銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十八話(5) 放蕩息子と孝行息子
・第一話のスタート版
・第二十八話(1)(2)(3)(4)
・第二十八話のまとめ読み版
少しずつ出席者がホールへ集まりだし、立食パーティーの食事が運ばれてきた。
レイターがつまみ食いをしている。
準備を仕切っている年輩の女性が、わたしとレイターのそばに近づいてきた。
「レイター。お嬢さんを紹介しておくれ」
ちっ。レイターが嫌な人に見つかった、と言う顔をして舌打ちした。

「こちらはティリー・マイルドさん。チャムールさんの同期。で、この人はバブさん。うちのこと取り仕切ってる人」
「ティリーさん、すみませんね。この子の相手は大変だと思いますけど、根は悪い子じゃないんで」
チャムールが話していたお手伝いさんは、彼女のことだとピンときた。
「ったく、悪い子って、あんた、俺をいくつだと思ってんだ」
「アーサー坊ちゃまを見てご覧。落ち着いてエスコートしていらっしゃるのに、あんたときたらつまみ食いかい? 同じ年には見えないよ」
「わあった、わあった。あいつは昔から老けてるんだ。あんたは早くパーティーの準備しろよ」
*
将軍が登場し、パーティが始まった。
乾杯の後は歓談。
人の出入りが激しくなる。多くが軍の関係者。ほかにも政治家など蒼々たる面々だ。場違いなところに来てしまった感じ。
レイターは
「全部食べてやるぜ」
と料理が並んだ机の前から動こうとしない。
手の込んだパーティ料理はおいしかった。けれど、味わって食べている人はいない。
将軍の声が聞こえる
「うちには息子が二人おりまして・・・」

出席者のほとんどが、アーサーさんとレイターのことを昔から知っているようだ。
レイターにも声をかけてくる人がいた。胸に勲章をたくさんつけた軍人さん。
「レイター、かわいいお嬢さん連れてるじゃないか」
「かわいいだろ。俺のティリーさんさ」
その言い方やめて、とレイターの服をひっぱる。
「このおじさん、俺とアーサーが昔乗ってたアレクサンドリア号の艦長、アレック少将」

「よろしく」
と男性が手を差し出した。
「こちらこそ」
わたしは、そのがっしりとした手を握った。豪快そうな人だった。
「お前、ザブリートの店でマクドレンを怒らせたんだって」
「怒らせたのは俺じゃねぇ、鷹狩りが好きな将軍家だ」
レイターが口をとがらせた。
「まあいい。どちらにせよ愉快だ。ははは」
これは、この間、ルク星のザブリートさんのお店へ出かけた時の話に違いない。大臣が狙われて、皇宮警備のマクドレン隊長という人が怒っていた。
レイターは厨房で調理を手伝っていたのだけれど、事件に何か関わったのだろうか。
レイターの人脈は広い。
客が次々と話しかけてくる。けれど、食べるのに忙しいという顔で、適当にあしらっていた。
一方、アーサーさんとチャムールは一人一人に対し丁寧にあいさつしている。ご飯を食べる暇もなさそうだ。

「二人は大変そうね」
「そりゃ、将軍の跡取り様だからな」
レイターがここへ出てくるのに、気乗りしない理由がわかった。
楽しいパーティとは言えない。
「ティリーさん。俺の部屋へ行こうぜ?」
「いいの?」
二人で会場を抜け出した。
*
レイターの部屋は、広い御屋敷の真ん中あたりにあった。居候という雰囲気ではない。
「『裏将軍』って呼ばれていたにしては、御屋敷の中心で暮らしていたのね」
「フローラの隣の部屋をもらったんだ。あいつ身体が弱かったから、俺が看病してたのさ」
それなのにレイターだけ、フローラさんの余命を知らされていなかった。 また、胸が痛んだ。
ドアを開けると、レイターの部屋はフェニックス号の部屋同様に散らかっていた。
「あなたって、ほんと変わらないのね」
ハイスクールの教科書とかが乱雑に置かれていて、まるで高校生の部屋のよう。
多分、十七歳の時からこの部屋の時間は止まっている。
「ここに昔のS1の録画データあるぜ、エースのデビューレース見るかい?」
「見たい、見たい!」

エースのレース映像は全部持っているけれど、実はデビューのレース映像は販売されていない。
代打ちだったことから、版権でもめて二次利用できなかったという。
テレビで放送されたダイジェスト版は持ってる。けれど、一時間の全編は初めて見る。
こんなところにお宝映像があったなんて。 (6)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」