「遠回りでもいい」そう思えた、和歌山で工場派遣の日々
「多分ゆうひは、リゾバよりも工場の派遣の方が向いてると思うよ」
福島でのリゾートバイトの契約が終わる頃、仲良くなった友人がふとそう言ってくれた。
前回は、新卒で入った会社を辞め、思い切ってリゾートバイトに飛び込んだ話を書いた。
接客は「意外といけるかも」と思えたけれど、密なコミュニケーションやマルチタスクはやっぱり苦手だった。
工場のバイトなんて考えたこともなかったけど、その友人はお世辞を言うようなタイプじゃない。
誠実で、冷静で、本音で向き合ってくれる人だった。
当時の僕は、「やったことがないことに挑戦する」という軸を大切にしていた。
未知だけど、何かの縁かもしれない。そう思い、工場の派遣に行ってみることにした。
振り返ると、遠回りしすぎだろと突っ込みたくなるが、当時の自分はいたって真面目だった。
和歌山の工場で始まった日々

派遣会社のサイトで仕事を探し、面談を受けた。
紹介されたのは、和歌山県にある工場。
和歌山なんて行ったこともないし、正直「みかん」のイメージくらいしかなかった。
一瞬ためらったけれど、その場で即決した。
リゾバのとき、選択肢が多すぎて動けなくなった経験があった。
悩んだって仕方がない。
「初めてなら、どれを選んでも同じ」
そう割り切って、和歌山での住み込みの仕事を始めることにした。
「これ、案外合ってるかも」

工場での生活が3ヶ月ほど経った頃、ふと「これ、意外と合ってるかも」と思った。
一度作業を覚えれば、あとは自分のペースで機械を動かすだけ。
誰かと競う必要も、比較されることもない。
思えばこれまでの仕事でミスが多かったのは、「人に囲まれていたから」かもしれない。
黙々と、淡々と、自分の世界で集中できる環境。僕にとっては心地よかった。
余裕が出てくると、周囲の人とも自然に仲良くなった。半年が過ぎた頃には、新人の指導を任されるようにもなった。
仕事ぶりをちゃんと評価されたのは、人生で初めてだった。
「自分にも続けられる仕事がある」
そう思えたことが、何より嬉しかった。
コロナ禍もありながら、結局その工場で1年半も働いた。
和歌山で知った、「居場所」の存在
もう一つ、意外だったのは、和歌山という土地が驚くほど肌に合っていたこと。
住んでいたのは御坊市という街で、自転車圏内にスーパーや家電量販店、ブックオフ、温泉まで揃っていた。とにかく、暮らしやすい。
それに、どこに行っても海が見える。山育ちの僕にとって、海のある街は憧れだった。
電車に乗ってぼんやり海を眺めたり、白浜まで出かけて泳いだり。
気づけば、心がほぐれていた。
「住む場所にも、相性ってあるんだな」
そんな気づきをもらったのが、和歌山だった。
でも、楽なことばかりじゃない

もちろん、工場の仕事は楽なことばかりじゃなかった。
一番しんどかったのは、単調さとの戦い。
最長で1日12時間の拘束。同じ作業を、ただひたすら繰り返す。
「もう2時間は経ったかな」と時計を見ると、まだ1時間。
あと11時間ここにいるのか、と思うと、気が遠くなった。
初めての夜勤も、体力的にかなりきつかった。
夜8時から朝8時まで、眠気と闘いながら働く。
寝不足と単調作業のダブルパンチで、イライラが止まらない日もあった。
ただ黙って機械を見つめる時間は、そのまま自分と向き合う時間でもあった。
広島で再会した片思いの子
そんなある日、大学時代に片想いしていた人と、広島で再会する機会があった。
久しぶりに会ったその子は、少しやつれていた。
仕事が忙しく、男社会の中で希望通りの働き方ができず、それでも歯を食いしばって働いているという。
その姿を見て、不思議と力が湧いてきた。
「自分も、もう一度頑張ってみたい」
「失敗してもいい。とにかく、何かに向き合いたい」
そんなふうに自然と思えた。
もう一度、ITに挑戦しよう
新卒の頃、僕はSIerで働いていた。でも、早々に挫折した。
「自分はITに向いてないんだ」
そう思っていた。
でも少しずつ調べるうちに、「当時の働き方が合ってなかっただけかもしれない」と思い始めた。
どうやらSIerは形式主義になりがちで、リモートもしづらいらしい。
僕が憧れていた「場所を選ばない自由な働き方」とは、まるで違っていた。
だったら、Web系ならまた違うのかもしれない。
怖かったけど、もう一度挑戦してみよう。
そう決めて、テックキャンプの受講を目指すことにした。60万円。
高かったけど、その分、覚悟が決まった。
最後に、もう一つやってみたかったこと

実はもう一つテックキャンプの受講にやったことがある。
それは牧場での住み込みバイト。北海道一周の旅。である。
すごく良い経験だった。
でも同時に思った。「これ以上今の働き方を続けても、得られるものはもうない」
なんで北海道?と思うが、当時の僕にとっては、もう一度ITに挑戦するというのは怖いことだった。
もう一つ回り道して、気持ちを確かめたかった。
そして北海道から帰ってくると不思議と、
「よし、テックキャンプ応募しよう」と決意が固まったので不思議だなと思う。
※ちなみに当時の牧場での体験談は下記のはてなブログで書いてました。
「気持ちが動く」方向へ、動いてみる
派遣での2年半は、遠回りだったかもしれない。
でもその中で、自分の得意や不向きを少しずつ知っていった。
「今いる場所がどうしてもつらい」
「何が合ってるか分からない」
そんなときは、とりあえず成果なんて気にせず動いてみるのもアリだと思う。
動けば、少なくとも「気持ちは動く」。
それだけで、前を向けることがある。
↓次回は、エンジニアに再挑戦しての、まだ続く葛藤を書きます。↓
