銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十九話(33) 決別の儀式 レースの途中に
・銀河フェニックス物語 総目次
・<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの前に」① ②
・第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」① ② (29) (30) (31) (32)
プロのレーサーになった僕ら兄弟は、ガンマールの世界に近づくことに力を注いだ。

危険な追い越し、ルール外の加速。チキンレースを仕掛けて失敗もしたこともある。それでも僕らは無茶な操縦を続けた。限界を超えなくては末弟のようには飛べないのだ。
僕らは勝つためなら、失格になろうとも何でもやった。
評判は良くなかった。
僕らを育てた弁護士は、危険な操縦を止めるよう何度も進言した。
「ガンマールみたいに死にたいのか」と。
僕らは、親代わりの彼にだけ伝えた。
ガンマールに償いをしているのだ、僕らはやめるわけにはいかないのだ、と。
彼は幼いころから僕ら三兄弟を見てきた。末弟の異質な才能のことも知っていた。
納得はしなかった。けれど、僕らを理解しようと努めてトラブルの対応にあたってくれた。
「残された君たちが救われるために、必要な道程なのだろう」と言いながら。
そうこうしているうちに、結果がついてきた。
危険な飛ばしに巻き込まれたくないと、僕たちを避ける船が続出した。
強い悪役にはファンもつく。
僕らは、いつしか『兄弟ウォール』と呼ばれるようになった。
べヘム社は、そんな僕たちのスタイルを容認し、S1に乗せた。
僕たちは、自分の成績には興味がない。
僕たちは二人で、ガンマールのための表彰台を取りに行く。
* *
レイターは前を飛ぶべヘムの機体を見つめた。

三兄弟の長兄アルファール。
速くて正確な飛ばし。真ん中のベータールよりクールで手ごわい。
兄弟ウォールは不思議な奴らだ。
プロになりたてのS3のころは、めちゃくちゃだった。末弟が死んで自暴自棄になったのか、殻を破ろうともがいてた。
相当、研究を積み重ねたのだろう。徐々に危険ラインを見極めて飛ばしだした。計算された暴走。
今ではあそこまで無理しなくてもいい成績を出せる腕がある。なのに、スタイルを変えずわざとヒールを演じてる。
コーナーで抜きをかけてみる。
前に逃げるかと思いきや、わざと寄せてきやがった。こいつ、捨て身だ。
一緒に飛ばしていると、相手の気持ちが何となくわかる。
弟のベータールは気負ってた。兄貴を勝たせるために、俺を前に行かせねぇって気持ちが痛いほど伝わってきた。
だが、兄のアルファールは違う。
一対一の飛ばし屋のバトルじゃねぇんだぜ。俺のことなど気にせず先へ進めばいいのに、なんだこの飛ばしは。飛ばしが全然前を向いてねぇ。
嫌な感じだ。俺と心中してぇのか。
* *
裏将軍はさすがだな。
飛ばしから伝わってくる。船に執着する熱量が。ハールと操縦技術が芸術のように一体化している。
末弟のガンマールは、どんな気持ちで彼とバトルをしたのだろうか。
ガンマール、きょうお前に捧げるのは表彰台じゃない。裏将軍との勝負だ。
抜かさせない。裏将軍をブロックすることだけにすべての神経を集中する。
ガンマールとの最後のやりとり。
あの日のことは何度も何度も泣きながら思い出した。記憶はより深く刻まれ、色褪せることなく再生される。
飛ばし屋をやめてくれ、という僕らの願いを「わかった。もうやめる」とガンマールは聞き入れ、その足でアステロイドベルトへ向かった。
ガンマールが死んだ原因が、僕ら兄弟にあるのは間違いない。
だが、僕の中には確かめようのない疑念がある。
果たして末弟は、そこで死にたかったのだろうか。
弟のベータールは、自分が追い込んだと思っている。だが、僕にはそんな風に見えなかった。
ガンマールはただ、飛ばし屋として最後にアステロイドベルトを飛ばしたかっただけではないだろうか。
そこで、裏将軍のように飛ばしたかったのではなかったか。ガンマールは裏将軍に憧れていた。

死への恐怖がまるでない裏将軍の飛ばし。「死に損なった」という決め台詞。あれは本心だ。
究極の危険飛行。
そこにあるのは「九十九パーセントの死」だ。裏将軍は「一パーセントの生」を偶然という運でつかんでいる。

ガンマールは裏将軍の飛ばしを再現しようとして危険ラインを見誤り、その「一パーセント」をつかむことができなかったのではないか。
もはや確かめようのないことだ。
でも、僕の心の中にその疑念は消えることなく留まっている。
ガンマールの死には裏将軍の影があると。 (34)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」