銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十八話(4) 放蕩息子と孝行息子
・第一話のスタート版
・第二十八話(1)(2)(3)
・第二十八話のまとめ読み版
「ただいまぁ」
レイターの案内で、月のお屋敷へ足を踏み入れる。
パーティーにはまだ時間があるので客の姿はない。
奥のドアを開けると、アーサーさんとチャムールがソファーに座っていた。

アーサーさんは軍服の正装が似合っていてりりしかった。
チャムールも眼鏡ではなくコンタクトにして、素敵なドレスを着ている。二人はとてもお似合いだ。
そして、正面の椅子にニュースでよく見かける人物が腰掛けていた。
きょうの主役、ジャック・トライムス将軍だ。
銀河連邦軍の元帥で総司令官。軍服の胸には勲章がいくつも飾られていた。

威厳がある。緊張する。
わたしの故郷アンタレスに軍はない。
父は連邦軍の駐留に反対する運動をしていた。将軍に恨みがあるわけではないけれど、父だったらどうしただろうか。
そもそも、わたしのようなものが普通に話のできる人じゃないのだ。
将軍が口を開いた。
「久しぶりだなレイター。もう少しわしの前に顔を出せ」
低い声はアーサーさんと似ている。
「そういうジャック、あんた、ほとんど家にいねぇじゃん」

普通の家族の会話のように親しい。
「こちらがチャムールさんの同期のティリー・マイルドさん」
レイターがわたしを紹介した。
将軍が立ち上がる。あわてて前に立つ。
「初めまして」
「あなたがティリーさん」
将軍が、目を見開いた。
頭を下げて挨拶する。
「は、はい。ティリー・マイルドでございます」

将軍はわたしの緊張を解くように、にっこりと笑った。
「うちには、手の掛かるバカ息子と、手の掛からない無愛想な息子の二人がおりましてな。バカ息子にはほんと困っておるんですが、どうぞよろしく頼みます」
将軍は気さくな方だった。
「い、いえこちらこそ」
「バカで悪かったな、バカで。天才と比べられりゃ誰だってバカだ」
レイターがぶつぶつ言った。
「きょうは楽しんでいって下さい。レイター、ちゃんとティリーさんをエスコートするんだぞ」
「わかった。わかった」
*
ホールへ向かう廊下の壁に、何枚もの写真が飾られていた。
色白の美しい少女。

「フローラさ」
レイターがつぶやくようにわたしに言った。きれいなお人形さんのような人。
わたしと全然似ていない。
その横の集合写真に、わたしの目は釘付けになった。結婚写真だ。

「俺が十七ん時だ」
写真の中心には、真っ白なタキシードを着た少年のレイターと、ウェディングドレスをまとったフローラさんが仲むつまじく並んでいる。
まるで絵本の中のお姫さまと王子さまだ。
レイターが「婚約」ではなく、「結婚」という言葉を使った意味がわかった。結婚式の写真だった。
二人の横に、将軍とアーサーさんが軍服を着て立っていた。
幸せが伝わってくる。
「亡くなる一週間前さ。アーサーは知ってたんだ、フローラの命が長くないって。俺は・・・バカ息子だから知らされてなかった」
胸が苦しい。
二人の写真から愛があふれている。
銀河で最高にいい女。
間違いなく『愛しの君』だ。
デジタルフォトフレームが、結婚式のスナップ写真を映し出す。
ハイスクールの同級生だろうか、少年たちが祝福している。
なんて楽しそうなのだろう。
わたしの知らないレイターがそこにいた。
盛り付けられた料理と一緒に、見知った人が映った。
口ひげがないけれど、五つ星のシェフ、ザブリートさんだ。

「結婚式の料理はザブが作ってくれたんだ。結婚式だっつうのに、山盛りのフライドチキンとフライドポテトだぜ。でも、あの味を、俺は一生忘れねぇ」
わたしは、話を聞いているのが辛くなってきた。 (5)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」