おせっかいおばちゃんに救われ、たどり着いた「サクロモンテの丘」で見る洞窟フラメンコ。【スペイン旅行記⑫】
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窮地に陥ったわたしの目の前に、まさかの救世主が!
憧れのサクロモンテに行ける!意気揚々と路線バスに乗り込んだわたしだが、なんとバス停で降りそこねてしまった!
これは詰んだか!?
そう思っていたわたしの横に、声のでかいおばちゃんがいた。もちろんそこら辺の一般人。この人がまさかの大活躍をすることになる。
わたしがバスの運転手にサクロモンテの洞窟フラメンコを予約した紙を見せて、「サクロモンテ!!!フラメンコ!!!Donde?(どこ)」とか必死こいて言っているのを見ていたのか、運転手の近くに立っていた一般人のおばちゃんが何やら運転手に言い始めた。
何を言っているかは全然分からなかったんだけど、運転手に向かって何かをがーっと言い始めた。
たぶん「この人、サクロモンテで降りたかったのに通り過ぎたでしょ。ちゃんと降ろしてあげないと駄目じゃないの」みたいなことを言ってくれているっぽい。運転手も何やらでかい声で「そんなこと言ったってどーのこーの」っぽく応戦している。(あくまで想像)それにさらにでかい声でおばちゃんが返す。
どうなることやらと事の成り行きを見守っていると、突然バスが坂を曲がり、急坂を降り始めた。坂が急すぎてバスで立っていると滑り落ちそうになるので必死に棒につかまる。何が起こっているのだと思って必死にバスにつかまっていると、ふとバスが停車し、ドアが開いた。よく見たらさっき乗り過ごしたサクロモンテのバス停にいるじゃないか!!!
何が起こったか分からないままとにかく今度こそ降りようと動く。おばちゃんに「サクロモンテだよね?」と聞くと、「そうそうここで降りな!」的に言ってくれたので「グラシアス!」と叫んでバスから降りた。助かった!
バス停を降りて目の前が、まさに憧れたサクロモンテの丘!

路線バスが路線を外れるスペイン
憧れの場所にたどり着けたことはもちろん嬉しかったんだけど、それよりもバスのハプニングで「路線バスって、路線から外れるんだ」ということへの衝撃がまだ消えない。
さっきのやり取りを思い出し、知らないおばちゃんが、おどおどしているアジア人のアラフィフ観光客のために運転手に物申してくれて、その結果バスがブーブー言いながらもルート変更までしてくれるんだ、と。日本ならきっともっと親切に何かをしてくれるだろうが、ルート変更とかは絶対にありえないだろう。
たどり着くまではものすごい心臓バクバクで不安だったのに、こういう日本では起こり得ないハプニングに出会うと、なんだか旅の語り種ができた気がして、内心ほくそ笑んでしまう自分もいる。
この後もバスに乗るたびに観察していると、スペインの路線バスでは、なぜか必ずバスの運転手の横に貼りついてあれこれしゃべるおばちゃん、もしくはおじさんがいる。そしてでかい声でしゃべっている。(スペイン人て声でかいよね)

わたしを助けてくれたあのおばちゃん、名前も知らないし二度と会えないんだけど、本当にありがとう。これは本当に海外旅行の醍醐味だなと思った。
いよいよサクロモンテの丘に降り立つ。
改めて、白い洞窟を眺める。やっと来た、来られた!
振り返ると、アルハンブラ宮殿がものすごく綺麗に見えた。この景色だけですでに100点満点。

