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【現物給与評価#02】住宅現物給与価額とは何ですか?

― 都道府県単価から住宅の現物給与を評価する仕組みをやさしく整理 ―


※本記事は現物給与評価Q&Aシリーズの一部です。
 
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【ご留意事項】
本記事は、借上社宅制度に関する一般的な情報提供および制度理解を目的として作成しています。記載内容は、一般的な制度上の考え方や実務上の整理を説明するものであり、特定の状況に対する税務・法務・労務上の判断、助言または保証を行うものではありません。
 
実際の運用にあたっては、会社ごとの制度設計・契約内容・運用実態等によって取扱いが異なる場合があります。個別案件については、必ず税理士、社会保険労務士、弁護士、または管轄の行政機関等へご確認・ご相談ください。
 
また、制度改正や行政解釈等により、将来的に取扱いが変更される可能性があります。最新情報については、国税庁・厚生労働省等の公表情報をご確認ください。
内容の正確性には十分配慮しておりますが、本記事に基づいて生じたいかなる損害等についても責任を負いかねます。



Q1. 住宅現物給与価額とは何ですか?

住宅現物給与価額とは、会社から提供される住宅の利益を、社会保険上の
金額に換算したものです。

 
社会保険では、会社から従業員へ支給される報酬は、現金で支払われる
給与だけに限られません。
 
例えば、会社が従業員へ社宅や寮などの住宅を提供している場合、
その住宅の利用によって従業員が受ける利益が、社会保険上の現物給与
して取り扱われることがあります。
 
その住宅による利益を一定の基準によって金額に換算したものが、
一般に本記事でいう住宅現物給与価額です。
 
公式資料では、「住宅の現物給与価額」や「住宅の利益の額」などの表現が用いられています。
 
現物給与がある場合には、その価額を金銭による報酬と合算し、
標準報酬月額を決定します。
 
つまり、住宅現物給与価額は、
会社が実際に貸主へ支払っている家賃ではなく、
住宅という利益を社会保険上どのように評価するかを示す金額

と考えると分かりやすいでしょう。


Q2. 都道府県単価とは何が違うのですか?

都道府県単価は計算に使う「単価」であり、住宅現物給与価額はその単価
などを用いて算定する「住宅全体の評価額」です。

 
第1回で解説した都道府県単価は、それだけで住宅の現物給与価額になる
わけではありません。
 
都道府県単価は、住宅の広さなどと組み合わせて、住宅の現物給与価額を
算定するための計算要素の一つです。
 
関係を簡単に整理すると、次のようになります。
都道府県ごとに定められた単価
    ×
評価対象となる住宅の広さ
    ↓
住宅全体の現物給与価額
 
2026年9月30日までは、原則として居住用の室の畳数に、都道府県ごとの「1畳当たりの価額」を乗じて算定します。
 
2026年10月1日からは、原則として住宅の総床面積に、都道府県ごとの
「1㎡当たりの価額」を乗じて算定する方法へ変更されます。
 
したがって、
・都道府県単価=計算に使う単価
・住宅現物給与価額=住宅全体について算定された評価額
という違いがあります。
 
都道府県単価だけを見ても、その従業員の住宅現物給与価額は
分かりません。
 
住宅の広さや適用する地域など、必要な情報を確認したうえで算定することになります。

[参考]都道府県単価そのものの意味や決まり方を詳しく知りたい方は、
               こちらも参考になります。
【Q&A:都道府県単価とは何ですか?勝手に決められますか?】
👥 都道府県単価の基本的な考え方を整理したい方へ 


Q3. 実際の家賃と同じ金額になりますか?


いいえ。住宅現物給与価額と、実際に貸主へ支払う家賃は別の金額です。
 
借上社宅では、会社が貸主との賃貸借契約に基づき、実際の家賃を
支払います。
 
一方、住宅現物給与価額は、その契約上の家賃をそのまま使用するもの
ではありません。
社会保険では、住宅という福利厚生によって従業員が受ける利益を、
公表されている基準に基づいて評価し、住宅の現物給与価額を算定します。
 
そのため、借上社宅では、次の3つの金額を区別して考えることが重要
です。
① 大家へ支払う実際の家賃
会社が賃貸借契約に基づいて貸主へ支払う金額です。
 
② 従業員が負担する社宅使用料
従業員が借上社宅を利用するために、会社へ支払う負担額です。
 
③ 住宅現物給与価額
住宅という福利厚生を、社会保険上の基準に基づいて評価した金額です。
 
 
この3つは、それぞれ目的や役割が異なります。
そのため、
・実際の家賃が、そのまま住宅現物給与価額になるわけではありません。
・従業員が負担する社宅使用料が、住宅現物給与価額と同じ金額になる
    わけでもありません。

 
社会保険では、実際の家賃ではなく、
公表されている基準に基づいて住宅現物給与価額を算定する
という点を
押さえておくことが重要です。
 
つまり、「契約上の家賃」と「社会保険上の評価額」は、
それぞれ目的が異なる別の金額
として考えると理解しやすいでしょう。


Q4. 住宅現物給与価額の全額が、そのまま報酬に加算されるのですか?

