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スペースとは、時間であるーー第1回から第3回までの整理

サッカーではよく「スペースがある」と言う。
しかし、そのスペースは本当に“そこ”にあるのだろうか。

もし、選手が使えなければ、それはスペースではない。
もし、一瞬で消えるなら、それは固定された場所ではない。
もし、選手によって使えるかどうかが変わるなら、それは客観的な空間でもない。

第1回から第3回までで見てきた答えは、一つだ。

スペースとは、時間である。


空白とスペースは違う

第1回は、ひとつの問いから始まった。

走り込んだのに、なぜ使えなかったのか。

選手が全力で走り込む。
そこには確かに空いている場所がある。

しかし、ボールが届いた瞬間には、もう相手がいる。
あるいは、パスが来ない。
あるいは、来ても何もできない。

見た目には、スペースがあったように見える。
しかし実際には、使えなかった。

なぜか。

時間がなかったからだ。

スペースとは、空いている場所ではない。
そこでプレーするための時間がある状態である。


スペースは生まれ、消える

第2回では、スペースは固定された場所ではないことを見た。

スペースは、最初からそこにあるものではない。
生まれるものである。

広島対名古屋戦のショートカウンターは、そのことを示していた。

名古屋がボールを持っている間、広島の攻撃する時間はゼロに近い。
しかし、ボールを奪った瞬間、状況は変わる。

0が100になる。


背走の時間

ここで重要なのが、背走の時間である。

攻撃のために最終ラインを高く上げる。
全体を押し上げる。
相手陣内に人を送り込む。

これは攻撃には必要な構造である。
しかし、ボールを失った瞬間、その構造は弱点に変わる。

選手たちは前向きに走っていた。
そこから突然、後ろ向きに走らなければならない。

守備側はゴールへ戻ろうとする。
しかし、戻りながら守ることは難しい。

前向きの守備なら、相手に圧力をかけられる。
身体をぶつけられる。
ボールにアタックできる。

しかし背走では、それができない。

戻ることが先になる。
ゴールを守ることが先になる。

その間、攻撃側には時間がある。

守備側は戻っている。
しかし、時間を止めてはいない。

ショートカウンターで危険なのは、全員が一方向に走っている状況である。

攻撃側はゴールへ向かって走る。
守備側もゴールへ向かって戻る。

一見すると、守備も戻っているように見える。
しかし、実際には流れを止められていない。

この状態は、波に似ている。

波が押し寄せてくる。
こちらも後ろへ下がる。
しかし、下がっているだけでは波は止まらない。

背走している守備には、正面がない。
向きを変えられない。
踏み込めない。
ボールにアタックできない。

この“止められない時間”こそが、ショートカウンターの本質的な危険性である。

背走の時間は、攻撃側にとっての巨大なスペースである。


スペースは主観的である

第3回では、スペースが選手によって変わることを見た。

岡山対C大阪戦の横山選手のゴールが、それを示していた(参照:本文末尾動画)。

ボールはゴールエリアの奥深くへ流れた。
角度はほとんどない。
平均的な選手なら、折り返しを選ぶ場面である。

見た目には、シュートのスペースはない。

しかし横山選手は、そこから打った。
そして決めた。

あの場所が、横山選手にとってはスペースだったということである。

横山選手には打ち切れる技術があった。
短い時間の中で、ボールを流し、足を振り、枠へ飛ばす能力があった。

だから、そこはスペースになった。

同じ場所でも、ある選手にはスペースではなく、別の選手にはスペースになる。
同じ時間でも、ある選手には短すぎて、別の選手には十分になる。

スペースとは、単なる空間ではない。
その選手にとっての時間の可能性である。


サッカーとは、時間をめぐる攻防である

三つをつなげると、こうなる。

スペースとは、時間である。
時間は、生まれ、消える。
そして時間は、選手によって違う。

サッカーを見るとき、ピッチを場所として見るだけでは足りない。
空いている場所を探すのではなく、プレーできる時間を探す。
配置を見るのではなく、"時間の窓"を見る。

なぜ、あのパスは出せなかったのか。
なぜ、あの走り込みは使われなかったのか。
なぜ、あのカウンターは止められなかったのか。
なぜ、あの角度からシュートを打てたのか。

その答えは、多くの場合、空間ではなく時間にある。

攻撃側は、時間を作ろうとする。
守備側は、時間を消そうとする。

パスは、時間を前へ運ぶ行為である。
ドリブルは、相手の時間をずらす行為である。

プレスは、相手の判断時間を奪う行為である。
最終ラインは、相手に与える未来の長さを調整する装置である。
カウンターは、守備が整うまでの時間を破壊する行為である。

スペースという言葉で呼ばれてきたものの多くは、実は時間だった。

サッカーは、場所のスポーツである前に、時間のスポーツである

次回は、さらに一歩進む。

時間は、どこで生まれるのか。


連載計画

*以下、動画を再生すると音が出ます。ご注意ください。

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