、SoFiステーブルコインを活用した新たな決済構想「SoFi Pay」に言及している。
ステーブルコインを活用した「SoFi Pay」による支払いは、カード会社などの中間業者を介さないため、店舗側はクレジットカードの決済手数料を負担する必要がなくなる。さらに、SoFiがステーブルコインから得る運用収益の一部を還元することで、店舗に「経済的インセンティブを与える可能性すらある」という。
つまり、Notoが示唆するのは、SoFiが銀行としての金利収益を原資に「加盟店にインセンティブを付与しながら決済ネットワークを拡大する」新たな構想である。
――「手数料を払う」時代が終わり、「受け取る」時代の始まり。お店に報酬が還元される“逆転の決済構造”――
あくまで現時点ではアイデア段階かもしれないが、もしこれが実現すれば、決済ビジネスの前提を根底から覆し、日常決済のインフラをステーブルコインで再構築する可能性を秘めている。
加えて、特筆すべきは、SoFiが BaaS(Banking-as-a-Service)を展開している点である。SoFi傘下のGalileoやTechnisysを通じて、多くのフィンテック企業に決済・口座・カード発行基盤を提供しており、BaaS顧客の「1億6,000万人」ものユーザーとつながっている。
つまり、SoFiのステーブルコインは、自社会員だけではなく、BaaSを通じて外部パートナーのエコシステム全体に浸透し得る。この「二重のネットワーク効果」こそが、TetherやCircleにはないSoFi独自の強みである。
したがって、Tetherが規制面で不利となり、Circleが直接的なユーザー基盤を欠く中、SoFiは「銀行としての制度的優位」「既存会員基盤の厚み」「BaaSを通じたネットワーク」の三つの強みを武器に、ステーブルコイン市場で独自のポジションを確立できる可能性が高い。
なお、銀行免許を持っている利点はほかにもある。次回、改めて2025年7月に成立した「GENIUS Act」を整理する。
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