【世界はひとつの世界】第一章ウタリ編丨第14話丨アッサムによる世界の説明(現代に伝わってる話)

【これまで】
千年前に魔王を倒した8人の賢者の生まれ変わり、陽気な金髪ウタリと無口な黒髪イレンカが旅をしている。
一般人には危険すぎるダンジョンもあっという間に5階クリア。一行は食事休憩にすることにした。
アッサムが準備をしながら千年前に起こったことの説明を始めた。
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『その昔、一つの世界に天族・魔族・そして
我々人間族が住んでいたんですよ。
それぞれは適度な距離を保ち、
深く交わることもなければ
特にいがみ合うこともなく暮らしていました。
ところがある時、
魔族の中に強大な力を持った王が誕生しました。
その魔王は
世界を全て魔族のものにしようと企みました。

知恵はあっても
魔族ほど戦闘が得意でない人間族と、
特殊な能力を持ちながら
戦闘はまるで苦手な天族は窮地に立たされます。
そこで両者は手を組み、
選ばれし8人の人間族に
天族の強力な能力が授けられました。

その8人は人間族の持つ知恵で
その能力を天族以上に操り、
みごと魔王を打ち破りました。
その後、魔族を脅威と捉えた天族が
世界を三つに分断し、魔界と天界、
間に緩衝地帯としての人間界を作ったんです』
腑に落ちたウタリが声を漏らす。
『へーぇ』
『我々が魔物だモンスターだと言っているのは、
本来はその時に魔界に追いやられるべき連中が
人間界に残されたもの、主に下等魔族です。
天族は自分たちが安全なら、
人間界に魔族が少々残るのは
気にしなかったようです』
『勉強になるなぁ。
じゃあ俺たちはその8人の子孫ってわけかー』
『そうでもないんですよね。
8人の子孫はその力の源
天力そのものを受け継ぎ、
様々な力や魔法を発現させ
人間界にも天族の能力が広まっていきました。』
『天族の力なのに"魔"法なんだな』
『魔法は元々魔族の能力だったようです。
人間族は受け継いだ天力を元に
魔族の真似をして魔法を使えるようになり、
独自の魔法も次々と開発されました。
さ、できましたよ』
アッサムが煮込み料理を取り分けていき、キーモンもそれを手伝う。

『いっただっきまーす』
元気よく食べ始めるウタリに向かってアッサムも食べながら話を続ける。
『そうやって親から子へと広まっていった
天族の力ですが、
それは元々想定されていたことではない
副産物だったようです』
『ほう』
『子孫に受け継がれた力は
オリジナルに比べて圧倒的に弱いんです。
元が強すぎるとも言いますが。
8人の能力は魂と紐づけられていて
転生によってのみ受け継がれます』
『じゃあ俺たちは
その8人の生まれ変わりってことか』
『そういうことです』
イレンカはまるで興味なさそうに食べている。
『しかし、なんでそんなことしたんだ?』
『世界を支配しようとする魔王にも
打ち勝つほどの力です。
特定の国にあり続けると争いの火種になり
最悪、緩衝地帯である人間界が
人間族同士の争いによって崩壊してしまう
と天族は考えたのでしょう。

実際に魔大戦後数百年は、
賢者の能力を巡って人間族同士の戦争が
絶えなかったと歴史に残っています。
賢者が亡くなるとその転生先を
世界中で血眼になって探し回り、
物心つく前から囲い込んで
洗脳のような教育を施そうとする国が
続出しました』
『醜いねぇ』
『賢者一人で一国を滅ぼせますからね。
しかし探し続けることで国力を落として
通常兵力で滅ぼされてしまう国も続出し、
賢者探しは下火になっていきました。
そうして人々の関心が薄れ、
中には自分が賢者だと分からず、
能力を発現させることなく
生涯を終える者も増えていきました。
そして次第に
おとぎ話の登場人物のような存在となりました』
『最初っから一代限りの能力にしとけば良かったのになー』
『そうすると新たな魔王が誕生した時に
人間界があっさりと飲み込まれちゃいますよ。
賢者の能力者を人間界に
置いておく必要もあったんだと思います』
『そっかー』
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全話⇩