ここはフラメンコの源流、ジプシーたちが住んでいた洞窟がある丘。災害で強制的に立ち退かされて、今はもう誰も住んでいないんだけど、洞窟のいくつかがフラメンコを見られる場所として残されている。
ここを知ったきっかけは映画「サクロモンテの丘」。ジプシーとフラメンコの歴史をひも解くドキュメンタリー映画。
何度もサクロモンテを訪れているという人に、どこのフラメンコを見ればいいか聞いたら「一番古くていいよ」と教えてもらったのが、サンブラ・マリア・ラ・カナステラだった。
お昼にグラナダに着くので、移動日は夜の洞窟フラメンコだけ予定に入れてあった。バルセロナから先は、フラメンコ三昧の日々を過ごす予定。ぬふふ。
今まで映像で見てきたものがそのまま目の前にあって、ああここがあの人が映ってたところだ、と感動の前借りが止まらない。
ただし、めちゃくちゃ暑い。ゆっくり歩きたいのだが、暑すぎて無理。
フラメンコは、予約をしていても座席は早く来た順に選べるそうで、できるだけ早めに行こうと思って40分以上前に着いてしまった。
これが完全に裏目に出た。開演は7時45分の20分前から、と聞いていたのに、それより前に着いてしまって、7時前には到着完了。逃げ場が全然ない。カフェも全部やっていない。あついーーー!!!
しょうがないから坂のあたりをうろうろする。でもここは石畳というかただの石を敷き詰めたデコボコで、足つぼマットみたいな作り。靴が滑ってしょうがないし、坂はちょっとでも油断すると滑り台みたいにつるんとお尻もちをつきそうで、めちゃめちゃ怖い。そろりそろりと進んだら、すでに開場している洞窟で、バイラオーラが休憩していた。
アルハンブラ宮殿を背に、フラメンコ衣装を着た踊り子。絵になるー!

なんて喜んでいたのもつかの間、暑くてこれでは入場前に倒れてしまう。
結局ちょっとしたひさしの日陰に逃げ込んで、ただ立っているしかなかった。
それでも時間は経たなくて、近くにジプシーフラメンコの巨匠、クーロ・アルバイシンの元の住居があったりして、中には入れないけど覗いてみたりして、虚無に歩いて時間を潰す。

スタッフもまだ全然来ていなくて、自分が一番乗りなんじゃないかというレベルの早さ。やっとスタッフが一人二人と来て、受付のテーブルを外に出し始めたので、これは先に入れてもらえないかな、と聞いてみたら「まだ20分前にならないと入れない」とにこやかに断られた。しょうがなく日陰へ再避難。

それでもここまで早く来たんだから一番いい席は取りたい。受付のおじさんに「わたしが一番乗りだからね」という視線をひたすら送りながら待つ。ちょっと早めに入れてくれないかなぁという気持ちを込めて、おじさんを見つめるわたし(笑)
やっと受付の時間が来て、チケットを渡そうとしたら、ここは公式サイトで予約しただけで実はお金を払っていなかったらしく、まさかの現金払い!
26ユーロ。クレジットカードは使えない。一応現金は持っていたので払えたんだけど、突如キャッシュが必要になる場面ってあるのだな、と学習。やはり最低でも50ユーロは持っておかないと怖いな、と心に刻む。
憧れの洞窟フラメンコ、初体験。
いよいよ洞窟に足を踏み入れる。

天井や壁にはたくさんの鍋やフライパンが飾ってあるのだが、これは彼らの伝統的職業が鍋づくりであることに由来するようだ。フラメンコが生まれた背景には、鉄を叩く金属職人や、織物職人や、籠編み職人がいて、ジプシーはそういう仕事をしている傍らでフラメンコという文化が育っていった経緯がある。鍋を飾ると反射で室内が明るくなる効果もあるのだとか。
壁には昔の有名人が来た時の写真が並んでいる。わぁ、フラメンコの歴史が詰まっていると静かに大興奮。


またもや「来た、本当に来たぞ」という気分になった。
バルセロナのガウディのドーンとした建築や、可愛らしいカサ・バトリョとはもう全然違う世界線だ。
ここに住んでいたジプシーたちは、洞窟で貧しい暮らしをしながら、たぶん最初は自分たちの余興として始まったものが、だんだん芸術になって、ショーになって、観光になっていった。その家庭の歴史がそのまま刻まれている洞窟。
そう思うと、感動も人一倍になる。始まるまでも、きょろきょろと洞窟内を見渡して、あそこに有名人の写真がある、とぶつぶつ言いながら勝手に感動していた。
飲み物を頼んで、それを飲みながらフラメンコを見る。細長い洞窟の壁沿いに観客が座る。おそらく50人入ればギュウギュウ。真ん中を踊りのスペースとして使うスタイルだ。
飲み物を飲みながら、ドキドキしながら待っていると、いよいよ開始。この洞窟で、フラメンコを見ているわたし、というのがなんだか信じられないままショーが始まった。

踊っているものはもちろんフラメンコなんだけど、こういう場所で見るのは初めてで、なんというか風情がある。場所が与える影響というのは本当にすごいんだな、と思いながら見ていた。
踊りそのものがどうこうというより、そこにいてフラメンコを見ているわたし自身とか、ここでやられているフラメンコということ自体が、もう感動の対象になっていた。
うわー、本当に来ちゃった。
そんなことをずっと思いながら、ここに住んでいた人たちの歴史にも思いを馳せていた。
フラメンコは家ごとに引き継いでいく、血統や家制度みたいな感じが強いらしくて、このマリア・ラ・カナステラもおそらくそういう家系がやっているんだと思う。
カナステラというのは籠編み職人のことらしいので、籠編みをしていた人が作ったか住んでいたか、そういう理由でこの名前がついているようだ。

狭さがちょうどいい雰囲気を作っていて、ひたすらここにいられることに感動しながら、ショーは1時間くらいで終わった。
終わって外に出たら9時を過ぎていた。南に来るとさらに日没が遅くなるみたいで、ちょうど夕焼けがものすごく綺麗な時間帯。
帰りのバスはさっきあれだけトラブったけど、終点まで行けば確実に着くので、20分に1本くらいのバスを待つ。
涼しくなった夕方の空気に浸りながら待っていると、踊り子さんやギターの人たちが普通に車で帰っていく光景も見えて、ああみんなこうやって毎日生活しているんだな、というのを見られて、それもまた幸せ。
どんぶりいっぱいのガスパチョと、宿への帰り道。
さて、市街地に戻った。さすがに時間は9時過ぎているので日が暮れてきている。


さあ、夜ご飯はどうしようか。
グラナダもバルセロナと同じで大聖堂が街のシンボルになっていて、その近くで何かないかなとうろうろする。
グラナダもすごく活気があって、観光客もたくさんいるし、食事できる店もたくさんあって、ここでもまたお店選びという永遠の宿題にぶつかる。
とりあえず良さそうなところに入って、ビールを頼んでからメニューを見る。

まだこちらに来て食べたことがないクロケタ(コロッケ)を頼んだ。日本のコロッケとはちょっと違って、クリームコロッケ的な小さいやつ。AIに相談したら「お腹に溜まるしいいんじゃないですか」と言ってたので選んでみた。日本のものよりパン粉が細かくて食べやすい。しかも揚げたてでカリっとして美味しい!気に入ったよ!
もう一品、すごく暑くて疲れていたので、ガスパチョ(トマトの冷製スープ)を頼んだ。
小さいサイズかどうか一応確認したら、おじさんが「ちっちゃいちっちゃい、だいじょーぶ!」と言っていたのに、出てきたのはでかいボウルにどかんと入ったガスパチョ。これのどこが小さいんだ!?

食べるのに正直必死だったけど、トマトの冷たいスープって暑いところにすごく合うので、美味しいのは美味しい。
必死に食べたらスープでお腹いっぱい、というかダブダブになり、いちおう満腹になった。
時間も遅くなったので、スーパーで水だけ買ってそのまま宿に戻ることにする。スーパーに寄ったら暑さのせいか水がかなり少なくなっていた。そして1本ずつ陳列されているはずが、こんな感じでパッケージビリビリにして自分で取る方式。あたしゃドロボーでも入ったのかと思ったよ・・・。
店員さんがバラシて陳列するのをサボったのかな・・・
郷に入れば郷に従え、でこれを取らないと水が買えないので、わたしもビリビリ破いて2本買う。

外はもう真っ暗で、わたしの宿までの道は狭くて人通りも少なくて少し怖いかなと身構えたけど、すぐそばにバルがあったりして賑やかだったので、なんとか怖がらずに宿まで帰れた。
個人的には、賑やかなところの方が逆に安全な気がする。賑やかなりにボッタクリとかスリとかも発生するかもしれないけど、それは気を付けるとして、海外でも日本でも、人気のない場所よりは、賑やかで人目があるほうが安心感がある。
そんな感じでやっと宿にたどり着いた。窓が木枠なので音漏れがして、外からは近所のバルのテラスで飲んでいる賑やかな声が聞こえる。それも雰囲気があるってもんよ。

そんなこんなで今日もまた、飛行機移動から始まって、無料のタパス食べて、バスのトラブルがあって、フラメンコの濃い経験をして・・・濃い一日だった。
明日からグラナダの観光が始まる。3泊するので、ここはじっくり回れる。次はいよいよアルハンブラ宮殿。すごい暑い中だけど、楽しみだ。
つづく。
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