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【とんま村の物語】第12話:足りない一枚は、最初からなかった。~バクの桁直しと、カメの一言~

🍃登場どうぶつ紹介とあらすじ

🍃前話:「 100兆チャ~リンの落とし物。~バクのあくびと、ゼロの威張り顔~

🌻解説:第12話「なぜ、社会は走り続けなければならないのか―現代のお金の仕組みが背負う「競争」という呪縛
🌻解説:番外編「なぜ、利益は金融市場に積み上がり、損失は実体経済へ戻るのか―現代のお金の仕組みが抱える「非対称な危機」

🐝前話+第12話サマリー

前話、とんま村では、どうぶつたちが恐れていた「100兆チャ~リン」が、ポテマヨを作るための置き石だったことが、落とし物係のバクに見破られました。
けれどバクは、村の苦しさの本当の原因はそこではない、とだけ言い残します。
そして今話。
バクはまず、桁が大きくなりすぎたチャ~リンをいったん小さくして数え直そうと提案します。
さらに、問題の根本原因に鋭くきり込むのでした。


①天の声

「……大きくなりすぎたものは、それだけで強そうに見えます。
山のような岩。
空まで届きそうな木。
そして、数えきれないほどのゼロ。……
けれど、とんま村のどうぶつたちは、ようやく気づきはじめました。
大きいことと、足りていることは、同じではないのだと。
……これは、ゼロの熱を少し下げ、そのあとで“そもそも”に気づくお話です」


②まずは通貨切り替え:バクの改善策

100兆チャ~リン騒ぎはまだ続いていました。
広場には、チャ~リンの重たい袋と、それよりもっと重たい沈黙が転がっていました。

ライオン
「……もう無理だよ。多すぎるし、重すぎるし、なのに全然足りないし……」

シマウマ
「値札が僕より先に走ってます……」

アルパカ
「ひ、ひえぇぇぇ……!す、数字が増えてしまいましたぁぁ……!ご、ごめんなさぁぁい……!」

アリクイ
(ハシゴの上で小さくなりながら)
「お、おーおー……。まぁ、ちょっと桁が元気になりすぎた感は、あるよねぇ……」

イグアナ
「……えー、現場からお伝えします。どうやらとんま村、“持っているのに使いにくい”という、非常に面倒な顔になっております」

その真ん中で、バクが古びたカバンをごそごそ探り、一枚のカードを出しました。

そこには、妙に達筆でこう書いてありました。

『大きくなりすぎたチャ~リンを、小さい数字で数え直しましょうカード』(必殺通貨切り替え)

シマウマ
「なんですか、それ」

バク
「……趣味です。まずは、この大きくなりすぎたチャ~リン、数え方を切り替えたほうがいいね」

ライオン
「数え方を切り替える?」

バク
「……うん。今のチャ~リン、ゼロが増えすぎて、何がいくつか、もう誰にも分からないでしょ。だから、“同じ価値でも、もっと小さい数字で数え直す”んだよ」

シマウマ
「えっと……。中身はそのままで、数字の顔だけ小さくするってこと?」

バク
「……そう。大きくなりすぎた桁を、いったん小さくして落ち着かせる。まずはそれ……でも問題の根っこは、そこじゃない」

アリクイ「っ……!」


③バクの「バグ」捜査:11枚目の不在証明

バクは地面に丸を十個描き、その上にチャ~リンを一枚ずつ置きました。

バク
「……ライオンさん。最初に借りたの、十枚だったよね」

ライオン
「う、うん……」

バク
「……返す時は?」

ライオン
「……十一枚」

バク
「……そう」

バクは十枚を指でつつきました。

バク
「……でも、ここには十枚しかない」

シマウマ
「えっ……?」

バク
「……これ、村の借チャ~リン(国債)でも、アルパカくんの貸チャ~リン(借金、融資)でも、結局おなじなんだよ。
最初に出るのは十枚だとしたら、返す時は十枚以上必要。」

ライオン
「じゃあ僕たち……最初から、足りないものを探すしかなかったのか……?」

バク
「……うん。だからみんな競争してチャ~リンを取り合う。もしくは借りて埋める。でも借りたら、また次が足りない。そういう仕組み」

イグアナ
「……出ました。本日の核心、“そもそも最初から一枚足りなかったことが問題”でございます」

バク
(ハシゴの上のアリクイを見上げて)
「……ねぇ、総裁。趣味で調べたんですけど。これ、だいぶ性格悪いよね」


④突撃インタビュー(アリクイの懺悔、アルパカの無知の罪)

イグアナ
(するすると岩から降りて、まずアリクイを見上げる)

「……あ、ちょっと失礼。いま、“とんま村の大競争”が、最初から足りない一枚をどうぶつたちに追わせる仕組みだった疑いが濃厚となっております。アリクイ総裁、率直にいかがですか」

