銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十四話(3) 展覧会へようこそ
・第一話のスタート版
・第二十四話(1)(2)
「君はいい季節にアリオロンで暮らしたな。あのまま亡命していれば良かったものを」
ライロットの言葉は、冗談とも本気ともつかなかった。
あの時、俺はこのカレンダーを見ながらアリオロンへの亡命を希望した。

暑くも寒くもない、何とも過ごしやすい季節だった。
アリオロンのテレビでやってた連ドラは面白かった。
あのままアリオロンへ残っていたら、こうやってライロットと殺しあうことも無かったろう。
「あんたもいい季節にソラ系へ来たじゃん。亡命するなら相談に乗るぜ」
俺も、冗談とも本気ともつかない返事で返した。
*
アレンカトゥーナ展覧会が開幕した。
ライロット扮するバルーダ学芸員は、流暢な銀河共通語で来場客に絵画の案内をしていた。
『山河の春』の前に学芸員用の椅子がある。
ライロットはそこに腰かけ、質問を受けると立ち上がって答えていた。
大概の客は、敵国のアリオロン人を見るのも始めてだ。
客の質問は、絵画にとどまっていなかった。
時には政治的な話題をふっかける。
しかし、やっぱあいつ頭がいいな。機転をきかせた回答でトラブルを回避してる。
だが、時にはそうもいかないことがある。
「敵国人、恥を知れ!」
怒鳴り声が聞こえた。
俺は、急いでライロットのもとへ駆けつける。
「お客様、ほかのお客様のご迷惑になります。お静かに願います」

興奮した客をなだめて、展示室の外へ出す。
なんで俺が、ライロットを守んなきゃいけねぇんだよ。理不尽過ぎる。
*
俺は耳がいい。
「コンニチワ」
赤いベレー帽を被った年配の女性客が、ライロットにアリオロン語で話しかけた。
緊張が走る。
こいつ、ライロットと接触しようとしてるのか。
「ワタシ、勉強、アリオロン語、シテマス」
おい、下手なアリオロン語なのか、暗号なのかどっちだよ。
「お上手ですね」

ライロットが笑顔を見せ、アリオロン語で応対する。
「ありがとうございます」
この女、挨拶だけ、やたら発音がいい。
「ワタシ、友ダチ、ナリタイ、アリオロン人」
ライロットがゆっくりとアリオロン語で応える。
「私も、連邦の皆さんとお友だちになりたいです。宇宙は一つです」
どの口で言ってるんだか。
アリオロン語はそんなに難しくねぇ。
敵国語とはいえ本屋で教材も売られてる。
だが、本物のアリオロン人と話す機会はほとんどない。
あの女性は話してみたかっただけだろうが、念のため、連絡を入れておく。
「赤いベレー帽の女、ライロットと接触」
後は特命諜報部が、シロかクロか調べ上げるだろう。
*
ライロットはアリオロン芸術団御一行様、として会場に隣接したホテルに宿泊している。
そのホテルは、アーサーの部下の別の諜報部員が見張っていた。
暗殺協定が結ばれているライロットと俺が、誰もいないところで出会ったら殺しあっちまうからな。
そこはアーサーの奴も一応考えている。

平和のため芸術で友好って謳ってるのに、バルーダ学芸員が殺害されたとなったら大変だ。
外交問題になっちまう。
だから、殺すにしても手間がかかる。
巧妙に不慮の事故に見せかけるか、連邦に亡命したかのように、欺かなきゃなんねぇ。
死体を隠して、バルーダ学芸員の偽物の手紙をでっち上げる、ってところだが、なんせ相手はライロットだ。そう簡単にはいかねぇ。 (4)へ続く
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レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」