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【読書感想文】とろけるBUTTERと女であること。/「BUTTER」柚木麻子


生きること。産むこと。女であること。
誰かに何かをしてあげること。
失ったものへの傷。いつまでも続く歪んだ愛。

いろんな感情がごちゃ混ぜになって、朝夕の通勤時間では足りず、買ってから1カ月が経っていた。

読了時には、濃いため息をついた。でも心地よかった。久しぶりに、牛みたいにゆっくり4つの胃でぐるぐる咀嚼したい小説だった。

でも、ああ、まだ消化できていない。だってbutterって消化が遅いでしょ?時間がかかるのよ。今じんわり胃袋であったまっているところ。

若くも美しくもない女が、男たちの金と命を奪った――。
殺人×グルメが濃厚に融合した、柚木麻子の新境地にして集大成。
男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ──。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳に〈あること〉を命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。各紙誌絶賛の社会派長編。

amazon紹介文より

殺人×グルメーー。そんなジャンルの小説は読んだことがない。
カジマナの自由な発言に奔走する里佳。カジマナはあくまで、拘置所の面会室から里佳を魅了し、行動や思考まで変えていく。里佳は内面も外見も周囲や彼氏である誠が驚くくらいに変貌する。

この小説を読むと、「女の外見」「女の役割」「女の生き方」…そんなものが次々とえぐられていく。
否応なしに。

独身キャリアウーマン里佳の目線から。既婚妊活中の里佳の親友怜子の目線から。そして、殺人事件の容疑者であるカジマナの視点から。

たとえば、こんなふうに。

どんな境遇であれ、少しでも快適にしようとする女の知恵、自分好みに環境をカスタマイズできる女の逞しさを、保守的な男ほど疎んじるものだ。でも、それこどが彼らが女になによりも求める家事能力の核に他ならない。

BUTTER356 ページ

読めば、読むほど今まで感じていた矛盾やモヤモヤが言語化されたことに快感を感じる。そうそう、それわたしも思ってたの。ってつぶやく。


そして、よく書かれているようにこの小説の魅力のひとつは、おいしそうな料理の描写だ。とろけるエシレバター(超高級!)からはじまり、文章だけでこんなに口の中が涎で満たされることがあるかと驚いた。

カジマナに触発され、里佳がつくった料理たちは、どんどんレベルアップし、最後は予約も取れない料理教室まで通う。

冷たいバターと温かいご飯。まずはその違いを楽しむ。そして、あなたの口の中で、その二つが溶けて、混じり合い、それは黄金の泉になるわ。ええ、見なくても黄金だとわかる、そんな味なのよ。バターの絡まったお米の一粒一粒がはっきりとその存在を主張して、まるで炒めたような香ばしさがふっと喉から鼻に抜ける。

BUTTER38ページより。バター醤油ごはん。


もうこの描写だけでおなかすいてきませんか。
他にもカトルカール(パウンドケーキ)、ブフ・ブルギニョン(煮込み料理)、バター醤油ラーメン(篠井さんより)…


ああ、こんな描写ができるようになりたい。


文章で、目の前にバターがとろけるような。



わたしは買った文庫本は、気に入ったページをガンガン折ってしまう。
マーカーもひく。自分の足跡を残すみたいに。

包んでいたブックカバー。


そう、きっと折り返したページの数だけわたしはまた読み返す。
なんだか元気がないときに、少しだけ自分の生きてきた道を信じたいときに、女であることに自信がないときに、とろけるバターにまた会いにいく。



そして、そっと口元をふくのだ。





今日もお付き合いいただきありがとうございました。久しぶりに読書感想文が書けました~~!!

👇ほかのかたのBUTTER感想文。


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