【家族信託リアル体験記 その11】さすがにキレて声を荒げる。それでも続く家族信託。
■2021年7月17日(土曜日)
約束の家族会議の日。
嫌なことはなんでも先延ばしにして生きてきた義母イノコは、朝から「今日はちょっと喉の調子がおかしいの」「なんとなく頭が重いの、熱かもしれない」と予防線を張ってくる。
その態度に、私は平静を装いながらもずっとイライラしていた。
👩「じゃあお昼はパンの予定なんですが、オカーサンだけ塩粥ですね」
👱「パン、食べます」
食欲はあるらしい。
「朝食を食べたら部屋で横になります」と言うので、私はキッチンの片づけを始めた。
なのにイノコは、そのまま日課の新聞タイムに突入。
新聞2紙を隅から隅まで読むので、始めると最低2時間は動かない。
具合が悪いなら、さっさと寝ろ。
昼食前にもう一度声をかけ、パンとスープだけでいいか、卵料理もいるかを確認すると、
👱「あまり食欲がないから、パンとスープだけでいいです。あなた方はどうするの?」
👩「パンにチーズと野菜を乗せて、ピザパンっぽくしようかと」
👱「ピザパン食べたい!私もそれでお願い!」
5秒前に「食欲ない」と言った人が「ピザパン食べたい」とな。
もはや会話が成立していない。
昼食時。オットが「今日は何時から家族会議する?」と聞くと、
👱「今日はちょっと調子が悪いから、遅いほうがいいです」
ピザパンを頬張りながら、よく言うわ。
👱「あ、でも今日は図書館に本を返しに行かなきゃ」
調子が悪いのに、なぜ車を運転してまで図書館に行く?
👦「わかった。じゃあ図書館の前と後、どっちがいい?」
イノコの返答に振り回されず、包囲網を狭めていくオット。
👱「じゃあ……図書館から帰った後で」
やっと観念したようだった。
それでもなんとか家族会議を先延ばしにしたいのか、イノコは知人に電話をしたり、意味もなく部屋をうろうろしたりし始めた。
「返却する本が1冊見当たらないの」などと騒ぎつつ、ようやく家を出た。
小一時間後。
イノコは帰るなり、挨拶もせず固定電話へ直行。
何度も間違えながら、やっと図書館に電話がつながった。
👱「私、夏井いつきの本を借りたはずなのにないんですっ!そっちに忘れてませんか?あったら今から取りに伺いますっ!」
だが、イノコのカバンにはすでに5冊の本が入っていた。
村の図書館では一度に5冊までしか貸出しできない。
6冊目なんて、最初から借りられるはずがない。
👱「私、借りたと思ったんですけど。借りましたよね?借りませんでした?じゃあどこかに戻しちゃったのかしら……すみません」
もう、何なんだろうこの人。
そんなこんなで、もう夕方4時。
家族会議は夕食後に持ち越しか……と思いながら声をかけると、
👱「私はいつでもいいのよ。あなた方を待っていたの」
……もう〇んでくれ!!!
自分の母親がおかしいことをよく分かっているオットは、ここでも冷静だった。
オットは改めて、家族信託の説明、センターを選んだ理由、信託口座には〇〇万円を入れたいことなどを丁寧に話した。
イノコは曇った目で「わかったわ」を繰り返す。
👦「おふくろの金を巻き上げるんじゃないからね。信託口座のお金はあくまでおふくろのもので、俺が自由に使える金じゃない」
👦「信託の金はこの家の処分や引っ越し代、施設や将来の介護費に使うんだよ」
👦「日常的に使ってるゆうちょ口座はそのままだから、今まで通り自由に使っていいんだよ」
👦「これはおふくろ自身のための準備だからね」
私はずっと黙っていた。
嫁である私が口を挟むべきことではない。
でも、視覚障害のあるオットに代わって、実務を担うのはすべて私なのだ。
イノコだって、それは分かっているはずなのに……。
じっと我慢していた。
だが、イノコがまた「まるき(義妹)の許可を取りたい」と言い出したとき、ついに堪えきれなくなった。
👩「オカーサン、いい加減にしてください!これだけ頑張ってる息子が目の前にいるのに、まだまるきさんに気を使うんですか?『親の面倒は見ない』って言った人に何の許可をもらうんです?メールの返信すらないんですよ?いったい何が不満なんですか!」
👱「別に不満というわけでは……」
初めて、義母に声を荒げた。
本当は、老人にこういう対応は逆効果だとわかっている。
でも、もう耐えられない。
そんな私の横で、オットはまた冷静に話す。
👦「じゃ、そういうことでよろしくね。センターの人が、おふくろの意思確認をしたいって。来週月曜日のZoom面談に出て」
👱「来週は忙しいの。午前中は歯医者があるし……」
👦「じゃ、午後だね」
👱「でも午後は疲れてるかも」
👦「疲れてなかったら午後でいいね?」
👱「火曜か水曜なら空けてあります」
はぁ?
「空けてあります」じゃねぇだろ!!
結局、イノコの希望で水曜日にZoom面談が決まった。
ここまで読んでくださった方々、ネガティブな内容で申し訳ない。
でも、当事者全員が一致団結して親の終活に取り組める家庭なんて、そう多くはないと思うがどうだろう。
ましてや、主役である親に性格的な問題がある場合、関係はちょっとしたことで泥沼化する。
この頃から、私も村の図書館に通うようになった。
『大人の発達障害』『ADHD』『NPD(自己愛性パーソナリティ障害)』『毒親』。
そうした本の多さに驚くと同時に、悩んでいる人がこんなにもいることに少しホッとした。
私は自分の両親が大好きで、亡くなった今も心から感謝している。
一方でオットは、出会った頃から実家の話をほとんどしなかった。
大学進学と同時にひとり暮らしを始めたオットに理由を尋ねたとき、彼はこう言った。
「あの家にいたら、俺はダメになると思ったから」
その意味が、今ではよく分かる。
シリーズ第一弾【家族信託リアル体験 はじめに】に書いたように、義母イノコの性格は独特だ(あれでも控えめに書いたつもり)。
あの時、これらの本に出会わなかったら。
さまざまな人たちの経験を知らなかったら。
私は、あの家を出たかもしれない。
これらの書籍を世に送り出してくれた著者たちに、心から感謝している。
★一番の問題は、このヒト。
★マガジン【家族信託リアル体験記】もぜひご覧ください!
※このnoteでは、義母イノコと家族信託を締結するまでの道のりを綴っています。ここに書かれていることはすべて当時の話であり、現在と状況は異なる可能性があります。また家族信託を検討中の方は、私の体験談を参考程度にとどめ、必ず専門家にご相談ください。
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