必ずしも全額が加算されるわけではありません。
従業員が住宅費を負担している場合は、その負担額との関係を確認します。

 
会社から住宅の提供を受けていても、従業員が社宅使用料などを負担して
いることがあります。
 
社会保険上は、住宅の現物給与価額から従業員の負担額を差し引いた
金額が、現物給与として取り扱われるのが基本です。
 
日本年金機構の資料でも、住宅の家賃等を従業員から徴収している場合には、現物給与の価額から徴収額を差し引いた額が現物給与価額になると説明されています。
 
基本的なイメージは、次のとおりです。
住宅について算定された現物給与価額
    -
従業員が負担する社宅使用料等
    ↓
社会保険上、報酬に含める住宅の現物給与額
 
例えば、
 ・住宅について算定された現物給与価額:50,000円
 ・従業員負担額:30,000円
であれば、
その差額である20,000円が、社会保険上の現物給与として取り扱われることが考えられます。
 
一方、従業員負担額が住宅の現物給与価額以上である場合には、
社会保険上、住宅による現物給与額が生じないことがあります。
 
ただし、実際の処理については、徴収している金額の内容や給与計算上の
取扱いなども含めて確認する必要があります。
 
会社が貸主へ支払う家賃から従業員負担額を差し引くのではなく、
社会保険上の住宅の現物給与価額と従業員負担額を比較する

という点が重要です。

[参考]現物給与そのものの考え方から理解したい方は、
               こちらの記事もおすすめです。
【Q&A:現物給与とは何ですか?】
👥 現物給与の基本から理解したい方へ


Q5. どの都道府県の単価を使うのですか?

原則として、被保険者が常時勤務する事業所(勤務地)が所在する都道府県の価額を使用します。
 
住宅の現物給与価額を算定する際は、住宅の所在地ではなく、原則として
被保険者が常時勤務する事業所(勤務地)が所在する都道府県の価額

使用します。
 
例えば、
 ・勤務地が東京都
 ・社宅の所在地が千葉県
という場合、
社宅がある千葉県ではなく、勤務地である東京都の価額を使用します。

反対に、
 ・勤務地:大阪府
 ・社宅所在地:兵庫県
という場合は、
大阪府の価額を使用します。
 
このように、住宅がどこにあるかではなく、
原則として「どこで勤務しているか」が基準
となります。
 
また、本社で人事・労務・給与を一括管理している企業でも、
支店等で常時勤務している従業員については、
その勤務地が所在する都道府県の価額
を使用する取扱いとなっています。
 
例えば、
 ・人事・労務・給与管理:東京本社
 ・常時勤務する場所:大阪支店
という場合は、
東京ではなく大阪府の価額を使用します。
 
一方、派遣労働者については例外があり、実際の派遣先ではなく、
派遣元事業所が所在する都道府県の価額
を使用します。
 
そのため、実務では次のような点を確認することが重要です。
 ・常時勤務する事業所(勤務地)はどこか
 ・派遣労働者に該当しないか
 ・適用する都道府県の価額を正しく確認しているか
 
住宅の所在地だけで判断したり、給与を処理している本社所在地だけで
判断したりしないこと
が重要なポイントです。
 
補足:
以前は適用事業所所在地を基準とする考え方がありましたが、
現在は生活実態を反映するため、勤務地を基準とする取扱いが原則と
なっています。


Q6. 2026年10月改正で何が変わるのですか?

住宅の現物給与価額を算定する単位と、評価対象となる住宅の面積が
変わります。

 
2026年10月1日から、住宅の現物給与価額と算出方法が変更されます。
 
主な変更点は、次のとおりです。
2026年9月30日まで
居住用の室の畳数 × 都道府県ごとの1畳当たりの価額
 
対象となるのは、居間、寝室、客間、書斎、食事室などの居住用の室です。
玄関、台所、トイレ、浴室、廊下などは、原則として計算対象に
含めません。
 
2026年10月1日から
住宅の総床面積 × 都道府県ごとの1㎡当たりの価額
 
原則として、居住する住宅の床面積の合計を対象とします。
 
そのため、玄関、台所、トイレ、浴室、廊下なども住宅の総床面積に
含まれている場合には、計算対象となります。
 
一方で、
別棟の物置・車庫や、共同で使用している部分の面積などは除かれます。
 
つまり、改正前後では、
「何畳あるか」を中心に確認する方法
から、
「住宅全体で何㎡あるか」を中心に確認する方法
へ変わります。
 
日本年金機構の資料では、東京都に所在する事業所の例として、
改正前は2,830円に16畳を乗じて45,280円、改正後は1,330円に総面積40㎡を乗じて53,200円とする計算例が示されています。
 
