人生100年時代のキャリア戦略:アリストテレス的「中庸」で経済的自立と自己実現を両立する
平均寿命が伸び続ける一方で、私たちは「このままでいいのだろうか?」という漠然とした不安や、「何のために生きているのだろう?」という根源的な問いを抱えることがあります。
多くの人が「幸せになりたい」と願う中で、どうすれば充実した人生を送れるのか、迷っている方もいるかもしれません。
人生100年時代という長い時間をどのように幸福感を持って過ごすか、考えていきたいと思います。
書いているうちに少し長くなってしまったので、ながら聴きがお好みの方はこちらをお試しください。2倍速なら4分で聞けてしまいます。
<Notebook LM:ラジオ番組風音声(7分55秒)>
1. 三つの人生論
山口周氏は、著書『人生の経営戦略』の中で、人生の生き方を三つの類型に分類しています。
一つ目は、マキャヴェリ型人生論 です。
「世間」という外部環境に適応し、そこで経済的・社会的成功を収める生き方です。社会における競争での勝利を目指し、「成功」に焦点を当てます。
時には「見せかけの自分」を演じることも厭わない現実主義とも言えます。典型例としては、エリートサラリーマンや政治家などが挙げられるかもしれません。
この生き方の課題は、経済的・社会的成功を収めても内面の充実が伴わず、空虚感や虚無感に悩まされることが多い点です。
「人からの評価が高く、お金も地位も手に入れたのに、なぜか満たされない」という状況になりがちです。
二つ目は、ルソー型人生論 です。
「世間」の評価から自由になり、「自分らしく」生きる姿勢です。社会的な仮面を脱ぎ捨て、内なる声に従い、自由を重視します。
この生き方の課題は、自分らしさを追求できる一方で、経済的・社会的不安を抱えることが多く、生活基盤が不安定になりがちという点にあります。「自由は手に入れたけれど、家賃の支払いに四苦八苦している」—こんな状況に陥りやすいのがルソー型の弱点です。
そして三つ目は、アリストテレス型人生論 と呼ばれる「第三の道」です。
山口周氏はマキャヴェリ型もルソー型も“どっちもダメ”として、その両立を追求するアリストテレス型を提唱。極端を避け、状況に応じたバランスを取ることを重視する生き方と言えます。
以前の記事に書いた、「中庸」(偏りが無く、調和がとれていること)を目指す生き方と符合します。
自分らしい人生の追求という内面の充実と、経済的・社会的成功という外的な成功を両立させ、持続可能な幸福と意義を実現につなげることを目指す。
単に成功やお金を追い求めるのではなく、また単に自分らしさだけを追求するのでもなく、その両者の調和を目指す姿勢は、人生100年時代という長期にわたる人生において、より深い満足感をもたらしてくれるのではないでしょうか。
2. アリストテレス的人生の実現への障壁
しかし、現代社会において、アリストテレス的人生を実践するにはいくつかの障壁が存在します。
まず、経済的な制約が大きいという現実があります。
生活していくためにはお金が必要であり、多くの人がそのために時間とエネルギーの多くを仕事に費やしています。毎月の家賃、食費、ローン返済—これらの支払いに追われる中で、「自分らしさ」を追求する余裕が持てないという方も多いのではないでしょうか。
また、「やりたいこと」や「ライフワーク」として生涯楽しめる可能性のある活動と、「生活のための仕事(ライスワーク)」が分断されていると感じる人も少なくありません。
会社での仕事では貢献感や達成感、成長実感を得る瞬間はあっても、「本当にやりたいこと」が見いだせず、もやもやしている時期がある、という声も周囲の知人から聞かれます。
「平日は我慢して働き、週末だけ好きなことをする」というパターンに陥っていませんか?
あるいは「定年後にやりたいことをしよう」と先送りにしていませんか?
現代社会では、このような二項対立的な考え方に陥りがちですが、果たしてそれが最適な生き方でしょうか?
