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妻に髪を切ってもらう気軽さと特別感

 今年の夏あたりから、僕の髪は妻が切ってくれている。もともとは軽い思いつきで「ちょっとだけ切ってくれへん?」と頼んだだけだったのに、仕上がりが意外と自然で、妻自身も「こういう作業は好き」と楽しんでいたので、なしくずし的に家カットへ移行した。

どうせならとAmazonで5,000円くらいの本格的なカットハサミを買ってみたところ、これが想像以上に使いやすく、最初の練習数回で「もう美容院は要らないかも」と思うほど馴染んでしまった。

 家で切る場合、いちばん面倒なのは後片づけだと想像していたが、今では専用の散髪用ケープを使っているから意外と手軽になった。初めの頃はリビングに新聞紙を広げ、僕は上半身裸で正座という地味にシュールなスタイル。髪がそこらじゅうに落ちるからコロコロを使って回収するのが大変だった。

900円のケープなんて大したものじゃないと思っていたけれど、実際使ってみると切れた髪がそのままゴミ箱にポイできるので、かなり助かる。「この小さな投資でこんなにラクになるのか」と、二人でびっくりしたほどだ。

 切り終わったあと、妻はいつもドヤ顔で「上手になったよね」と自画自賛してくる。実際、最初は“いかにも素人が切りました”という感じだったのが、ここ数回は自分でも驚くくらい自然な仕上がりだ。

前髪の長さやトップのボリューム調整など、最初よりはるかにコツがつかめているようで、鏡を覗いても違和感がない。下手をすると「どこの美容院?」と聞かれてもおかしくないレベルになってきたから、素人の遊び感覚としては最高だろう。

 妻がこういう作業を苦に感じない理由は、もともと自分の手を使うのが好きだからだと思う。料理や運動、動画編集、部屋の掃除――いわゆる“五感で楽しむこと”にかなり強いタイプ。

事実、うちには愛犬の豆柴“お茶子”がいて、妻はそのお茶子のYouTubeチャンネルを運営し、編集まですべて自前でやってしまう。

僕がそばで見ると「大変そうだな」としか思わないけれど、彼女は「没頭できる」と笑っているから、向き不向きの差は本当に大きい。カットも同じ流れで、面倒くさいというより「いい暇つぶし」になっているのかもしれない。

 そのせいか、お茶子は散髪中も興味津々で覗き込んでいる。椅子に座った僕を、まるで「何してるの?」とでも言いたげにクンクン。たまに毛が落ちる瞬間を追いかけようとして邪魔をするけれど、そういう光景も含めて「家カットならではの風景」だなと感じる。

もともと美容院が苦手な僕には、これがありがたい。いちいち予約しなくてもいいし、他のお客さんと同じ空間にいる必要もない。自律神経失調症のせいで照明や会話に敏感だから、家で済むならそのほうがストレスが少ないのは言わずもがなだ。

 ちなみに、お茶子の毛対策にもダイソンの掃除機を買っているくらいだから、僕の落ちた髪なんか大したことはない。とはいえ、妻が最初に新聞紙で対応していた頃より、ケープでまとめられるほうが断然スムーズなので、手間を削減できている点はかなり大きい。

家カットが定着してから、美容院へ出向く時間もお金も節約できるし、髪が伸びすぎる前に「そろそろ切る?」と声をかけられるから助かる。何より、本当に妻が楽しそうにやってくれるのが一番いい。

僕は逆に“頭脳系”の仕事が得意だ。

AIやオンラインビジネスを使って、月に50時間ほど働けば暮らしていける仕組みをなんとか作り上げた。ただいわゆる“五感”はそこまで強くないから、料理や掃除、カットのような体感ベースの行為は苦手だ。

でも妻がそれを補ってくれるなら、僕は僕で“財布役”としてしっかりお金を用意すればいい。そんな形でうまく回っているのが、いまの僕らの暮らしだ。わざわざ美容院へ行き、体調を崩すリスクを取るよりはよほどいいし、しかも仕上がりに不満がなければそれに越したことはない。

 「こんなに楽ならもっと早くお願いしてれば数万円は節約できたかも」などとちょっと悔やむこともあるが、まあここまで来たから良しとしよう。妻がいて、お茶子がいて、ちょっとハサミを振るだけで済む暮らしが手に入ったのだから、こんな幸せな話はそうないはずだ。

何か特別すぎるわけでもないけれど、美容院代が浮いた分をお茶子のグッズや妻のおやつ代に回すのもいい。実際にやってみると「もっといろんな手間を家で完結したいかも」という欲が湧くから、今後も夫婦でいろいろ試してみたいと思う。

 家で妻に髪を切ってもらうなんて、数年前の僕には想像すらできなかった。だけどいまは「これが最適だな」と自然に思える。外出を控えれば体調面も安定しやすいし、経済的にも負担が減る。

なにより、妻やお茶子とのやりとりが増えるのが嬉しい。

お茶子は相変わらず毎回ソワソワしながら僕の髪が落ちる様子を眺めているし、妻は「ここをもう少し切ろうかな」と腕を上げている。そんな日常がいまの僕にはちょうどいいし、もしかしたらずっと続くかもしれない。やってみると意外と悪くない選択肢、というのが家カットの素直な感想だ。


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