GAFAMが越えられない“銀行の壁” ― SoFi vs GAFAM―制度が決める明暗【第1部 前編】
以前、「GAFAMを筆頭とする巨大テック企業がステーブルコイン市場に参入するシナリオはほぼ消滅した」と書いた。
2025年7月に成立したGENIUS Actは、銀行に加え、非銀行事業体にもステーブルコイン発行を認めつつ、銀行と同等の監督体制を求めており、実質的に「ステーブルコイン発行者=銀行」という構図となりつつあるからだ。
今回は、改めてGAFAMがステーブルコイン発行体になれない理由を制度面から検証する。
結論から言えば、GAFAMがステーブルコイン発行体になるのは、制度的にも政治的にも極めて困難である。不可能と言っても良い。万が一、奇跡的になれたとしても、銀行免許を持つSoFiとステーブルコイン事業において、同じ土俵で戦うことはできない。これは他のフィンテックにも同じことが言える。
SoFiはステーブルコイン事業において、決定的な強みをもつ。今シリーズではこれを明らかにしていく。
<GAFAMが金融進出するのが難しい理由>
1.商業と銀行の分離原則
米国の銀行規制の根幹には「銀行と商業の分離原則」がある。
【銀行と商業の分離原則】
銀行が商業事業(製造・流通・小売など、金融以外の営利活動)を営むこと、あるいは商業企業が銀行を支配することを禁止する原則である。日本ではセブン銀行やイオン銀行のように商業企業が銀行を持つことも珍しくないが、米国では銀行と商業の融合は厳しく制限されている。
GAFAMは本業が銀行ではないため、ステーブルコインの発行体となるには、子会社を設立して銀行業に参入する方法が思い浮かぶが、子会社として銀行を保有する企業は「銀行持株会社」とみなされ、FRB(連邦準備制度理事会)の厳格な監督下に置かれる。
具体的には「銀行株式の25%以上を保有」もしくは「経営を実質的に支配している場合」、その企業は銀行を支配していると見なされ、商業活動に大きな制限が課される。そのため、GAFAMのような多角的事業を行う巨大テック企業が、銀行を子会社として保有することは不可能である。
2.産業貸付会社(ILC)の政治的封鎖
ただし、米国にはILCという「銀行持株会社」の適用を受けず、FRBの厳格な監督下にも置かれない特異な銀行形態が存在する。このため、商業会社であっても、ILC子会社を通じて銀行業に参入することが可能だ。
実際に、2005年にウォルマートがこの“抜け道”を利用し、ILCの設立を申請した。しかし、銀行と商業の一体化、また市場支配力のさらなる高まりへの懸念から、銀行業界・議会・労組などが“猛反発”した。
「ウォルマート銀行が誕生すれば、地域の銀行も雇用も飲み込まれる――」。そうした声が全米に広がり、1万件を超える反対意見が殺到。
政府当局は2006年に商業企業による新規ILC申請を一時停止し、最終的にウォルマート自身が「これ以上は得策ではない」と判断し、2007年に申請を自ら撤回した。
また、Amazonも何度も申請を噂されるものの、過去申請には至ったことはない。近年の成功例としては、Square(現Block)など一部のみである。したがって、GAFAM規模の企業がILC免許を取得するのは、現実的ではない。
【コラム:ウォルマートが「銀行」になろうとした理由】
2005年にウォルマートがILC設立の申請をした目的は、ウォルマート自身が「銀行業務を行う意図はない」と明言していたように、銀行業への本格的な参入ではなく、クレジットカードやデビットカードの「決済手数料の削減」であった。
当時から、ウォルマートは年間数十億ドルに上るカード決済手数料をVisaやMastercardなどに支払っており、大きな負担となっていたことから、銀行機能を持つことで決済処理を自社内で完結させ、コストを大幅に削減する狙いだった。
興味深いことに、ウォルマートがILCの設立を申請した2005年、米国では加盟店各社が Visa/Mastercard および主要銀行を相手取り、クレジット・デビットカード取引での「インターチェンジ手数料(加盟店手数料)」が不当に高く設定されているとして、反トラスト法違反で集団訴訟を起こした。和解案がいくつも提示されたものの、訴訟関連の手続きはいまだ継続している。
これらの事例からも、当時から現在に至るまで、巨額の決済手数料がもたらす構造的課題と、それに対する潜在的な不満が根強く存在することがわかる。
「第1部 後編」へ続く。後編では、制度の壁を越えるための“抜け道”が存在するのかを検証する。
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