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メジャーデビューなしで東京ドームへ──KAWAII LAB.が壊すアイドル業界の常識

こんにちは!
広告代理店でクリエイティブプランナーをしている望月です。

日本のアイドル市場をテーマにアイドルをビジネス目線で考察した記事『#アイビズ』を定期的に更新しています。

今後もできる限り多くのトピックに触れていきたいと思いますので、ぜひ興味がある方はぜひ過去の記事も含めて読んでみてください!


本日のトピック


「地下アイドル」と「地上アイドル」。
この言葉は、アイドルファンであれば日常的に使う表現だと思います。

ただ実際のところ、明確な定義があるわけではありません。
「メジャーデビューしていれば地上、していなければ地下」という単純な線引きも語られますが、実情はもっと複雑かなと。

ライブ規模や事務所の大きさ、メディア露出の度合いによっても認識は揺れ動きますし、ファンによってもその解釈は異なります。

最近では、メジャー契約をしていないのに武道館やアリーナといった“地上級”のステージに立つグループも登場しました。

その代表例が、原宿カルチャーを発信するASOBISYSTEMのアイドルプロジェクト 「KAWAII LAB.」 です。

恥ずかしながら、私は勝手に「KAWAII LAB.」はメジャーデビューをしていると思っていたのですが、つい先日、FRUITS ZIPPER櫻井優衣さんがユニバーサルミュージックからソロメジャーデビューが決まったということでリサーチしたところから、初めて「KAWAII LAB.」はメジャーデビューを正確にはしていないということを知りました。

ということで、今回は、広告代理店でクリエイティブプランナーをしている私・望月が、ビジネス目線から「地下/地上」という区分の意味を改めて整理し、KAWAII LAB.が示す新しいアイドルの在り方について考察します。


「地下」と「地上」の定義の揺らぎ

まず整理しておきたいのは、従来の「地下」「地上」という区分です。

従来の基準

  • 地上アイドル:大手事務所に所属し、テレビやラジオなどのマスメディアに多く出演。全国的な知名度を持つ。AKB48や乃木坂46が典型例。

  • 地下アイドル:小規模事務所に所属し、ライブハウスを中心に活動。ファンとの近距離交流(チェキ会や物販)が収益の柱。

しかし現代では、分け方では捉えきれない状況が生まれています。

定義のあいまいさを示す事例

例えば、この記事を書くにあたりいろんなnoteを拝見していたのですが、ある60代の男性がテレビに映る「私立恵比寿中学」を見て「地下アイドルが出てる」と発言したというエピソードがありました。

エビ中は地上波にも出演し、ももクロやとき宣も輩出している大手事務所スターダストに所属している“地上”寄りの存在です。しかし、乃木坂46やAKB48ほどの知名度はない。だから「地下」と見なされてしまった。

この事例は、もはや「地上波に出ているかどうか」だけでは判断できないことを示しています。現代では、「どれだけ広範に認知されているか」「どのくらい影響力を持つか」 が重要な基準に変わりつつあるのです。

さらに、メジャーデビューしても鳴かず飛ばずのグループは「半地下」と呼ばれることもあれば、ファンとの境界がほとんどない“地底アイドル”と揶揄される存在すらいます。

個人的には、そもそも「地下」って呼び方ってどうなの?「地下」というラベリングが近年の炎上を加速させているのでは?と、思っているのですが、それはまたどこかで・・・。

KAWAII LAB.という挑戦

そんな曖昧な時代に登場したのが、ASOBISYSTEMの KAWAII LAB. です。

『KAWAII LAB.』プロジェクト概要

  • 2022年に始動

  • プロデューサーは元アイドルの木村ミサさん

  • コンセプトは「原宿から世界へ」

  • TikTokを中心にデジタル起点でファンを広げる

  • メジャーレーベルには所属せず、自社レーベルを中心に活動

KAWAII LAB.は単なるアイドル事務所ではなく、カルチャーブランドとしての存在感を強めています。SpotifyやApple Musicで複数グループが同時ランクインするなど、「KAWAII LAB.所属」というラベル自体が認知を広げています。
今や、アイドル志望の子たちの中でもKAWAII LAB.に所属したい子達が一番多い気がします。

所属グループと成果

ここで各グループの特徴を再調査した上で、整理してみました。

FRUITS ZIPPER(2022年デビュー)

  • TikTok発の「わたしの一番かわいいところ」が9億回以上再生される大バズを記録  

  • 第65回日本レコード大賞で「最優秀新人賞」を受賞  

  • 2024年に日本武道館、2025年にさいたまスーパーアリーナで単独公演を成功 、2026年には東京ドーム公演を控えている

  • メンバーの櫻井優衣さんはユニバーサルミュージックからソロでメジャーデビューが決定

CANDY TUNE(2023年デビュー)

