多肉よりガンダム?|多肉植物の名前が厨二病すぎる!第拾壱話
私はしばらくユニコーンガンダムを見上げていた。白い装甲、伸びた角、空へ向かう立ち姿。
先日、寄せ植えした多肉植物のブリキ缶が土台崩壊を起こしている一方で、ガンダムは堂々と東京の空の下に立っている。スケールから違うし、学ぶべき点が多すぎる。

私はしばらく口を半開きにして見上げたあと、自然とガンダムベース東京へ吸い込まれていた。棚にはガンプラが並んでいる。大きいもの、小さいもの、細かいもの、知らないうちに増えていた知らない機体たち。
私はそれらを見ながら「どうガンダムと多肉植物を絡ませれるか」を考えていた。
まず気になったのは1/60サイズである。これならガンダムが鉢の中に入るどころか、鉢を持てるのではないか。小さな寄せ植えを両手で抱えるガンダム。もはや農業用モビルスーツである。
日照不足を検知すると日当たりの良い場所へ移動し、水やりが多すぎるとディアルアイが点滅し「排水設備を確認してください」と警告してくれそうだ。ザクであれば、量産してくれるかもしれない。

しかし現実的に考えると、1/60サイズは大きすぎる。ガンダムに合わせると、鉢ではなくプランターになる。プランターどころか、ベランダの一角を占領する国家事業になってしまう。
私は多肉植物を育てたいのであって、家庭内にジャブローを建設したいわけではない。妻に「これ何?」と聞かれた時「連邦軍の防衛拠点」と答える勇気もない。家庭内平和を守るためにも、1/60計画は早めに凍結された。
次に考えたのは1/144サイズである。ガンプラとしては馴染み深いサイズだし、机の上にも置きやすい。問題は、暗黒竜との縮尺である。1/144のガンダムを鉢に入れるとなると、鉢の世界ではガンダムがかなり巨大な存在になる。多肉植物の葉が森だとすれば、ガンダムはその森に立つ守護神である。

悪くはないが、今度は鉢のほうをどれくらい大きくすれば自然に見えるのかが分からない。直径十センチでは狭い。十五センチでもまだ窮屈かもしれない。二十センチならいけるか。
ガンダムが自然に立つ世界を作るには、背景となる岩場や土台も必要だ。気づけば私はジオラマ製作の入口に立っていた。園芸とは、こんなにも縮尺に悩む趣味だっただろうか。
念のために言っておくが、私は植木鉢を探している。

そこで浮上したのがSDガンダムである。これなら鉢に入りそうだ。頭が大きく、全体のサイズもかわいらしい。多肉の横に置いても、そこまで圧迫感はない。だが、別の問題があった。SDガンダムを置くと、世界観が丸くなる。
ならば、武者ガンダムの方が世界観が近いかもしれない。元禄美人が綱吉の時代なら、戦国武将が一人くらい紛れ込んでも歴史はそこまで壊れない。もはや歴史年表をまたいだコラボ企画になっていた。
さらにガチャガチャのミニチュアも気になった。サイズで言えば、一番フィットする。鉢の中に置いても邪魔にならず、多肉植物の間からモビルスーツが顔を出す感じも作れそうだ。

問題は中身が選べないことである。欲しいのはガンダムであっても、実際に出てくるのがハロだったらどうしよう。かわいいが、王国の防衛を任せるには丸すぎる。しかも、一度回して終わる保証がない。次こそガンダム。次こそザク。そうやって気づけば、鉢代より高い軍事費がガチャガチャに吸い込まれていく未来が見えた。
私は腕を組んだまま、しばらく棚の前に立っていた。鉢を探しに来た男はもうそこにはいない。箱の写真を見比べながら「最近のガンプラって、ここまで稼働するのか」と感心していた。ガーデニングよりウェザリングしたい。多肉植物の名前に釣られて始まったはずの趣味は、完全に別の沼へ支流を伸ばし始めていた。
お台場に来た当初の目的は新たな「鉢」探しである。新しい鉢はまだ見つかっていない。決意など、全高二十メートル級のモビルスーツの前では、園芸用の軽石より軽かった。

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