3. 理想の人生と経済的自立の両立:段階的アプローチ
アリストテレス的人生論、すなわち自己実現と社会貢献を両立しつつ、経済的な安定も得るという理想的な状態をどのように実現すれば良いのでしょうか。
これは、単にお金だけ、あるいはやりがいだけを追い求めるのではなく、「お金」と「やりがい」の両立を目指すということです。そして、これを実現するためには、一足飛びにすべてを変えるのではなく、段階的なアプローチが有効だと考えられます。
第一段階:安定収入の確保と並行実験
まずは、会社員として安定収入を確保することを基盤とします。その上で、週末や平日夜の余暇時間を利用して、自分の情熱を追求できるような副業を小さく始めてみます。これは、将来ライフワークとなる可能性のある「やりたいこと」を低リスクで試す実験に相当します。
本当のやりたいことは、実際にやってみないと分からないものです。
「書くことが好き」と思っていても、実際にブログを書き始めると思ったより続かなかったり、逆に「プログラミングなんて難しそう」と思っていたことが意外と自分に合っていたりすることもあります。
やってみて違うと思ったら、次を試してみる。良いと思ったら続ける。
リスクが小さい(小さく始められ、合わなければ撤退できる)副業は、この「Hit and away」作戦に適しています。
この段階では、まだ副業収入は生活費を賄えるほどではないでしょう。しかし、「これが本当に自分のやりたいことか」を試す重要な時期です。「自分は何をしたいのか?」という問いに対する答えが、少しずつ見えてくるでしょう。
第二段階:副業の拡大と移行準備
第一段階で手応えを感じた副業が見つかったら、少しずつ時間とエネルギーを投下し、副業からの収入を増やしていきます。同時に、経済的な安定性をさらに高めるため、不労所得の仕組みを少しずつ構築することも視野に入れます。
副業を通じて、その分野でのスキルを高め、信頼関係を構築していくことで、将来への基盤を固めます。私自身も、会社員の仕事をライスワークの軸としつつ、コーチングを副業から育て、並行して不動産事業による不労所得を増やしてきました。
また、この段階では将来の経済的自立も視野に入れ、生活費を見直し、固定費の削減や貯蓄の増加も意識的に行うと良いでしょう。「最低限必要な生活費はいくらか」を把握することで、経済的自立の基準が明確になり、金銭的な目標が定まることで不安も緩和されます。
第三段階:本業転換または Side-FIRE の実現
副業が十分に育ち、それが本当に生涯をかけて取り組みたい「ライフワーク」となった場合、それを本業として独立する、という選択肢が出てきます。私の場合、コーチングを生涯のライフワークと位置付けていて、将来的に本業に転換する予定です。
しかし、必ずしも一つの仕事で十分な収入が得られるとは限りません。その場合は、不労所得の確保及び複数の仕事を組み合わせて収入源とすることで、「お金とやりがい」を両立する「ポートフォリオワーカー」(複業、パラレルワーク)という働き方を目指します。
リスクとリターンの特性が異なる種類の仕事と資産を組み込むことができれば、不測の事態にも対応しやすくなり、経済的安定性が高まります。
仕事も含めた最適な人生のポートフォリオを組んでいくのが理想です。
例えば:
・週2-3日は好きな仕事(ライフワーク)に従事
・週1-2日は収入を得るための別の仕事(ライスワーク)
・残りの生活費は不労所得でカバー
という組み合わせが考えられます。
また、経済的自立を目指す場合でも、必ずしも完全にリタイアするのではなく、必要な資金の一部を働きながら得る Side-FIRE (部分的経済的自立)という考え方も現実的です。
これによって、必要な金融資産の金額は大きく変わってきます。完全な経済的独立には1億円以上が必要かもしれませんが、Side-FIREなら3,000万円程度の資産で実現できる可能性もあります。
4. 不労所得の構築 - 自由への経済的基盤
経済的な自立や安定性を考える上で、不労所得の構築は重要な要素となります。不労所得には例えば以下のような形があり、それぞれに特徴とリスクがあります。
金融資産の活用
株式投資:長期的には高いリターンが期待できますが、短期的には大きな価格変動がありえます。S&P500などのインデックスファンドに定期的に投資する「ドルコスト平均法」は、リスクを抑えながら資産を増やせる手法といえるでしょう。
債券投資:株式より安定性がありますが、相対的に利回りは低い傾向があります。外貨建債券であれば利回りを上げることが可能ですが、為替リスクを伴います。但し、価格変動リスクは相対的に少ないため、ポートフォリオの安定性を高める効果を発揮します。
投資信託・ETF:専門家による運用や、インデックスに連動した投資商品です。少額から分散投資できるメリットがあります。
一般的に言われる通り、リスクを抑えるためには分散投資が重要です。地域、業種、資産クラスを分散させることで、一部が下がっても他で補える可能性が高まります。また、投資を始める前に十分な知識を身につけ、投機ではなく投資として長期的視点で取り組むことが大切です。
無形資産からの収入