  • 「エトセトLOVE YOU」がオリコン週間チャートで最高9位を記録  

  • TikTokで「倍倍FIGHT!」がバズり、海外イベントにも出演するなどグローバル展開も意識  

SWEET STEADY(2024年デビュー)

  • 研修生制度「KAWAII LAB. Mates」出身のメンバーで構成  

  • デビューライブで、キャパシティ1,000人規模の会場を成功させるなど、スタートから大規模なライブ動員を実現  

  • 元アイドル経験者を含む実力派グループとして、今後の成長が期待されている  

CUTIE STREET(2024年デビュー)

  • デビュー曲「かわいいだけじゃだめですか?」がBillboard Japan Heatseekers Songsで1位を獲得  

  • TikTokでのバズを起点に、デビューからわずか数ヶ月でオリコン週間シングルチャート1位を達成  

  • SNSでの拡散を前提とした振付や歌詞でUGC(ユーザー生成コンテンツ)を誘発し、バイラルヒットを連発、地上感を獲得  

PiKi(2025年デビュー)

  • FRUITS ZIPPERの松本かれんとCUTIE STREETの桜庭遥花によるユニット 

  • デビュー曲「Kawaii Kaiwai」がアニメ『その着せ替え人形は恋をする』のエンディングテーマに起用される  

  • SME Recordsとの契約でメジャーデビュー  

実際、「メジャーデビューの有無」について調べていく中で、KAWAII LAB.の事例は単純なYes/Noでは答えられない複雑な実態であることが明らかになりました。各グループの状況を以下の表にまとめるとこのようになりました。

メジャーとの協業が生み出す「境界線」

FRUITS ZIPPERは、多くの人がメジャーデビューしていると認識しているかもしれませんが、厳密にはユニバーサルミュージックと直接のメジャー契約を結んでいるわけではありません。

上記表に記載した通り、所属レーベルはあくまでKAWAII LAB.(ASOBIMUSIC)であり、ユニバーサルミュージックはCDの「販売元」を担当しているに過ぎないということです。

このモデルは、KAWAII LAB.がメジャーレーベルの「権威」と「流通網」を借りながら、自社の「クリエイティブの自由度」と「収益性」を最大限に確保する、新しいハイブリッドモデルを確立したことを意味しています。


以前拝読したこちらの本によると、
通常であれば、CDの場合、本来なら1/3程度レーベル配分になるので、その分の収益は自社分配になるようにしているということでしょうか。

内容について、作者の山口さんがnoteに公開されているので、
分配率について気になる方はぜひみてみてください。

TikTokで圧倒的な知名度とファンベースを自力で築いた後、メジャーレーベルを純粋な「流通」のビジネスパートナーとして迎え入れたということで、メジャーレーベルが「育成・投資」から始める従来の契約形態とは全く異なる点が興味深いと思います。

このモデルにより、KAWAII LAB.はファンとの直接的なコミュニケーション(SNS、ライブ)で得られる収益の大部分を保持しつつ、全国的なCD販売網や海外展開といったメジャーの強みを活用しているのです。

櫻井優衣とPiKi:明確なメジャー契約が示す「次なるステップ」

一方で、FRUITS ZIPPERのメンバーである櫻井優衣さんは、ユニバーサルミュージックからソロでメジャーデビューを果たすことが決定しました。

また、FRUITS ZIPPERの松本かれんさんとCUTIE STREETの桜庭遥花さんによるユニット「PiKi」も、SME Recordsとメジャー契約を結んでいます。

公にはメジャーデビューと公開していないようですが、PiKiのシングル「Kawaii Kaiwai」のSpotify音源には、「(P)2025 Sony Music Labels Inc.」と明記されており、大手音楽企業であるソニー・ミュージックレーベルズからの提供であることが確認できます 。


こういったメジャー契約は、グループ全体としてのブランド力とメンバー個人の人気が、メジャーレーベルが「リスクを取って直接投資する」に足る価値を持つと評価されたことを意味していると思います。

KAWAII LAB.がインディーズのプロジェクトでありながら、SNSで築き上げたファンベースと影響力によって、メジャーレーベルを動かし、メンバーに「地上」への明確なパスポートを与えることに成功した、非常に重要な事例だと思いました。

SNS時代の逆転戦略

従来のアイドルは「テレビ露出→知名度→動員」という流れで成長していました。
しかし、KAWAII LAB.は「TikTok→バズ→地上波・大型ライブ」という逆転の道筋を作り出しましたことで、これまでアイドルが目指していた「メジャーデビュー」の価値が揺らいでいるように思います。

UGCを誘発する仕組み

  • 一部楽曲ではライブでのスマホ撮影を解禁

  • 振付・歌詞をSNS映え仕様に設計

  • ファンを「無料の宣伝部隊」に変える

結果、広告費をかけなくても自然な拡散が起こり、運営側は高速でPDCAを回せる。これは従来の大手モデルでは実現しにくいスピード感です。

もちろん、ファンまかせというわけではなく、KAWAII LAB.は体育会系なSNSチームが存在していると思われます。

運営チーム、そしてメンバー自身も圧倒的な量×質でSNSを駆使しているからこそな結果と言えます。

KAWAII LAB.のSNS戦略については過去記事にもまとめたことがあるので、
ぜひ見てみてください。

メジャーデビューの価値はまだあるのか?


「メジャーデビュー」は、アイドルにとって夢であり最大の目標でした。今もアイドルにとっての、目標の一つであることには違いがないと感じます。

しかし、現在、その価値は大きく揺らいでいます。
理由の一つは、デジタル配信とSNSが音楽の届け方を変えたこと

TikTokでのバズやYouTubeのMV公開が、メジャー流通に頼らずとも数百万、数千万回の再生を生み、ファンを動員する力に直結しています。

FRUITS ZIPPERがメジャー契約なしで武道館、アリーナ、ドームを達成した事実は、その象徴です。

もちろん、メジャーには依然として強みがあります。例えばNHKや民放大型番組への出演、全国規模での店舗販促、アニメや映画の主題歌タイアップは、今も大手レーベルや芸能プロとのネットワークに依存する部分が大きいとされます。

櫻井優衣さんがソロでユニバーサルと契約したのも、そのレールに乗ることで得られるさらなる拡散力や信用を狙った動きといえるでしょう。

一方で、メジャー契約は必ずしもメリットばかりではありません。
先に述べたように、印税や売上の分配比率が下がる、制作上の自由度が制限されるなど、インディーズ時代に比べて「やりたいことができなくなる」リスクもあります。


このように考えると、現代のアイドルにとってメジャーデビューは「必須」ではなく、「戦略オプション」の一つに変わりつつあると言えるかもしれません。

SNS時代においては、メジャーに行かずとも“地上級”の成果を出せる。KAWAII LAB.のモデルはその代表例であり、今後は「どこでデビューしたか」よりも「どのくらいの市場インパクトを作れるか」が重視される時代になっているのかもしれません。

最後に

以上、ここまで「KAWAII LAB.が壊すアイドル業界の常識」をテーマにまとめてみました。

いかがでしたでしょうか?

「地下アイドル」と「地上アイドル」という区分は、長らくアイドルシーンを語るうえで便利なラベルだったように思います。

メジャーデビューの有無、ライブ規模、メディア露出といった指標で線を引くことができたからです。

しかし、KAWAII LAB.の登場により、その線引きを大きく揺さぶっています。ユニークなのは、従来「地下」とされてきた活動領域にいながら、成果の水準では「地上」を超える事例を次々に生み出している点だと思いました。
FRUITS ZIPPERはTikTokバズから武道館・さいたまスーパーアリーナ・東京ドームへ。CANDY TUNE、CUTIE STREETも後を追う、驚異的な結果を残しており、これらは本来、メジャーの強力な宣伝網や資金力がなければ到達できなかった領域です。

それを可能にしたのは、ASOBISYSTEMによるブランド構築力と、SNS時代に最適化されたプロモーション戦略

CDセールスに依存せず、デジタルとライブを両輪に収益をつくるモデルは、従来の「メジャーデビュー=全国流通」の構図を相対化しています。

また、レーベル機能を自社で内包しているため、制作からプロモーションまでの裁量が大きく、スピード感のある仕掛けが可能です。

さらに特徴的なのは「ハイブリッド展開」。
PiKiのアニメED起用や櫻井優衣のソロメジャーデビューのように、必要に応じてメジャーとの接点を部分的に取り込みながら、グループ全体はインディーズで動く。

これは“地下と地上の間”を自在に行き来する柔軟な戦略であり、いわば「ハーフ地下モデル」とも言える新しい形です。

今のアイドルにとって「メジャーデビュー」とは必須条件ではなく、数ある戦略オプションの一つにすぎません。むしろ重要なのは、いかにして文化を作り、デジタルで広げ、ファンとの接点をビジネスに転換できるか。

KAWAII LAB.は、その問いに対する一つの答えを提示しています。
地下か、地上か。その境界を飛び越えた「ハーフ地下モデル」。それこそが、次世代アイドル市場を切り拓く新しいキーワードになるかもしれません。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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記事参考になったなと思ってくださった方は、他にもだけではなく、日本のアイドル市場をさまざま考察しているのでぜひご覧になってみてください!




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