水に流す前にできること-顔料と環境のはなし #3 (実践編)
この記事は以下の記事の続編で、シリーズの最終編になります。
今回は、環境を大切にしながら水彩を楽しむための実践編✨
なぜ気をつけたいのかについては、前の記事で詳しく書いています👇
水彩が好きなら知っておきたい
誰にでも気軽に楽しめるアート、水彩画。
でも絵具の中には、取り扱いに少し気をつけたい顔料もあります。環境面への配慮について触れている水彩作家さんを、わたしがネット上で見かけたのは一度だけ。
わざわざ触れなくとも、対応しているという人はいる筈だし、ひょっとすると芸術系の教育を受けた人にとっては当然過ぎて、言わないだけかも知れない(希望的観測)。
でもわたし自身は知らずに、以前は絵具を気軽に水で洗い流していました。きっと同じ人も少なくないと思い、この『顔料と環境のはなし』シリーズを書きました。
気軽に下水道へ流したくない絵具(顔料)とは
特に気をつけたい顔料を、3つのグループにまとめた結果が次の通りです(詳しくは#1の記事をご覧ください)。
1位 カドミウム系 (流すべきではない)
※代表的なカドミウム系顔料:PR108, PO20, PY35, PY37(カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、カドミウムイエローなど)
2位 コバルト系 (できる限り流すべきではない)
※代表的なコバルト系顔料:PB28, PB35, PB36, PG19, PG26, PG50, PV14(コバルトブルー、ターコイズブルー、セルリアンブルー、ヴァーディターブルーなど)
3位 クロム系、フタロシアニンなど金属を含む合成顔料 (流さないように扱う価値あり)
※PG7, PG17, PG18, PG36, PB15, PB16, PB74, PBr24 (フタロブルー、フタログリーン、ビリジャン、ゴールドオーカーなど)
カドミウムとコバルトは、高価な原料なので、主にアーティスト用・プロ用とされる絵具に使われています。
でも青や緑系の色によく使われる、フタロシアニン系顔料は発色も強く、大量生産されており、コスパのよい原料。よって(顔料名が表示されていないような)安価な青・緑の絵具の多くにも、使われている可能性が高いものです。
水彩ユーザーができること
絵具は、紙の上で使い切れれば、それが一番!

でも筆を洗った水や、パレットに絵具が残っている場合、水でサッと洗い流してしまう前に、できることを紹介します。
カドミウムとコバルト系顔料を含む色を知る
まずは手持ちの絵具の中で、カドミウムとコバルトを含む色を把握することから✨
色名では判断できないので、絵具チューブに記載してある顔料(C.I. コード)をチェック!ハーフパンの場合は、包んであった紙に記載されています。
それでもわからない場合は、各メーカーのサイトにて確認できます
⇨ターナー色彩透明水彩絵具 カラーチャート / ホルベイン透明水彩絵具 全色色名一覧 / クサカベ 透明水彩絵具 etc.
3位グループも同様に調べて、どの絵具が該当するかを知りましょう。
カドミウムとコバルト系だけは別扱いに
しつこく繰り返している通り、1位と2位の顔料は別格扱いをしたいものです。
わたし自身は、下記で紹介している方法を、カドミウム&コバルトと、それ以外の顔料すべて、に分けて対応しています。
ただ絵具をたくさん使う人は、全色対応するのは大変かもしれないので、その場合、カドミウム&コバルトと、3位グループのもの、を対応してみてください。
用意したいものは2つ
ペーパータオル/キッチンペーパー
スポイト
ペーパータオルで筆を拭く
単純ですが、筆洗いの水に入れる前に、キッチンペーパーで筆を拭くこと。
このワンステップを踏むだけで、かなりエコ・フレンドリー✨
筆洗い水の汚れるスピードが格段に遅くなるので、一石二鳥です👍
わたしは小さく畳んだキッチンペーパーを、1)絵具を拭く用と、2)筆を洗った後に余分な水分を抜く用、別々に用意しています。
⇨ここで、絵具を拭く用のペーパータオルは、a) カドミウム&コバルトと、b) それ以外(または3位グループ)でも分けるので、(1-a用と1-b用と2用の)計3つになります。
前者(1)はとても汚れますが、後者(2)はあまり汚れません。だから前者を捨てた後には、後者で使っていたペーパータオルを前者用とし、後者にはいつもきれいなものを用意します。
汚れたペーパータオルは、少し湿ったくらいの状態のまま、燃えるゴミ(*)へ。
乾燥すると顔料が飛散することもあるので、パリパリに乾いてしまった場合は、水でタオルを少し湿らせてから捨てます。
パレットを洗う前も同様に。大きめの筆に水を含ませ、パレットに残った絵具もペーパータオルに吸収させ、最後は拭きとります。
*顔料を含ませた程度のペーパータオルは燃えるゴミですが、絵具をチューブ毎捨てる場合は不燃ゴミになる可能性が高く、ここには該当しません。
スポイトを使う
水彩絵具は、色々な濃さで使うと思うのですがー
水分が少なく、絵具たっぷりの状態だと、ペーパータオルだけでは落ちにくいことがあります。
そういう時に役立つのが、スポイト!
直接、筆に水を垂らして、絵具を筆からペーパータオルへと落とせます。

