健康を再定義する ― ICFが教えてくれる「生きること」としての健康 ―
Your Best Solution代表、五木田穣です。
「健康」と聞くと、多くの人はまず、
病気があるかないか。
異常があるかないか。
痛みがあるかないか。
そういったことを思い浮かべるでしょう。
もちろん、それらはとても大切です。
けれど、
本当にそれだけで、
健康を語り切れるのでしょうか。
たとえば、
検査では大きな異常がないのに、
日常を生きるのがとてもつらい人がいます。
反対に、
病気や障害があっても、
自分らしく暮らし、人と関わり、
役割を持って生きている人もいます。
そう考えたとき、健康とは単に「悪いところがないこと」ではなく、
もっと立体的で、もっと人間的なものとして捉える必要があるのではないか。
私は、そう考えています。
その視点を定めてくれたものの一つが、
ICF(国際生活機能分類)です。
主に、医療や介護・福祉、教育の現場で
活用されているものですが、
この考え方は、
これからの健康を考える上で、
とても大切なものだと、私は感じています。
ICFが見ているもの
ICFとは、
International Classification of Functioning, Disability and Health
の略で、日本語では「国際生活機能分類」と呼ばれています。
名前だけを見ると、分類のための仕組みのように感じるかもしれません。
けれど本質は、そこにはありません。
ICFは、WHO(世界保健機関)が示したもので、
人の健康状態を「病気」だけでなく、
生活や社会との関わりまで含めて捉えるための枠組みです。
ICFが示しているのは、
人を、病名や障害名だけで見るのではなく、
その人がどう生きているかという視点から捉えることです。
人の健康状態を、
心身機能・身体構造
活動
参加
環境因子
個人因子
といった要素の関係性として、観ていく。

つまり、身体の状態だけを見るのではなく、
その人が何をできているのか。
何がしにくくなっているのか。
どんな場に参加できているのか。
どんな環境の中で暮らしているのか。
どんな価値観や背景を持っているのか。
そうしたものを、切り離さずに観ようとする考え方です。
私はここに、とても大きな意味があると思っています。
なぜなら、人は「身体」だけで生きているのではないからです。
健康は、身体の中だけにあるものではない
たとえば、腰が痛い人がいるとします。
腰の筋肉。
関節の動き。
姿勢。
体の使い方。
そうしたものを見ることは、もちろん大切です。
けれど、それだけでは見えていないことがあります。
その人は、痛みによって何がしにくくなっているのか。
仕事にどんな影響が出ているのか。
家族の中で担っている役割はどうなっているのか。
周囲に頼れる人はいるのか。
本人はその状態をどう受け止めているのか。
「休んでいい」と思えているのか。
それとも、無理をしてでも頑張らなければならないと思っているのか。
そこまで見ていくと、
腰痛は単なる「腰の問題」ではなくなってきます。
心と体の問題であると同時に、
活動の問題でもあり、
参加の問題でもあり、
環境の問題でもあり、
その人自身の生き方や価値観とも関係している。
つまり、
不調というものは、部分だけを見ていたら、本質には届かないのです。
ICFは、そのことを私たちに気づかせてくれます。
健康とは、「できること」や「関われること」でもある
従来の健康観では、
異常がないこと。
正常であること。
症状がないこと。
そういったことが重視されてきました。
もちろん、それも大切な指標です。
けれど、それだけでは人の健康を十分には捉えられません。
たとえば、身体機能として問題がなくても、
外に出ることが怖い。
人との関わりがしんどい。
自分の役割を見失っている。
毎日に意味を感じられない。
そういう状態は、果たして「健康」と言い切れるでしょうか。
逆に、何らかの病気や障害があったとしても、
その人なりに日常を営み、
自分の役割を持ち、
人とのつながりの中で生きていけているなら、
そこには確かに、
健康の一側面があるのではないかと思うのです。
ICFの視点は、
健康を単なる「正常さ」ではなく、
その人が生きることに参加できているか
その人らしく日常を営めているか
というところまで、広げてくれています。
健康とは、ただ不調がないことではない。
健康とは、生きることが機能していることでもある。
私は、そのように受け取っています。
環境が、人の健康をつくっている
健康について考えるとき、
私たちはつい、
本人の努力や意識に焦点を当てがちです。
もっと運動を。
もっと食事を。
もっと休養を。
もっと前向きに。
そうした言葉は、確かに間違いではありません。
けれど現実には、
どれだけ本人が頑張っても、
環境がととのっていなければ、
崩れていくことがあります。
休めない職場。
