見出し画像

SoFi景気後退に伴う業績下方リスク-後編-

前回は「景気後退に伴う業績下方リスク」として、「貸し倒れリスクの上昇懸念」を中心に解説をした。今回は、景気後退に伴い生じるそのほかのリスクを見ていく。

※前提条件は前回と同様です。(念のため、再掲)
【前提】軽い景気後退、すなわち経済活動が一時的に縮小するが、大規模な失業や深刻な金融危機を伴わない比較的穏やかな景気後退を想定。具体的なイメージは次のとおり。
・GDPが2四半期連続でマイナス成長に陥ったが、落ち込みは小幅
・金融システムは健全に保たれ、信用不安や大規模な銀行破綻は起きていない
・中央銀行や政府の迅速な政策対応(利下げ・財政出動)によって早期に回復

<景気後退に伴う業績下方リスク>
「2.ローン需要に与える影響」
景気後退に陥ると、新規ローン需要は失業や将来不安から減少する。一方で、景気後退時は金利の低下から、既存ローンの借り換え需要が増加する。

例:25万ドルの住宅ローンを固定金利5%、平均残存期間20年で借りている場合、固定金利が4%に下がれば総返済額は約3万2000ドル減少する。一方、借り換えに伴う手数料は数%前後と想定され、借り換えをした方が圧倒的なコスト削減になる

よって、景気後退時は「新規需要の減少」と「借り換え需要の増加」との綱引きとなり、そのバランスを見極めることが、業績への影響を把握するうえで重要だ。

2024年のローン実行額の内訳は、「個人ローン76%」「学生ローン16%」「住宅ローン8%」となっている。以下にそれぞれのローン需要がどうなるかを考察する。

・個人ローン
Lending Tree(ティッカー:TREE)の調査によると、「借金の一本化(38.3%)」「クレジットカードローンの借り換え(10.5%)」と、利用者の約半数がほかの負債からの借り換えを目的として、個人ローンを借りている。また、日常の生活費や医療費など、景気の良し悪しに関係のない項目も含まれている。

Lending Tree Webサイトより作成

SoFiもこの調査結果とおおむね同様の傾向と考えると、景気後退に伴う金利の低下は比較的中立に働くと思われる。少なくとも一定程度、新規需要の減少を補う借り換え需要の増加が見込めるため、大幅な落ち込みは想定しづらい。

・学生ローン
SoFiの学生ローンは、借り換えが主体である。また経営陣によると、SoFiは2,800億ドル規模の学生ローン借り換え市場で、60%~70%のシェアを持つため、景気後退による金利の低下はプラスに働くと思われる。

【補足】米国では新規の学生ローンは「審査が緩やか(信用スコアが重視されない)」「利率が比較的低い」などを理由とし、政府系の連邦学生ローン(Federal Student Loans)が圧倒的に多く利用されている。

・住宅ローン
SoFiの住宅ローンは、新規だけでなく借り換えにも対応可能な体制を整えており、金利低下局面でも柔軟に対応できる強みがある。

景気後退によって雇用や所得環境が悪化すれば、新規住宅取得の需要は総じて減少すると考えられる。一方で、近年の高金利を理由に購入を先送りしていた層も一定数存在しており、金利の低下が明確になれば、そうした潜在的な購入層が市場に戻ってくる可能性もある。

また、金利低下は借り換え需要を喚起する要因にもなり得るが、米国では2020~2021年の低金利期に2.5~3.0%の30年固定で住宅ローンを組んだ層が非常に多く、現在の水準から多少下がった程度では、借り換え需要は限定的にとどまると見られる。

したがって、景気後退に伴う金利低下は、住宅ローン事業に対して一部プラス要因となるものの、全体としては中立からややマイナスに作用する可能性がある。

まとめると、軽い景気後退に伴うローンの新規需要の減少は、金利低下を通じて、ローンの借り換え需要の増加を生むため、マイナスになる可能性はあるものの、大きな影響をもたらすことはないだろう。

<景気後退に伴う業績下方リスク>
「3.利ざやの縮小」

景気後退になれば、金利低下に伴い「貸出による利息収入-預金などに対する利息支出」の差である利ざやの縮小が予測される。しかし、上記2で確認した通り、ローンの新規需要が大きな影響を受けず、ローン残高も大幅に減少しないという前提の下、こちらも大きな打撃を受けることはないだろう。

主な理由として以下があげられる。
・SoFiのローン事業の競争力が高く、金利低下局面においてもローン金利の引き下げを最小限に抑えることができる
・預金金利の引き下げの余地が大きく、利ざやを確保しやすい(例:J.P.モルガンの預金金利は2025年7月現在0.01%と預金の引き下げ余地はない)

実際、NIM(純金利マージン=利ざや)の推移を見ても、米国の政策金利が2024年後半から低下に転じたにもかかわらず、SoFiのNIMは高水準を維持し、むしろ逆行するかのような動きを示している。

<景気後退に伴う業績下方リスク>
「4.金利低下時の運用収益悪化」

景気後退になれば、金利低下に伴い運用収益の悪化が予想される。しかし、こちらも影響は限定的だろう。

限定的になる理由として以下があげられる。
・預金残高の順調な増加に伴う運用収入増が、金利低下のマイナスの影響を(少なくとも一定程度は)相殺可能
・預金者に支払う金利水準が高いことから、預金金利の引き下げによるコスト削減余地がある

実際、2024年以降の金融サービス事業における金利収入を見ても、増加基調が崩れていないのがわかる。もちろん同じ軌跡をたどらない可能性もあるが、大きく落ち込むような事態も考えにくい。

まとめると、軽い景気後退であれば、大きな業績下方リスクを伴うことはなさそうである。

次回は、SoFiの投資リスクとして「現在の株価に過度な成長期待が織り込まれている可能性」をみていく。

【参考資料】
「SoFi成長の屋台骨を担う「ローン事業」に追い風-復調する学生・住宅ローン-」
「SoFiは金利が下がると儲かる?銀行との違いを解説」

【免責事項】 本ブログは情報提供を目的とし、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。内容は執筆時点の情報に基づき、将来的に変更される可能性があります。投資判断は自己責任で行い、十分な調査のうえ決定してください。本ブログの内容を基にした投資損失について、当方は一切の責任を負いません。また、外部リンクや第三者情報の正確性も保証するものではなく、各自の判断でご利用ください。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー