住宅ローンシリーズ第3回 — 固定に借り換えるべきか。傘の値段は、雨より先に上がる
「先輩、結論から聞きます。今すぐ固定に借り換えた方がいいですか」
結論から聞くようになったな。稼ぐ力シリーズが効いとる。
「褒められてる気がしないんですけど」
褒めとる。ほんで答えは——**「たぶん、おめえは借り換えん方がええ」**じゃ。
「え、そうなんですか。前回まであんなに脅しといて」
脅しとらん。確認せえと言うただけじゃ。確認した結果、「今のままでええ」ゆう答えが出ることもある。
「……なんか拍子抜けです」
拍子抜けさせたるわ。今日は数字を全部出す。固定に替えたら月なんぼ増えるか。 それを見てから判断せえ。
傘の値段は、雨が降る前に上がっとる
まず今の相場を言う。2026年7月時点じゃ。
変動金利:ワシの適用金利は0.475%(借りた当時)
全期間固定(フラット35):最も多い金利が3.140%
「……えっ」
もう一回言うで。**3.140%**じゃ。
「変動の6倍以上じゃないですか」
そうじゃ。ほんで、これが今日いちばん大事な事実よ。
「なんでそんなに違うんですか」
固定金利はな、長期金利(10年国債の金利)を見て決まるんじゃ。ほんでその長期金利が今2.69%まで上がっとる。
「……あ、円安シリーズでやった『国債が売られると金利が上がる』ってやつですか」
そうじゃ。よう覚えとった。国債が売られて長期金利が上がる。ほんで固定金利も一緒に上がる。
ええか、ここじゃ。
固定金利ゆうんは、「これから金利が上がりますよ」ゆう市場の予想を、先に値段に入れとるんじゃ。
「……先に?」
おめえ、急に雨が降り出した日にコンビニで傘を買うたことあるか。
「あります。500円くらいの、すぐ壊れるやつ」
その傘はな、雨が降る前から店に置いてあったじゃろ。
「置いてありましたね」
雨が降り出してから作られたんじゃない。店は雨が来ることを見越して、先に仕入れて、先に値段を付けとる。
固定金利も同じじゃ。雨(金利上昇)はまだ本降りになっとらん。ほんでも傘の値段はもう上がっとる。
「……じゃあ、今買うと高いんですか」
そこが今日の急所じゃ。
固定に借り換えたら、月なんぼになるんか
ワシの数字で計算する。残債2,050万円、残り25年じゃ。
| | 金利 | 毎月の返済 |
|---|---|---|
| 今のまま(変動) | 0.475% | 約72,400円 |
| 固定に借り換え | 3.140% | 約98,700円 |
「……26,000円増えてますね」
月約26,300円じゃ。年で約31万円。
「31万円……」
ほんでこれを25年続けたら約790万円じゃ。
「790万円!?」
さらにな、借り換えには諸費用がかかる。事務手数料が借入額の2.2%なら、2,050万円で約45万円。ほかに保証料・登記費用・印紙代もかかる。合わせて数十万円は見といた方がええ。
「……えっと、つまり」
今すぐ固定に借り換えるゆうことは、「これから金利が上がるかもしれん」に対して、月2万6,000円の保険料を先払いするゆうことじゃ。
「……高い保険ですね」
高いで。ほんで大事なんは、高いか安いかを決めるんはワシじゃないゆうことじゃ。
損益分岐点——変動がどこまで上がったら逆転するか
「じゃあ、どう判断すればいいんですか」
分岐点を出せばええ。簡単じゃ。
変動金利が固定金利(3.140%)を超えたら、固定の方が得じゃったゆうことになる。
「今が0.475%だから……」
+2.665%上がったら並ぶゆうことじゃ。
「2.665%……。今回の利上げが0.25%刻みでしたよね」
そうじゃ。単純計算で10回以上の利上げが要る。
「そんなに上がりますか」
分からん。
「また分からんですか」
分からん。分かるゆう奴を信用するな。 ほんでも、こう考えることはできる。
変動が2.665%上がるまで、ワシは毎月2万6,000円ずつ得しとる
仮に5年後に変動が1.5%になっとっても、まだ固定より安い
ほんで、その間に浮いた金を繰上返済に回せば、残債はさらに減る
「……あ、浮いたお金を寝かせておかなければ」
そこが次回の話じゃ。浮いた金をどうするか。 それが変動を選んだ人の宿題よ。
「宿題を出されるシリーズですね」
家はな、買うたら終わりじゃない。買うてから25年、宿題が続くんじゃ。
それでも借り換えた方がええ人
ここは大事じゃけぇ、はっきり言う。借り換えた方がええ人はおる。
① 返済がもうギリギリの人
手取りに対する返済の割合が高うて、月2〜3万円増えたら生活が壊れる人じゃ。
この人にとって固定は「損得」の話じゃない。生活を守る話じゃ。
「……損しても、ですか」
破産と比べたら、損は安い。 これはワシの持論じゃ。
② 借りたばっかりで、残債が多い人
前回言うたじゃろ。残債5,000万・35年で借りたばかりの人は、金利上昇のダメージがワシよりずっとでかい。残債と期間が大きいほど、金利1%の重みが増す。
③ 金利のニュースで眠れんくなる人
「それ、判断基準になるんですか」
なる。夜中に3時に起きて返済シミュレーションをしとる人間は、その時点でもう損しとる。
「……何を損してるんですか」
眠りじゃ。 使う力シリーズでやったじゃろ。睡眠は金で買える資産の中でいちばん利回りがええ。
「……つながりましたね」
全部つながっとるんじゃ。
借り換えん人がやるべきこと
ほんで、ワシみたいに「今は借り換えん」と決めた人。何もせんでええわけじゃない。
① 「借り換えん」を毎年見直す
一回決めたら終わりにするな。 年に1回、誕生日でも正月でもええ、日を決めて金利を見る。
② 借り換えの見積もりだけ取っておく
「借りるつもりがなくても、ですか」
取っておけ。自分の家がなんぼで借り換えられるかを知っとくんは、値札を知っとるのと同じじゃ。
いざ必要になった時に「どこに相談すりゃええんか」から始めとったら、間に合わん。
③ 浮いとる分を、ちゃんと別にしておく
固定に替えとったら払っとった月2万6,000円。それを生活費に溶かしたら、変動を選んだ意味が消える。
「……あ。安く借りられてるのに、その分を使っちゃったら」
ただの散財じゃ。 変動を選ぶゆうんは、「浮いた分を自分で運用します」ゆう宣言なんじゃ。
「……宣言した覚えがないです」
ハンコを押した時点で宣言しとるんじゃ。ワシもな。
結局、何が大事なんじゃ
2026年7月時点で、フラット35の最も多い金利は3.140%。変動0.475%とは6倍以上の差がある
固定金利は長期金利(10年国債・2.69%)を見て決まる。つまり**「これから上がる」という予想が、すでに値段に入っとる**。傘の値段は雨より先に上がる
残債2,050万・残り25年なら、固定に借り換えると月約26,300円増(年約31万円)。さらに諸費用が数十万円かかる
損益分岐点は変動が+2.665%上がったところ。0.25%刻みなら10回以上の利上げが必要な水準じゃ
借り換えた方がええ人:返済がギリギリの人/借りたばかりで残債が多い人/金利のニュースで眠れん人。損得より生活を守る判断がある
借り換えん人の宿題:毎年見直す/見積もりだけ取っておく/浮いた分を生活費に溶かさん
次回は、その浮いた金の話じゃ。繰上返済と投資、どっちが先か。 金利1%時代で、答えが変わったところがある。
今日の参考書籍
まず、この3冊は全シリーズ共通の土台じゃ
📚 「本当の自由を手に入れる お金の大学」 リベ大・両学長 著
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家は人生最大の固定費じゃ。買う前・借りる前に読むのがいちばんええが、借りた後でも遅うない。
📚 「ジェイソン流お金の増やし方」 厚切りジェイソン 著
→ Amazonで見る / 楽天で見る
浮いた金を溶かさんための考え方。「使わなければ100%オフ」はローンにも効く。
📚 「20代から始める新NISA 高配当株投資術」 プラズマコイ 著
→ Amazonで見る / 楽天で見る
浮いた分をどこに置くか。次回の予習にもなる1冊じゃ。
ほんで今回のテーマなら、この2冊じゃ
📚 「金利を見れば投資はうまくいく」 堀井正孝 著
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なんで固定金利が長期金利で決まるんか。今日の「傘の値段」の理屈が、ちゃんと書いてある。
📚 「行動経済学が最強の学問である」 相良奈美香 著
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不安な時ほど人は高い買い物をする。借り換えの判断を、恐怖でやらんための1冊じゃ。
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円安シリーズ第5回 — 市場は最後の野党(国債が売られると金利が上がる話)
使う力シリーズ第1回 — 睡眠と運動(眠りは金で買える資産の話)
出典・注記
フラット35の2026年7月の金利(最も多い金利3.140%):参照:はじめての住宅ローン(リクルート)(参照日:2026-07-29)
長期金利(10年国債)2.69%(2026年6月30日時点):同上
借り換え諸費用(事務手数料は定額3〜5万円または借入額の2.2%程度、ほかに保証料・登記費用等):参照:ダイヤモンド不動産研究所(参照日:2026-07-29)
記事中の返済額は残債2,050万円・残り25年・元利均等返済を前提とした概算。実際の金利・返済額・諸費用は金融機関や個人の条件により大きく異なる
金利は毎月変わる。記事の数字は2026年7月時点のもの。実際の判断は必ず最新の金利で、複数の金融機関を比較して行うこと
⚠️ 本記事は情報提供を目的としており、投資助言・借入や借り換えの推奨ではありません。住宅ローンの選択は自己責任で、必ずご自身の状況に合わせて判断してください。
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