やらかした暗黒竜|多肉植物の名前が厨二病すぎる!第拾弍話
暗黒竜と星乙女が撮られた。
白昼堂々のツーショットである。場所はベランダ。距離はかなり近く、言い逃れは難しい。暗黒竜は赤っぽい葉を少し反らし、星乙女はその隣で細い茎を伸ばしている。二人のあいだに流れる空気は、もうただの寄せ植えではなかった。同じ土に根を下ろしている。
これはもう、同棲と言っていい。関係者によると、暗黒竜と星乙女は以前から親密な様子を見せていたという。

ちょうどその頃、私はワッツの園芸コーナーで透明の穴あき鉢を手に取っていた。ブリキ缶王国の崩壊を受け、次の移籍先を用意しなければならない。
透明であれば根の様子も水の抜け具合も見える。育てる側としては申し分ないが、問題は見えすぎることだった。アイドルに内部事情はつきものである。根の張り具合や土の湿り具合まで丸見えになるのは、さすがに情報公開がすぎる。
そこで私は、透明鉢を棚に戻しかけ、また手に取り、近くに置かれていた鉢カバーをいくつも合わせ、シンデレラフィットする相手を探していた。

第一報は熱愛だった。しかし、本当の地獄は第二弾の文春砲から始まる。暗黒竜は、星乙女だけではなかった。ブロンズ姫にも手を出し、さらには月下美人にまで接近していた。
多肉界は騒然となった。暗黒竜は名前からして「俺についてこい」と言っちゃうタイプである。土を落とせば落とすほど、関係が見えてきた。根は思ったより絡んでいる。引き離そうとすると、葉がぽろりと落ちた。これは熱愛ではなく、多肉界を揺るがす大型スキャンダルであった。
熱愛報道の余波は大きく、TNK48は多肉関係のもつれにより電撃解散となった。
スキャンダルの裏で、私は二人の新居を内見していたのに。

解散ライブはない。卒業コメントもない。ファンの涙もない。あるのは、土まみれの私の手と、ベランダの片隅に並んだ鉢である。アイドルグループとしての再結成は、限りなく難しい。
その騒動の中、白雪姫はひっそりとソロデビューを迎えていた。
舞台はモロゾフのガラスカップ。透明なステージに新しい土を敷き、白い葉をそっと立たせると、TNK48時代には見えなかった清楚さが前に出た。
グループ崩壊の見出しが多肉界を騒がせる一方で、彼女は王道アイドルの顔をしていた。スキャンダルの匂いも、暗黒竜の影も、そこにはない。あるのは、ガラスの城で午後の日差しを受けている小さな白雪姫である。器は再利用だが、デビュー曲は清純派だった。

TNK48の解散は悲劇だった。けれど、白雪姫にとっては、ようやく自分の名前にふさわしい舞台へ立てた瞬間でもあった。
ふっくら娘もダルマ福娘たちも、それぞれ新しい鉢へ移った。名前の似た二人は、ユニット活動でも始めそうな期待もあったが、そこは多肉植物である。私の世界観など気にも留めず、ただ葉を広げている。
結果として、TNK48は恋愛発覚からグループ崩壊、そして全員独立という、芸能ニュースの総集編みたいな流れを一気に駆け抜けた。

その騒動の余波でボロボロになった葉っぱたちは、小さな鉢でファーム生活に入った。まだ名前もない。ステージにも立てない。そもそも芽が出るかどうかも分からない。ただ土の上でじっとしている。
だけど、ある日突然、小さな芽を出すかもしれない。芽が出ればデビュー。出なければ、そのまま合宿終了である。可能性という言葉は、だいたい結果が出る前が美しい。

そして彼女たちは今、透明の鉢で暮らしている。
最初は、事務所の管理体制が筒抜けになるのを避けたかった。ところが、実際に植えてみると、透明な鉢は思ったより悪くない。水の状態も見える。隠すものなど何もないと言わんばかりに、彼女たちは透明の部屋で堂々と暮らしている。
文春砲を食らったあとに内部情報をフルオープン。これはもう、炎上後の再出発としてはかなり清々しい。
ただ、ひとつ問題がある。
……まだまだ、緑々しい。

よく見れば色味も違うし、葉の形も違う。だが、遠目で見ると、やっぱり緑である。名前から世界観を作るのではなく、最初から色を意識して選べばよかった。
赤、紫、白っぽい葉、黄色みのある葉。そういう映えを先に考えていれば、我が家の多肉たちはもっと雑誌の表紙みたいになっていたかもしれない。
暗黒竜王国だ、TNK48だのと騒ぐ前に、まず配色だった。十二話かけてたどり着いた答えが「見た目で選べばよかった」なのだから、園芸というより人生の遠回りである。
解散とは終わりではない。次の映えへ向かう、植え替えである。そう決意した私は、ホームセンターで、また名札を見て立ち止まっていた。
「蝦茶黒法師……」
「艶姿……」
「胡蝶の舞……」
……多肉植物の名前が厨二病すぎる!

↩️ シリーズ壱話 👇
◀️ 前話はこちら:多肉よりガンダム?
🌵 Season2. coming soon……🏜️