緊張の続く家庭。
相談できる人がいないこと。
自分のままでいられない人間関係。
時間の余白のなさ。
経済的な不安。
こうしたものは、血液検査の数値には出にくいかもしれません。
しかし、その人の呼吸や睡眠や思考や感情や動作に、
確かに影響を与えています。
つまり、健康は、
個人の中だけで完結しているものではなく、
環境との関係の中で育まれたり、
損なわれたりしているものでもあるのです。
ここを見落としてしまうと、
支援はどうしても、表面的になってしまいます。
どれだけ身体に触れても、
どれだけ運動を教えても、
どれだけ知識を伝えても、
戻ればまた崩れてしまう。
その背景には、
「本人の問題」ではなく、
その人を取り巻く環境との関係があると言えます。
人を観るということ
Your Best Solutionでは、
「人を観る。本質を観る」
ということを大切にしています。
これは、
単に丁寧に話を聴くというだけではありません。
身体だけを見ない。
症状だけを見ない。
その場の反応だけを見ない。
その人の呼吸、姿勢、動作、感覚、思考。
日常の習慣。
人との関わり。
役割。
働き方。
在り方。
生き方。
そうしたものが、どのようにつながり合い、
どこでズレ、
どこで無理が生まれ、
どこで本来の流れが滞っているのかを、観ていく。
それは、何でも広げて複雑にしたいからではありません。
むしろ逆です。
たくさんを見ているのではなく、
シンプルに、「人を観ている」のです
最善の解決策を見つけるには、
人というものを包括的に観る必要がある。
そう確信しているからです。
部分だけを整えても、全体が変わらなければ、
また戻ってしまうことがあります。
でも、全体のつながりの中で、
要になるところに触れられると、人は少しずつ変わり始めます。
ICFの考え方は、
そのための非常に優れた土台になると考えています。
健康を再定義するということ
健康を再定義するとは、
新しい言葉をつくることではありません。
前提から変えること。
人の見方を変えること。
そして、関わり方を変えること。
悪いところを探すのではなく、
その人は、何ができているのかを観ること。
失われている機能だけではなく、
どんな活動ができていて、
どんな参加が難しくなっていて、
何がそれを支えているのか、
何がそれを妨げているのかを観ること。
健康とは、
異常がないことだけではありません。
健康とは、
自分の心身とつながりながら、
日常を営み、
人と関わり、
必要な場に参加し、
その人らしく生きていけること。
私は、そのように考えています。
だからこそ、
“治す”というだけでは届かない領域があります。
“鍛える”だけでも足りない。
“整える”だけでも、まだ足りないことがある。
その人にとって何が本当に必要なのか。
どこにズレがあり、
どこからととのえていくと全体が変わり始めるのか。
それを、根本的に、多角的に、包括的に、そして本質的に観ていく。
それが、Your Best Solutionの目指していることです。
ICFが教えてくれること
ICFが教えてくれるのは、
健康は、身体の中だけにあるものではない、ということです。
健康は、
身体と、
活動と、
参加と、
環境と、
個人の背景が、
関係し合う中で現れてくるものです。
つまり健康とは、
単独の現象ではなく、
関係性の中で成り立つものでもある。
この視点に立つと、
見えるものが変わります。
痛みの意味が変わります。
不調の見方が変わります。
支援のあり方も変わります。
病気を見て終わるのではなく、
人を観る。
症状を追って終わるのではなく、
その人の生活そのものまで含めて捉える。
その入口として、
ICFはとても大切な地図になります。
健康とは、ただ長く生きることではない。
健康とは、ただ不調がないことでもない。
その人がその人として、
日々を営み、
人と関わり、
役割を持ち、
生きていけること。
その土台を、どう支えていくか。
その問いを持ち続けることこそが、
これからの健康を考える上で、とても大切なのではないでしょうか。
Your Best Solutionは、これからも
「人を観る。本質を観る」
という姿勢で、
一人ひとりにとっての最善の解決を考え続けていきます。
次回予告
ICFの本当の価値は、概念を知ることそのものではなく、
この視点を通して、実際に人をどう観るかにあります。
次の記事では、もう一歩踏み込み、
ICFから読み解く“人を観る”ということ
をテーマに、
健康をどう捉え、支援をどう捉え直すのかを深く掘り下げていきます。
症状だけでは見えないもの。
数値だけでは測れないもの。
そして、その人の人生に本当に必要な関わりとは何か。
また、次の記事でお会いしましょう。
Your Best Solution代表
五木田穣
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