僕の頭の中の消しゴム
タイトルは若年性アルツハイマーの物語のパロディで、僕の場合は病気じゃない。
けど、本当に何でもかんでもすぐに忘れる。
妻にはもう呆れられていて、付き合いたての頃は「大事だと思ってないから忘れるんでしょ」と怒られたことすらある。でも、そうじゃない。
大事なことも大事じゃないことも、すべて同じように記憶から抜け落ちていくのだ。これは体調を崩す前からのデフォルトで、どうにもならない。
たとえば数分前に風呂を洗ったはずなのに、すでに記憶がない。「本当に洗った?洗ってないんじゃない?」と自問自答する羽目になる。あるいは晩ごはんを何にするか決めたのに、同じ日に3回も4回も「今日なに食べるんだっけ?」と妻に訊く。
スケジュールは全部前日の夜中にチェックして、さらに30分前にタイマーを鳴らすけれど、それでも忘れることがある。
何も覚えていないから、ある意味ストレスフリーといえなくもないけれど、困るといえば困る。
映画なんかを観ていても、一度じゃ展開を覚えていないから二度目三度目も新鮮な気持ちで楽しめる。「え、こんなストーリーだったの?」と再発見するたびに得した気分になる。不便な記憶力も、こういうときは少し役に立つ。
とはいえ、アルバイトを始めた時点でわりと大変だった。
仕事覚えられないし、メモが苦手で、取ってもなくす。あちこちで「なんでこんな簡単なこと覚えられないの?」みたいな目を向けられてきた。大学生の頃、ロイヤルホストでバイトしていたとき、後から入った女の子がテキパキ覚える中、「君もがんばらないとね」とパートのおばちゃんに言われ、「や、どうでもいいっす」みたいに返して怒らせたこともある。努力しても覚えられないから、もう開き直っていたのかもしれない。
仕事場でもずーっと「やる気ないんじゃない?」と疑われてきたけれど、違う。マジで覚えられないしメモなくすし、メモ見返しても目的の情報を探せない。完全にお手上げ状態だ。
ところが、スマホOKな職場に移ってから世界が変わった。
スマホなら検索できるメモが取れるし、画像や動画で記録すれば記憶力いらない。これは頭に外付けHDDをつけるみたいなもので、僕みたいな記憶力が弱い人間には神ツールだった。何かに頼ってバカになると言われるかもしれないけど、そもそもバカなんだからこれでOK。
ちなみに引っ越して3年経つ自分の住所もうろ覚えで、実家の住所は完全に記憶の彼方。でもまあ、スマホにメモしてあるし、クラウドで同期してるからなんとかなる。もしクラウドが消えても、たぶんどうにか生きていくだろう。記憶力はないけど考えるのは得意だから。
けどほんと、みんなどうしてあんなにいろんなことを覚えていられるんだろう、と不思議に思うことがある。
僕はワーキングメモリってやつが少ないんだろうか。昔、走れば記憶力が上がるかもと聞いて一時期ジョギングしたけど、変わらなかった。1~2年続ければ違ったかもしれないが、続けられるはずもない。
きっと今この瞬間も、何か大事なことを忘れている気がする。でもそれでいい。覚えていたらストレスになることも多いし、適当に失って、適当に得ている。それでも生活は回っている。
……あ、犬の散歩忘れてた。いや、これオチじゃなくガチだ。やっぱり忘れるんだな。とりあえず散歩に行こう。
柴犬はなかなか家でおしっこしてくれないから困るよホント。
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