『水曜どうでしょう』深夜バスはなぜこんなに記憶に残るのか|第2夜
『水曜どうでしょう』を思い出そうとするとき、皆さんはどんな場面を思い浮かべるでしょうか。
サイコロを振るシーンでしょうか。名言でしょうか。それとも対決列島やヨーロッパシリーズのような大きな企画でしょうか。
もちろん、それらも印象的です。
ただ、改めて振り返ってみると、不思議なことに気づきます。
私たちが覚えているのは、目的地よりも「移動中」の場面ではないでしょうか。
例えばサイコロシリーズです。
行き先が決まった瞬間の絶望的な表情も面白いのですが、実際に記憶に残っているのは、その後の移動時間だったりします。
深夜バスに乗り込んだ車内。消灯後も続くぼやき。眠れないまま朝を迎える姿。目的地に着く前から、すでに旅の面白さが始まっています。
ヨーロッパシリーズもそうです。
美しい街並みや世界遺産ももちろん印象的ですが、思い返してみると、レンタカーの車内で延々と続く雑談の方が記憶に残っています。
どうでもいい話をしたり、くだらないことで笑ったり、時には少し険悪な空気になったりする。観光地ではなく、その間の時間にこそ『水曜どうでしょう』らしさがあります。
原付ベトナム縦断も同じです。
本来なら旅の見どころはベトナム各地の風景のはずです。でも実際には、延々と走り続ける大泉さんとミスターの姿や、その疲労の蓄積の方が印象に残っています。
どこへ行ったかよりも、どう移動したか。何を見たかよりも、その時どんな顔をしていたか。そうした部分が不思議と記憶に残るのです。

(引用元:DVD「サイコロ2」より)
普通の旅番組なら、こうした場面は目的地へ向かうための通過点です。
ところが『水曜どうでしょう』では違います。
むしろ移動中の方が面白い。
これは考えてみると少し不思議です。
旅番組なのに観光地の記憶より、深夜バスの記憶の方が強い。海外企画なのに名所より車内の会話を覚えている。そんな番組はあまり見たことがありません。
なぜそうなるのでしょうか。
私は最近、その理由は「人間が見えるから」ではないかと思っています。
目的地に着くと、人はどうしても何かを演じます。
景色を見て感動する。名所を紹介する。企画を進める。テレビとして求められる役割があります。
でも移動中は違います。
ただ座っているだけです。
ただ待っているだけです。
何も起きません。
だからこそ、その人の素の部分が出てきます。
疲れてきたり、機嫌が悪くなったり、急にくだらない話で盛り上がったり、無言になったりする。
そうした何気ない時間の中に、その人らしさが見えてきます。
考えてみれば、私たちの日常も同じかもしれません。
仲の良い友人との思い出を振り返るとき、旅行先そのものより、移動中の会話を覚えていることがあります。
学生時代の修学旅行でも、観光地より夜行バスの方が印象に残っていたりします。
なぜか。
そこに人間関係があるからです。
『水曜どうでしょう』も同じです。
私たちは景色を見ているようで、実は人を見ている。
移動を見ているようで、人間関係を見ている。
だから移動が面白いのだと思います。
そしてもう一つ、『水曜どうでしょう』の移動には独特の安心感があります。
なぜなら、私たち自身も人生の大半を「移動中」に過ごしているからです。
学生時代もそうでした。社会人になってからもそうでした。
何かを目指している途中。まだ到着していない状態。結果が出ていない時間。
人生の多くは、実は目的地よりもその途中にあります。
私自身もそうでした。
学生時代の頃は、将来自分がFIREするなど想像もしていませんでした。不動産投資をするとも思っていませんでしたし、債券投資をするとも思っていませんでした。
ただ、その時その時で目の前のことをやっていただけです。
振り返ると、人生の大半は「到着」ではなく「途中」だった気がします。
だからこそ、目的地ではなく移動を映す『水曜どうでしょう』に共感するのかもしれません。
何者かになった人ではなく、まだ途中にいる人たち。
成功した人ではなく、迷いながら進んでいる人たち。
私たちは、その姿に自分自身を重ねているような気がします。

(引用元:DVD「ヨーロッパ21か国完全制覇」より)
『水曜どうでしょう』は、移動そのものを面白くした番組です。
でも本当に面白かったのは移動ではなく、その移動の中で見えてくる人間だったのかもしれません。
だから私たちは、目的地よりも車内の会話を覚えている。
観光地よりも深夜バスを覚えている。
そして何年経っても、その旅を思い出してしまうのだと思います。
(※記事中の画像は、作品紹介および考察を目的として、解像度を下げて引用しています。著作権は各権利者に帰属します。)
次回(第3夜)は、「なぜ行き先決定の瞬間」はこんなに面白いのか」について、もう少し掘り下げてみたいと思います。
※この連載は、これからも『水曜どうでしょう』の魅力を一つずつ読み解いていきます。「❤️スキ」や「👤フォロー」をして、続きを読んでいただけると励みになります。
📌今回の内容を踏まえて、皆さんが一番印象に残っている“移動シーン”はありますか?
深夜バス、フェリー、車内トークなど、好きな場面があればぜひコメントで教えてください。
(コメントにはできる限りご返信させていただきます)
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■運営者(ユウナ)について
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