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DXが進みそうで進まない理由──ITは簡単に見える。だから“詳しそうな人”と“銀の弾丸”に頼ってしまう。


“進みそうで進まない” 理由は「判断誤り」

昨日まで、私がどんなキャリアを歩み、どんな価値観で仕事をしているかを書きました。

今日はその続きとして、なぜDXは“進みそうで進まない”のかを、実務の観点から整理します。

私見ですが、DXが進まない理由の多くは技術の問題ではなく
判断の誤り」です。

IT投資の判断は、簡単に見えます。
無料のサービスが多いのが遠因かもしれません。簡単にできるから無料なんだろう、など。
しかし実際は「プロでも難しい」のが現場で過ごした私の感覚です。

難しい理由は “見えていないリスク” が圧倒的に多い世界だからです。

IT投資は、なぜプロでも難しいのか?

経営者にとって身近な例で言えば、節税の話に似ていると思います。

アマチュアは「節税できますよ」という営業マンの表面のメリットだけで判断してしまいがちです。
しかし、税務の仕組みは複雑で、裏側には注意点や将来の負担が潜んでいます。いわゆる出口戦略の話ですね。

だからこそ、経営者は税理士に相談するわけです。
専門家でなければ判断するのに十分な知識を持ち得ない領域だからです。

IT投資もまったく同じ構造です。

  • 保守性

  • データ構造

  • 将来改修の難易度

  • 運用負荷

  • 属人化リスク

  • ベンダーロックイン

こうした “裏側のコスト” を見ないと、成功確率は大幅に下がります。

実際によくあるパターンを2例挙げてみます。

あるある①:“ITに詳しそうな人”に任せてしまう

どこの会社にも、こういう人がいます。

  • Excel や Google スプレッドシートの数式に強い。Vlookup を理解している。

  • Windows ショートカットをよく知っている

  • iPhone などのガジェットに詳しく、PCに強い“雰囲気”がある

という理由で、「じゃあDX担当、自動化担当でよろしく」と任命される。

彼らは会社に貢献しようという意欲で頑張ると思います。
しかし、プロが前提にする「設計」「保守」「将来性」を知らないまま作るため、最初だけ動いて、後から壊れてしまう構造になりがちです。

あるある②:銀の弾丸幻想──「このパッケージさえあればDXできる」

よくある売り文句です。

  • 「ワンクリックで自動化できます」

  • 「導入すれば業務改善が完了します」

  • 「AIが全部解決します」

でも、考えてみてください。皆さんが思い描く “1クリックの世界” を成立させるために、裏側ではどれだけの設定・手作業・データ準備が必要なのか。
記憶に新しいですが、Meta 社のデモが失敗したケースがあります。

デモでは「理想形」しか見えませんが、現場では複雑な事前準備を行ったり、日々の変化に合わせてメンテナンスする必要があります。
何度もリハーサルしているはずのデモが失敗しているのを見ると「これって本当に現場でいつでも使えるの…?」と思わずにはいられません。

RPA を例に出すと、正常系の自動化には本当に優れたツールですが、現場では正常系より“異常系”も多く発生してコストが多くかかる印象です。

  • 画面変更

  • 通信の遅延

  • 入力ミス

  • ポップアップ

  • クリック位置のズレ

こうした “ほんの少しの違い” で簡単に止まってしまいます。
「3秒くらい wait 入れてみるか・・」など微調整がいくつも発生します。
RPA自体を批判したいわけではありませんが、「RPA=銀の弾丸※」と誤解した導入がDXを失敗させると考えています。

※「銀の弾丸」とは、複雑で困難な問題を一気に解決できる特効薬のような万能な解決策を指す比喩表現です。元々は、民話やフィクションにおいて、狼男や魔物を倒せる霊力を持つ「銀製の弾丸」という武器に由来しています。この概念が広まり、ソフトウェア開発の世界では「特効薬はない」という意味で使われることもあります

専門外の判断には、必ず「見えない落とし穴」がある

専門外の判断をしたあとで
「あれ?こんな費用もあるの?予算オーバーだけどもう引き返せない…」
となった経験はありませんか?

これはサンクコスト(埋没費用)の罠で、プロでも判断が難しい領域で、IT/DXの世界では(でも?)よく起こります。

  • 初期費用ゼロのはずが、設定追加で費用が膨らむ

  • “運用に耐えない構造”が後から露呈する

  • 月額課金の積み重ねで財務が圧迫される

  • 個別改修の積み上げで将来の改修費が跳ね上がる

どれも最初は小さな判断に見えるのに、
後から “戻れない” 状態になりがちです。

一定ラインを超えたら、プロに任せたほうが長期的に安い

プロは仕組みを作る前に“未来”を見ます。

  • データが10倍になっても動くか?

  • 担当者が変わったときにメンテナンスできるか?

  • バグが発生したらすぐ原因を特定できるか?

  • ちょっとした機能追加が容易にできるか?

これらを踏まえた設計をするので、結果として「プロのほうが安く、速く、確実」になります。

逆にアマチュア設計は、最初は安く見えて、後から高くついてしまうと思います。

まとめ:“餅は餅屋”

もしあなたの会社で、

  • パッケージ導入(銀の弾丸に見える)を検討している

  • “詳しそうな人”がDX担当になっている

  • 専門外の判断で痛い思いをしたことがある

という状況なら、早めに相談してほしいと思っています。
完全なサンクコストにならないよう一緒に考えましょう。

明日は、なぜ私が 戦略実行設計者(Execution Architect) や “実装型”コンサルを名乗っているのか、そして、この役割にたどり着くまでに考えたことについて書いていきます。

引き続きよろしくお願いします。

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