アリクイ(アリクイ・ヘブン中央銀行総裁)
(マヨネーズの壺を抱えたまま)
「……率直に言うと、最初は、ほんとに遊びみたいなものだったんだよ」

ライオン
「遊び?」

アリクイ
「“十枚出して十一枚返ってきたら、その追加分で僕、楽してマヨネーズ増やせるじゃん”って。それに、みんなが“総裁、総裁”って呼んでくれるのも、ちょっと気持ちよくてさぁ……」

シマウマ
「うわぁ……」

アリクイ
「最初は、ほんとにそのくらいだったんだよ!ちょっと得したい、ちょっと偉そうにしたい、ちょっと楽してマヨネーズを手に入れたい。ただ、それだけ!」

イグアナ
「……出ました。世界を揺るがす仕組みの出発点が、だいぶ軽薄で、だいぶしょうもないです」

アリクイ
「でもさぁ!みんなが真面目に返そうとするし、“総裁、どうしましょう”とか聞いてくるし、そのたびに僕も、“うんうん、まあ任せなさい”みたいな顔してたら、だんだん引っ込みつかなくなったんだよぉぉぉ!」

ライオン
「ただ気持ちよくなってただけじゃないか!」

アリクイ
「そうだよ!しかも途中から、アルパカくんがどんどん貸すし、村まで“あとで返します約束(国債)”でチャ~リン作り始めるし、数字は大きくなるし、もう僕にも止められなくなったんだよぉぉぉ!」

イグアナ
「……なるほど。“楽してマヨネーズ”から始まって、気づけば村じゅうを巻き込む大騒ぎになっていたわけですねぇ」

アリクイ
「しかも今さら、“ごめん、最初はいたずら半分でした”なんて、格好悪くて言えなかったんだよぉぉぉ!」

イグアナは、くるりと向きを変えてアルパカを見る。

「……では続いて、アルパカくん。きみのほうはいかがですか」

アルパカ(アリクイ・クイック銀行)
「ひ、ひえぇぇぇ……!ぼ、ぼくは……みんな困ってたから、貸したら何とかなるかもって……。よ、よく分からないまま貸して、止め方も分からないまま、パニックになって、ゼロ(桁数)もいっぱい増やしてしまいましたぁぁ……!ご、ごめんなさぁぁい……!」

イグアナ
「……出ました。こちらは“悪意”というより、“無知の罪”でございます」

バク
「……うん。助けようとして、余計に広げたんだね」

アルパカ
「ひ、ひえぇぇ……。無知って、こわいですぅぅ……」


⑤存在感ゼロの実は「村の代表」、初登場

その時、広場の隅にある、これまで誰も見向きもしなかった大きな岩が、ゆっくり動きました。

カメの長老
「……あ、あの……。私、一応この村の『代表』なんですけど……。気づいてました?」

アリクイ
「えっ! 誰!? 岩がしゃべった!」

シマウマ
「いたんですか!?」

カメの長老
「…ずっとここに座って石のコケを数えてました。でも今の話、つまり、足りない一枚を“借りて返す”で埋め続けるから、いつまでも足りないのということですね……?」

広場が、しんと静まり返ります。

カメの長老
「……なら、全部を“貸して返してね”からチャ~リンを作る始るのではなく、村が自分で出せるようにしてもよいのではないですか」

ライオン
「えっ……」

シマウマ
「村が、自分で?」

カメの長老
「……はい。いままでアリクイさんが中央銀行総裁として握っていた“チャ~リンを作る力”(通貨発行権)を、村の側にも持たせるのです。そうすれば、チャ~リンが全部“返さないといけないもの”ではなくなります」

アルパカ
「ひ、ひえぇぇ……。じゃ、じゃあ、ぼくの役割はどうなるのでしょうか……」

カメの長老
「……はい。アルパカさんのアリクイ・クイック銀行のお仕事は変わらず残るでしょう。でも、村が使うチャ~リン(財政支出)まで全部それ(国債)に頼る必要はないのです。……あ、私はまたコケの数え直しに戻ります……」

イグアナ
「ここにきて、ずっと岩だった代表が、総裁だけに独占されていたチャ~リンを作る力(通貨発行権)を村にも持たせたらどうかという、たいへん面倒で、たいへん芯を食った大事な話を始めました」


⑥イグアナのナレーション

イグアナ
(岩の上にするすると戻り、広場を見下ろしながら)

「……こうして、とんま村のどうぶつたちは、ようやく三つのことを知りました。

……ひとつ。
大きくなりすぎたチャ~リンは、まず桁を小さくして落ち着かせないといけないこと。

……ひとつ。
どうぶつたちは最初から、“足りない一枚”を追いかけるような仕組みの上で、無自覚に走らされていたこと。

……そしてもうひとつ。
チャ~リンを作って出す力(通貨発行権)を、ずっと総裁に握らせていたこと。

……いやはや。
小さい見栄。無知の善意。最初から足りない数え方。数字の村というのは、掘るほどにろくでもありませんねぇ。

……けれど、ここから先は少し違います。
どうやらとんま村、“借りて返すしかない村”から、別のチャ~リンの作り方も持つ村へ向かいはじめるようです。

……それでは。
とんま村、ささやかなパニックの記録。
次回も、どうぞお楽しみに」

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