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『水曜どうでしょう』なぜ行き先決定の瞬間はこんなに面白いのか|第3夜

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『水曜どうでしょう』の名場面を一つ挙げるとしたら、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

どうでしょうを象徴する場面として、私は「行き先決定の瞬間」を挙げたいと思います。

サイコロの旅の場合、サイコロが振られ、行き先が決まる。藤村Dが行き先を読み上げる。そして大泉さんが絶望する。

冷静に考えると、それだけの場面です。

まだ旅は始まっていません。観光地も出てきません。名物も登場しません。それなのに、なぜあれほど面白いのでしょうか。

想定外の行き先「臼杵」を引き当て不安そうな大泉さん
(引用元:DVD「サイコロ1」より)

実は行き先決定の瞬間は、非常にシンプルな構造です。

しかも毎回ほぼ同じ流れです。普通なら飽きてもおかしくありません。

ところが私たちは何度見ても引き込まれてしまいます。

それは、誰も未来を知らないからだと思います。

普通のテレビ番組は、出演者もスタッフもある程度先の展開を知っています。もちろん多少のハプニングはあるでしょう。しかし基本的には予定された未来へ向かって進みます。

ところがサイコロの旅は違います。

大泉さんも知らない。ミスターも知らない。視聴者も知らない。

その瞬間だけは、本当に誰も知らないのです。

だから行き先決定の瞬間には独特の緊張感があります。

これは少しスポーツ観戦にも似ています。結果が分かっている試合より、結果がどうなるか分からない試合の方が面白いのも同じ理由です。

未来が確定していない瞬間に、人は引き込まれます。

『水曜どうでしょう』は、その瞬間を番組の中心に持ってきました。


実は行き先決定の瞬間が面白い理由は、単に「どこへ行くか分からないから」だけではありません。

私はそこに、『水曜どうでしょう』独特の番組作りがあると思っています。

普通の旅番組であれば、目的地が主役です。

どんな景色が見られるのか。どんな食べ物があるのか。どんな観光地があるのか。

番組は目的地へ向かって進んでいきます。

ところがサイコロの旅では、目的地はむしろ脇役です。

主役は、行き先を聞いた瞬間の人間の反応です。

藤村Dは、毎回その瞬間をじっくり見せます。

サイコロが転がる時間。出た目を確認する時間。行き先を読み上げる時間。そして大泉さんが現実を受け入れられずに固まる時間。

今のテレビで考えると、驚くほど贅沢な時間の使い方です。

本来なら編集で短くできる場面なのに、『水曜どうでしょう』はあえて削りません。

なぜなら、その数秒間に本物の感情が映るからです。

嬉しさ。不安。絶望。諦め。

そうした感情が一気に表情へ現れる。

私たちは行き先を見ているのではなく、人間を見ているのです。

だから何度見ても飽きないのだと思います。


そしてもう一つ面白いのは、行き先決定の主役は目的地ではないということです。

東京なのか。鹿児島なのか。四国なのか。

もちろんそれも重要です。

しかし私たちが本当に見ているのは、大泉さんの顔ではないでしょうか。

行き先が読み上げられた瞬間の表情。数秒間の沈黙。そして飛び出す文句。

私たちは目的地ではなく、人間の反応を見ているのです。

だから行き先そのものより、「えぇーっ!」というリアクションの方が記憶に残る。

考えてみれば、『水曜どうでしょう』は昔からそういう番組でした。

旅番組でありながら、観光地より人間を映す。移動より会話を映す。結果より過程を映す。

前回の第2夜でも書きましたが、私たちは景色を見ているようで、実は人を見ているのかもしれません。

行き先決定の瞬間は、そのことが最も分かりやすく現れる場面です。

フェリー乗船に不満を隠せない大泉さんの一言
(引用元:DVD「サイコロ1」より)

私は、この行き先決定の瞬間の面白さは人生にも少し似ていると思っています。

ただし、第1夜で書いた「計画どおりにいかない人生」とは少し違います。

今回は「自分で決められないことの価値」についてです。

私たちは普段、自分で選ぶことを良いことだと考えています。

進学先。就職先。住む場所。仕事。投資先。

自分で決めることが大切だと言われます。

もちろんそれはその通りです。

しかし人生を振り返ると、本当に自分を変えた出来事は、自分で決めなかったものも多い気がします。

偶然の出会い。突然の異動。思いがけない転職。たまたま読んだ本。何気なく見た動画。

私自身も、FIRE生活を送りながら『水曜どうでしょう』について文章を書く日が来るとは想像もしていませんでした。

でも振り返ると、自分の人生を大きく変えた出来事の多くは、最初から計画していたものではありませんでした。


サイコロの旅も同じです。

もし出演者が自分で行き先を選べるなら、あれほど面白くはならなかったでしょう。

思い通りにならないから面白い。予想外だから記憶に残る。行きたくなかった場所が、後から振り返ると一番面白かったりする。

そこに人生との共通点があります。

だから私たちは、行き先決定を見るたびに少しワクワクするのかもしれません。

それは単に旅の行き先が気になるからではありません。

まだ決まっていない未来を見ているからです。

そして、その未来に振り回される人間を見ているからです。

『水曜どうでしょう』は旅番組です。

でも本当に見ているのは旅ではない。行き先でもない。

予想外の出来事に直面した時、人がどう反応するのか。その人間らしさを見ているのだと思います。

だから行き先決定の瞬間は面白い。

そして30年近く経った今でも、私たちはその場面を覚えている。『水曜どうでしょう』が映していたのは旅ではなく、人間だった。

私はそんな気がしています。


(※記事中の画像は、作品紹介および考察を目的として、解像度を下げて引用しています。著作権は各権利者に帰属します。)


次回(第4夜)は、「粗大ごみで家を作る番組なんて聞いたことがない」について、もう少し掘り下げてみたいと思います。

※この連載は、これからも『水曜どうでしょう』の魅力を一つずつ読み解いていきます。「❤️スキ」や「👤フォロー」をして、続きを読んでいただけると励みになります。


📌今回の内容を踏まえて、皆さんが一番印象に残っている「行き先決定の瞬間」はありますか?

サイコロシリーズの好きな行き先や、その時の大泉さんのリアクションなど、ぜひコメントで教えてください。
(コメントにはできる限りご返信させていただきます)


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■運営者(ユウナ)について

このnoteでは『水曜どうでしょう』をテーマに執筆しています。以下の別アカウントでは、普通の会社員だった私が、FIREを達成するまでの資産形成の実体験を記録しています。

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