TNK48総選挙開催|多肉植物の名前が厨二病すぎる!第八話
今日もまた、コーナンの園芸コーナーにいた。最近の私は、休日になると園芸コーナーにいる。少し前までなら、ホームセンターへ行っても見る場所は工具かペット用品くらいだった。園芸コーナーなど、通路にたまたま生えている緑の背景くらいにしか思っていなかったのに、ここまで人は変わるものである。
今では多肉植物の棚の前に立ち、名札をひとつずつ確認しては「この子はセンター向きか」「この子はビジュアル担当だな」などと考えている。店員さんから見れば、ただの植物好きのおっさんかもしれないが、私の頭の中では完全にアイドルオーディションが始まっていた。
今回の目的は、暗黒竜王国とは別の鉢を作ることだった。暗黒竜、桜竜、無刺王冠竜、朧月、竜神木と、名前の響きで突っ走った結果、我が家の鉢はなかなか立派な王国になった。そして悟空もいる。

ただ、その王国にはひとつ問題があった。全体的に緑々しい。植物なのだから緑で当然だ。むしろ緑でなければ何のために光合成しているのか分からない。しかしネットで見る多肉植物の寄せ植えは、赤や黄色や淡い紫が入り混じり、まるで宝石箱のように美しい。対して我が家の王国は、どう見ても軍事演習場だった。可愛いというより、作戦会議である。癒やしというより、出撃前である。
そこで「次は可愛い鉢を作ればいいではないか」と考えた。暗黒竜王国が男子校の部室なら、次は女子校の文化祭である。魔王軍の次はアイドルグループである。多肉植物の名札を見ていると、女性の名前を連想させるものがやたら多い。こうなったら、もうグループを結成するしかない。

多肉植物。略して、た(T)に(N)く(K)。ここに私は『TNK48』の結成を宣言した。
ここまでくれば勢いである。AKB48だって最初に聞いたときは「秋葉原で48人も何をするつもりなのか」と思ったものだ。
まず目に入ったのは「ふっくら娘」である。
名前がいい。ふっくらしている娘。現実で娘にそんなことを言えば、しばらく口をきいてもらえなくなる可能性があるが、私はふっくらの方がタイプである。

そして隣には「ふっくら娘GF」までいた。
「GFとはなんや?ガールフレンド?グレートふっくら?ゴールデンふっくら?……分からへん」
分からないけど、同じグループにふっくら娘を二人入れるべきかどうかで悩んだ。ここで似たキャラを入れすぎると、グループ内の役割がかぶる。プロデューサーとして、そこは慎重にならねばならない。
続いて「福娘」と「ダルマ福娘」が現れた。

福娘は縁起がいい。年末年始の商店街に立っていそうである。手には笹を持ち、笑顔で「商売繁盛で笹持ってこい」と言ってくれそうだ。

一方のダルマ福娘は、さらに縁起が重い。福にダルマまで背負っている。受験シーズンなら最強である。
しかしアイドルグループにおいて、縁起担当が二人必要かどうかは難しい。福が多すぎると、ありがたみが薄れる。お守りもひとつなら大事にするが、五個も六個もぶら下げると、どの神様に何をお願いしたのか分からなくなる。ここでも私は、福の過剰供給について真剣に考えていた。園芸コーナーで何をしているのだろう。
問題はセンターだ。アイドルグループにはセンターがいる。真ん中に立ち、光を浴び、グループ全体の印象を決める存在である。
TNK48にも当然、センターが必要だ。候補は白雪姫、元禄美人、百恵、ほろ酔い美人の四人である。

白雪姫は王道である。名前を聞いただけで物語が始まる。

元禄美人は時代が遠い。令和の園芸コーナーに綱吉の時代から参戦してくるのだから、ただ者ではない。

百恵と聞けば、どうしても山口百恵が浮かぶ。センター適性は高いし、伝説感もあるが、妻のお姉ちゃんの名前と同じなので却下した。家庭内コンプライアンスである。いくら園芸でも、そこは踏み込んではいけない。

ほろ酔い美人も気になった。名前の雰囲気は抜群である。大人っぽく、少し隙があり、夜の居酒屋で人生相談に乗ってくれそうな余裕がある。ただ、センターがほろ酔いだとグループの方向性が不安になる。ライブの一曲目から「今日は楽しく飲みましょう」みたいな空気になりかねない。
結果、センターは白雪姫に決まった。これはもう仕方がない。王道には王道の強さがある。白雪姫が真ん中に立てば、グループ全体に物語性が生まれる。毒リンゴを乗り越え、七人の小人と暮らした経験もあるのだから、メンバー管理にも慣れているはずだ。センターは理屈ではなく、見た瞬間に「あ、この子だ」と思わせるオーラが必要である。
こうして最終的に選ばれた神7は、白雪姫、ブロンズ姫、ふっくら娘、桃美人、月花美人、ダルマ福娘、星乙女となった。
並べてみると、なかなか華やかである。姫が二人、美人が二人、娘が二人、乙女が一人。もはや多肉植物というより、自己紹介が長いアイドルグループである。「白雪姫です」「ブロンズ姫です」「桃美人です」「月花美人です」と続いたら、最後の星乙女あたりで司会者が拍手のタイミングを見失うだろう。
帰り道、買い物カゴの中で白雪姫たちは静かに揺れていた。私はそれを見ながら、TNK48の初ステージを想像していた。センター白雪姫、両脇にブロンズ姫と桃美人、後方にはふっくら娘とダルマ福娘、月花美人がしっとり支え、星乙女が夜空担当として輝く。完璧である。

多肉植物とは、根を張る植物である。そして名前は、人の妄想に根を張る。TNK48総選挙は、今回だけでは終わらない。園芸コーナーには、まだ私の知らない名前が並んでいる。次に行けば、また新たな候補生が現れるだろう。ふっくら娘GFの扱いも保留のままだし、ほろ酔い美人のソロ活動も気になる。元禄美人に至っては、別ユニットを組めるかもしれない。
TNK48、第一回総選挙。その栄えあるセンターは『白雪姫』!なお、投票券はレシートの裏である。
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