コンテンツ作成:ブログ、YouTube、電子書籍、オンラインコースなど、一度作成したコンテンツが継続的に収入を生み出す可能性があります。Noteを書かれている方は十分視野に入る手法ですね。会社の後輩はYouTubeチャンネルを学生時代から運営し、入社時から会社の給与を上回る収入を得ています(うらやましい限りです)。
特許・著作権:こちらは私含めて一般の人には現実味が無いかもしれません。ただ、書籍については、Amazon Kindleダイレクトのような手段もあるのでチャレンジする余地はありそうです。
これらはクリエイティブな活動が収入につながる可能性を秘めていますが、プラットフォーム依存や流行の変化といったリスクも伴います。また、初期の段階では収益化が難しいことも多いため、継続的な努力と忍耐が必要でしょう。
不動産投資:
不動産投資も不労所得の構築手段の一つです。金融資産より相対的に価格変動が小さい傾向があります。実際には不労所得というよりも、事業に相当しますが、通常の事業と比較すると不確定要素が少ないことから再現性が極めて高い事業となります(突発的な修繕費を除くと、収入と経費の大半は計算可能)。人が住むという基本的なニーズに基づいているため需要が確実にあることも強みです(住居目的の賃貸用不動産)。
また、レバレッジ(借入)を活用することで高いROE(自己資本利益率)を目指せる可能性がある点が魅力です。例えば、2,000万円の自己資金で1億円の不動産を購入し、残り8,000万円を住宅ローンで借り入れる場合、家賃収入が年間500万円(利回り5%)なら、自己資金に対する利回りは約25%になります(金利、諸経費控除前)。
ただし、物件選びを誤ると空室リスクや価格下落リスクがあります。このため、適切な立地に適切な価格で購入することが最重要な成功ファクターとなります。そのための“目利き”能力を学ぶことが重要です。
適切な不動産を購入できれば長期的かつ安定した収入源となり得る魅力があります。個人的には不動産投資(事業)は最強の資産形成手法だと考えており、イチオシです。
上記のような選択肢を組み合わせ、複数の収入源を持つことで、会社だけの収入に依存しない状態を作り出せることが理想的です。それが実現できると、人生に対する安心感が格段に増し、組織に依存しない生き方が可能になり、ストレスも大幅に軽減されると感じます。
5. FIRE/Side-FIREの真の目的
FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期リタイア)や Side-FIRE は、経済的な自由を得ることを目指す考え方です。
しかし、経済的自由はあくまで「手段」であって、それ自体が「目的」ではありません。お金の不安から解放され、自由な時間を得た後、「何をするか」が本質的に重要になります。
ここで再びアリストテレス的な視点に戻ります。経済的な基盤ができた上で、自由になった時間を「自分らしい生き方」に使う。すなわち、自分が「やりがい」を感じる活動や他者への貢献に時間を使うことを目指します。
以前の記事で、「やりがい」とは「貢献感」、「達成感」、「成長実感」といった要素で構成されることをご紹介しました。特に、「誰か・何かの役に立っている」と感じる「貢献感」は、人が充実感を持って生きる上で必須の要素だと考えています。
仕事は、お金をもらうことで貢献が可視化・具体化されているという側面があり、貢献感を得るための良い手段となり得ます。
自分の情熱を追求できるライフワークを収入源とすることができれば、自己実現と社会貢献が融合し、大きな充実感をもたらしてくれます。
私自身、コーチングを通してクライアントの人生を好転させるお手伝いをできることに大きな「やりがい」を感じています。
FIREを目指す際に陥りがちな罠は、「リタイア後に何をするか」を十分に考えずに、ただお金を貯めることだけに集中してしまうことです。経済的な自立は、この「やりがい」を追求し、アリストテレス的な人生を実現するための強力なツールと位置付けるべきでしょう。
あなたは経済的自立を達成できた場合、どのような活動に時間を使いたいですか?
それは本当に長期的な充実感をもたらしてくれるものでしょうか?
6. まとめ:バランスの取れた「アリストテレス的人生」(中庸)を目指して
人生100年時代における理想の人生は、経済的な安定の上に、自己決定感を持ち、「やりがい」に満ちた時間を過ごすことだと考えます。
これは、山口周氏が示すアリストテレス的生き方、すなわち「経済的・社会的成功」と「自分らしさ」の両立の追求とも重なります。
真の幸福をもたらすのは、極端な選択を避け、状況に応じたバランスを取る「中庸」の実践にあると思います。
経済的自立によって得られる自由な時間を、単なる消費に費やすのではなく、自身の成長や他者への貢献、そしてライフワークといった意義ある活動に活用することで、自己実現と社会貢献を調和させることが、真の幸福へと繋がるのではないでしょうか。
自分にとっての「アリストテレス的人生」とは何かを考え、そして、その実現に向けて、リスクの小さい副業から始め、それをライフワークに育てていく段階的なアプローチが有効だと考えています。そのためのプランを戦略的に立てていくことが必要でしょう。
今日から、あなたの「アリストテレス的人生」の実現に向けた小さな一歩を踏み出してみませんか?
