No.4【2026年10月改正・背景編】なぜ現物給与評価は見直されるのか?
― 改正の背景を分かりやすく解説 ―
※本記事は借上社宅制度の改正に関する解説です。
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【ご留意事項】
本記事は、借上社宅制度に関する一般的な情報提供および制度理解を目的として作成しています。記載内容は、一般的な制度上の考え方や実務上の整理を説明するものであり、特定の状況に対する税務・法務・労務上の判断、助言または保証を行うものではありません。
実際の運用にあたっては、会社ごとの制度設計・契約内容・運用実態等によって取扱いが異なる場合があります。個別案件については、必ず税理士、社会保険労務士、弁護士、または管轄の行政機関等へご確認・ご相談ください。
また、制度改正や行政解釈等により、将来的に取扱いが変更される可能性があります。最新情報については、国税庁・厚生労働省等の公表情報をご確認ください。
内容の正確性には十分配慮しておりますが、本記事に基づいて生じたいかなる損害等についても責任を負いかねます。
■ はじめに
2026年10月から、健康保険・厚生年金保険における
住宅に係る現物給与評価方法が見直されます。
改正内容については、
・評価額が変わる
・自己負担額を見直す必要があるかもしれない
といった点が注目されています。
しかし、
「そもそも、なぜ今回の改正が行われるのでしょうか。」
実は、この背景を理解すると、
今回の改正は単なる数字の変更ではなく、
制度全体を現在の実態に合わせて見直す改正であることが見えてきます。
今回は、その背景をできるだけ分かりやすく整理します。
■ 現物給与評価とは何か
会社から住宅などを提供されると、
従業員は給与以外の利益も受けています。
そのため社会保険では、
一定額を「現物給与」として評価し、
報酬に含める仕組みがあります。
つまり、
住宅を無料または低い負担で利用できること自体に経済的利益があるため、
一定の評価額を算定する制度です。
[参考]現物給与の基本的な仕組みや、所得税上の「賃貸料相当額」との
違いから整理したい方は、こちらの記事もご覧ください。
▶ 【第11回:借上社宅における現物給与とは?】
■ なぜ見直しが必要になったのか
今回の改正の背景として考えられる主な理由は、次の3点です。
① 現在の評価方法が長年運用されてきたこと
現行制度は長年にわたり運用されてきました。
しかし、
住宅事情や家賃相場は、
地域や時代によって大きく変化しています。
現行の評価方法が導入された当時と比較すると、
実際の住宅市場との乖離が生じている地域もあります。
② 地域ごとの差が大きくなってきたこと
現在の日本では、
都市部と地方では家賃水準が大きく異なります。
一方、
現物給与評価は一定の基準に基づいて算定されるため、
実際の住宅事情との違いが生じる場面もあったと考えられます。
今回の見直しでは、
より現在の実態に即した評価方法へ見直すことも背景の一つと
考えられます。
③ 社会経済情勢の変化
近年は、
住宅価格や賃貸市場、物価など、
社会経済情勢が大きく変化しています。
制度も長期間変更しないままでは、
実態とのズレが拡大する可能性があります。
そのため、
社会保険制度では、
社会経済情勢などを踏まえて制度が見直されることがあります。
■ 今回の改正は「社宅制度」を変えるものではない
ここは誤解されやすいポイントです。
今回見直されるのは、
社会保険上の住宅に係る現物給与評価方法です。
つまり、
借上社宅制度そのものを廃止したり、
利用できなくしたりする改正ではありません。
会社が借上社宅制度を導入できることに変わりはありません。
一方で、
評価方法が変わることによって、
自己負担額や制度設計の見直しが必要となる企業は出てくる可能性が
あります。
[参考]「制度は残るが、何を見直す必要があるのか」を実務目線で
整理した記事はこちらです。
▶ 【2026年10月改正・実務判断編】借上社宅は見直すべきか?
■ なぜ企業は背景を理解しておくべきなのか
制度趣旨を理解している企業は、
改正への対応も落ち着いて行えます。
逆に、
背景を知らないまま、
「自己負担額だけ変更する」
「家賃だけ変更する」
という対応をすると、
制度全体の整合性が取れなくなる場合もあります。
そのため、
改正内容だけでなく、
「なぜ制度が見直されたのか」まで理解しておくことは、
実務上も大きな意味があります。
■ 改正までの流れ(時系列)
※以下は、厚生労働省・日本年金機構等の公表資料をもとに
整理しています。

■ 今回の改正で注目すべき点
今回の改正を見ると、
単に評価額が変更されたのではなく、
住宅の評価方法そのものが見直されたことが分かります。
従来は、
「1畳当たりの価額」
という考え方でした。
一方、改正後は、
「床面積(㎡)当たりの価額」
という考え方へ変更されています。
つまり、
今回の改正は単なる金額改定ではなく、
住宅評価の基準そのものを現在の住宅事情に合わせて見直した改正と
いえます。
そのため、
企業では自己負担額だけではなく、
借上社宅制度全体の運用についても確認しておくことが望まれます。
■ コラム
なぜ「畳」から「㎡」へ変わったのか?
実は、この変更は今回の改正を象徴するポイントの一つです。
近年の住宅では、
・フローリング中心の住宅が増加
・洋室主体の間取りが一般化
・「○LDK」と床面積(㎡)で住宅を表示することが一般的
となっています。
そのため、
住宅市場では㎡表示が標準となり、
従来の畳数を基準とした評価方法との違いが生じる場面もありました。
今回の改正では、
こうした住宅実態も踏まえ、
より現在の実態に即した評価方法へ見直しが行われています。
「畳から㎡へ」という変更は、
単なる単位変更ではなく、
社会保険制度を現在の住宅事情に合わせてアップデートしたことを象
徴する改正ともいえるでしょう。
■ 企業が確認したいポイント
改正内容を踏まえ、次のような点を確認しておくことが望まれます。
・現物給与評価額への影響があるか
・自己負担額の設定に影響するか
・借上社宅制度の運用ルールとの整合性は取れているか
・社宅規程の見直しが必要か
・従業員への説明が必要か
企業によって影響の程度は異なるため、
制度全体を確認した上で対応を検討することが重要です。
■ まとめ
今回の改正は、
単なる評価額の変更ではありません。
社会保険制度を現在の住宅事情に合わせて見直すという側面があります。
借上社宅制度そのものが変わるわけではありませんが、
評価方法が変わることで、
制度設計や運用方法への影響が生じる企業もあります。
だからこそ、
改正内容だけを見るのではなく、
「なぜ制度が見直されたのか」という背景まで理解することが、
適切な実務対応につながります。
2026年10月の住宅現物給与改正について、
改正内容・影響・制度見直し・実務対応をまとめて確認したい方はこちらです。
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▶ 第3回|現物給与評価改正で借上社宅制度は見直すべきか?
自己負担額・家賃設定・社宅規程は変更が必要なのか。
会社として何を確認すべきかを実務目線で解説しています。
▶ 第4回|なぜ現物給与評価は見直されるのか?(本記事)
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著者
Yoshihiko Tagawa|借上社宅制度の研究家
借上社宅制度について、制度運用や社宅管理の観点から情報整理・発信を行っています。
毎月3000戸超の社宅運営に携わる中で、借上社宅制度の運用面・管理面に関する情報整理を行ってきました。
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