ただし、改正によって現物給与価額がどの程度変わるかは、
 ・適用される都道府県
 ・改正前の居住室部分の畳数
 ・改正後の総床面積
 ・従業員負担額
などによって異なります。
 
すべての住宅で同じように増減するわけではありません。

[参考]今回の改正が行われた背景から理解したい方は、
               こちらの記事もご覧ください。
【2026年10月改正・背景編】なぜ現物給与評価は見直されるのか?
👥 改正の背景や制度趣旨を知りたい方へ


Q7. 住宅現物給与価額が変わると、社会保険料も必ず変わりますか?

住宅の現物給与価額が変わっても、直ちにすべての従業員の社会保険料が
変わるとは限りません。

 
現物給与は、金銭で支払われる給与と合算して、標準報酬月額を決定する際の報酬に含まれます。
そのため、住宅の現物給与額が増減すると、標準報酬月額に影響する可能性があります。
 
ただし、実際に標準報酬月額や社会保険料が変わるかどうかは、
 ・金銭給与の金額
 ・従業員負担額
 ・現在の標準報酬月額の等級
 ・現物給与価額の増減幅
 ・定時決定や随時改定の要件
などによって異なります。
 
また、現物給与価額の告示改正による単価変更は、社会保険上、固定的賃金の変動として取り扱われ、要件に該当する場合には月額変更届が必要になることがあります。
 
したがって、
住宅現物給与価額が変わること
と、
実際に標準報酬月額や社会保険料が変わること
は分けて考える必要があります。

[参考]改正対応で実務上の確認事項を整理したい方は、
               こちらの記事も参考になります。
【2026年10月改正・実務担当者編】現物給与評価改正で実務担当者が最も困るポイント
👥 実務担当者として対応ポイントを確認したい方へ 


■ 住宅現物給与価額の位置付け

住宅現物給与価額は、借上社宅の実際の家賃を表す金額ではありません。
 
また、都道府県単価そのものでもありません。
 
関係を整理すると、次のようになります。
会社が従業員へ住宅を提供する
    ↓
住宅による経済的利益が生じる
    ↓
都道府県ごとの単価と住宅の広さを用いて、住宅の現物給与価額を算定する
    ↓
従業員負担額がある場合は、その金額を差し引く
    ↓
残った金額を現物給与として金銭給与に合算する
    ↓
標準報酬月額の決定に反映する
 
この流れからも分かるように、住宅現物給与価額は、
都道府県単価と社会保険上の現物給与額をつなぐ、住宅評価の中心と
なる金額
と位置付けることができます。


■ ポイント

住宅現物給与価額とは、会社から提供される住宅の利益を、社会保険上の
基準に基づいて金額に換算したものです。
 
実際に貸主へ支払う家賃や、従業員が負担する社宅使用料とは、目的も
計算方法も異なります。
 
また、都道府県単価は住宅現物給与価額そのものではなく、住宅の広さなどと組み合わせて評価額を算定するための計算要素の一つです。
 
2026年10月1日からは、住宅の評価方法が、
居住用の室の畳数を基準とする方法
から、
住宅の総床面積を基準とする方法
へ変更されます。
 
そのため、借上社宅や寮を提供している会社では、改正後の単価だけで
なく、
 ・住宅の総床面積を把握できるか
 ・適用する都道府県はどこか
 ・従業員負担額を正しく反映できるか
 ・標準報酬月額への影響があるか
 ・給与システムで改正後の計算ができるか

といった点もあわせて確認することが重要です。


📌 補足
健康保険組合によっては、規約により現物給与の価額について別段の定めを設けている場合があります。
 
実際の社会保険手続きや個別の制度運用については、加入している健康保険や管轄の年金事務所等へ確認することが重要です。


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少なくありません。

現在は情報発信を中心としていますが、
今後は制度運用に関する実務上のコミュニケーションの場も
広げていければと考えています。

なお、記事テーマに関するご質問やご感想があれば、
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著者
Yoshihiko Tagawa|借上社宅制度の研究家

借上社宅制度について、制度運用や社宅管理の観点から
情報整理・発信を行っています。
毎月3000戸超の社宅運営に携わる中で、
借上社宅制度の運用面・管理面に関する情報整理を行ってきました。

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