(写真に写っているスポイトは、ガラス製で気に入ってはいるものの、この用途には小さ過ぎます💦。ミニではない、普通サイズのスポイトをおすすめします。)
スポイトは持っていると、絵具の濃さを調整するときにも使えて便利です☝️✨色を薄めたい時、絵具のついた筆を水につけることなく、スポイトできれいな水を足せます。
筆洗い水を、捨てる前に一晩寝かせる
筆洗器(わたしはジャム瓶を使用)に残った水は、流す前に、一晩寝かせます⭐️
(容器をすぐに使いたい場合は、別な容器に水を入れ替えて、寝かせます。)
カドミウムやコバルト系は、ペーパータオルで拭き取るのを忘れてしまっても、比較的水の中で沈殿しやすいので、寝かせれば容器の底にたまります。(他の顔料でも、比重の重いもの、粒子の大きいものは沈殿します。)
一晩置いた後、沈殿した顔料を流さないように気をつけて、上澄み水だけを流し、最後に、要らない端切れやティッシュで、底に溜まった顔料を拭き取り、燃えるゴミへ!
(上澄み水を流すときに沈殿している顔料が動いてしまう場合は、寝かせる時間を延ばすと動きにくくなります。)

全色いつでも、ペーパータオルで拭き取るようにしてからは、筆洗い水を一晩寝かせても、沈殿物は少しだけ、水の色は(小さい粒子や比重の軽い顔料で)濁ったままとなり、あまり変わらなくなりました。だからこそ、3位グループもなるべく拭き取った方がいいと、実感しました。
あると便利な水筆
屋外での水彩スケッチなどでよく用いられる、水筆。

水タンクが筆の持ち手部分にあるので、筆を筆洗器に浸すことなく、水を足せます。よって、スポイトを使わなくても、水タンクを押すだけで、直接絵具をペーパータオルに落とせます。
カドミウムやコバルト系の絵具を使うときは、筆を水筆にして、筆洗器には一切つけないで済ませるーというやり方もお薦め!

日本では平筆の水筆もあったり、種類が豊富!
下水処理にお任せ!-にはできない理由
一つ前の記事、『なぜ絵具に気をつけたいのか― 顔料(カドミウム・コバルト・フタロシアニンなど)と環境のはなし #2』では、各顔料が河川に流れ着いた場合に、どのような影響を与える可能性があるのか、詳しく書きました。
ーただ、そこで想定されている条件は「顔料そのもの」が単体で流れた場合。でも実際はそうではないので、少し補足ー
実際は、家庭から流された絵具(顔料)は生活排水の一部となり、石けんや洗剤とも混ざりあうことになります。
そうすると、排水の中のそういった成分との関わり方によって、顔料単体のときとは違う動きをする可能性があります。場合によっては、(顔料に含まれる)金属成分が水中で動きやすくなったり、最終的に環境への影響の出方が(単体のときとは)変わることも考えられます。
そういう意味でも、排水する前に、対応しておけばより安全と言えます☝️
新しい絵具を買うときに、顔料を気にしてみる
新しく絵具を買うときに、顔料にこだわってみるのも一選択肢。
特に、カドミウムとコバルト顔料を含む絵具が欲しいと思ったときには、代替色がないかを確認してみる。
絵具メーカーの努力によって、既に水彩絵具では使用中止になっている毒性の高い顔料もあるそうです。また既存の絵具の色味・特性をできるだけ維持した上で、毒性の高い顔料を置き換える動きもあります。
顔料を知ると、水彩画もよりおもしろくなるので、知って損はありません😊
誰も見ていなくても
日本には「お天道様が見ているから」という、素晴らしい言い回しがあります✨
ルールがなくても、誰かが褒めてくれなくても、「あなたの行いは、お天道様がちゃんと見ているから、ちゃんとしようね、」と。
別な文化では、カルマ(業)として返ってくるから悪行はすべきではないー最近は、善行をするとカルマを稼げるという言い方をしたりもしますが、わたしはこの「お天道様(太陽)」が見ていてくれるから、という表現が好きです。
川や海を汚染する可能性があっても、そんな絵具の取り扱いも、あくまでも個人次第。
自然環境は、壊れていることに人間が気づく頃には、もう手遅れーということも多い。
もし、誰も見ていなくても、今自分にできることをやってみよう、とこの記事を読んで思っていただけたら本望です。
そうしたら、明日から太陽の光を浴びたときに、今まで以上に気持ちよく感じられるかもしれません😊✨
『顔料と環境のはなし』シリーズ
興味のある方は、シリーズの最初の記事から読むと全体の流れがわかりやすいです。
#1 まず知っておきたいこと
#2 なぜ気をつけたいのか
#3 水に流す前にできること(この記事)
