銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十八話(6) 放蕩息子と孝行息子
・第一話のスタート版
・第二十八話(1)(2)(3)(4)(5)
・第二十八話のまとめ読み版
画面に映ったエースが子供っぽい。
「若いわぁ」
「エースが十八ん時だからな」

「でも、やっぱりかっこいい!」
ああ、ドキドキしちゃう。
第一レーサーが突如出られなくなり、デビュー前のエースが代理で出場したのだ。
そして、優勝。
エースが一躍有名となった伝説の一戦。
やっと全編見ることができる。
船がスタートした。
「まだまだ甘いなあ」
レイターがつぶやいた。
「うわっ、旋回もゆるゆるだ。これで史上最速、ってレベルが低すぎるぞ」
例の罵倒が始まった。
「ちょっとレイター、人が気持ちよく見てるんだから、静かにしてくれない」
エースの文句を言われると腹が立ってくる。

「そう言うけどさ」
レイターは映像を止めてカーブのポイント点を指で指した。
「俺ならここまで詰められるぜ」
レイターの指摘はわかった。
でも関係ない。
「しょうがないじゃない、初レースなんだから!」
「ったく、あんたほんとにエースが好きなんだな」
あきれたようにレイターは肩をすくめた。
「そうよ、わたしは彼に憧れてクロノスに入ったんだから」
「そこについては、俺もエースに感謝してんだ。おかげでティリーさんに会えたからな」
それだけ言うと、もうレイターは何も言わなかった。
わたしはエースのレースを満喫した。
*
「ほれ」
レイターがわたしに薄いディスクを投げた。
「コピーだ」
「もらっていいの?」
「十万リル」
「えええーっ」
思わずわたしは大声をあげた。
「ったく本気にするなよ、やるよ。でも、あんたなら十万でも払ってくれたかもしれねぇな」
「あ、ありがとう」
わたしはディスクを抱きしめた。十万は高い。でも、エースのためなら払ったかも。
*
S1プライムという宇宙船レースが開催された際、わたしはエース本人の付き人の仕事をした。

本物のエースはテレビで見ていたイメージと全く同じ、というわけではなかった。
さらに『無敗の貴公子』が実は負けたことがあったことも知った。
しかも、その相手がこのレイターだということも。
それでも、エースがわたしの憧れであることに変わりはない。
好き、という気持ちは続いている。
きっと、レイターもそうなのだ。
「レイターは、フローラさんのことが今も好きなのね」
と、口にした瞬間、レイターは黙り込んでしまった。
聞いてまずかっただろうか、この間のフェニックス号と似た空気が漂う。沈黙が息苦しい。
ポツリとレイターが言った。
「あいつのこと、嫌いになりようがねぇし・・・」
亡くなった人は美しい思い出のまま、記憶に保存される。

新たな情報が上書きされることもない。
レイターは言葉を選ぶようにして続けた。
「俺以外みんな、フローラとの結婚式をままごとだと思ってた。でも、俺はあの時、真剣に宇宙の神様に誓ったんだ。『一生、フローラを愛します』ってな」
一生、というのはいつまでを指すのだろう。
「俺は『銀河一の操縦士』になって、あいつを宇宙へ連れてってやる、って約束したのに果たせなかった」

レイターの言葉からフローラさんへの愛が伝わってきた。
その横顔を見ていると、胸が締め付けられるように苦しくなった。
悲しい話だから、レイターに同情しているのだろうか。
いや、何かが違う。怒りとも苛立ちともつかない、嫌な気持ち。
どうしたんだろう。わたし?
「その点、ティリーさんはいいよな」
レイターは振り返ると、にやっと笑った。
いつものレイターに戻っていた。
「『銀河一の操縦士』の船でいつでも宇宙を飛べるんだぜ、幸せもんだよなぁ」
「わたしは関係ないでしょ!」
つい声を荒げた。 最終回へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」