銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十九話(45) 決別の儀式 レースの途中に
・銀河フェニックス物語 総目次
・<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの前に」① ②
・第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」① ② ③ (40) (41) (42) (43) (44)
エースが首位で、最終コーナーに入った。
いや、まだだ。レースは最後まで何が起こるかわからん。
うちの出場レーサーを決めるシミュレーターでの対戦で、若いチャーリーはこの緩いカーブでコーナーガード柵にぶつけて順位を落とした。

エースだって人間だ。失敗することがあるかもしれん。
と期待する俺をあざ笑うかのように、エースのプラッタは安定したままカーブを抜けた。無敗の貴公子だ。甘くはない。
残すは直線。
小惑星帯で後れをとったレイターが、今、最終コーナーを回る。補正しながらよく飛ばしてきたが、距離をあけられた。
「直線ならメガマンモスで追いつけるか?」
「これだけ離されると無理です」
計算が得意なオットーが力なく答えた。
ここまでか。
レイターが最後のストレートに入った。直線番長がうなる。
あいつはあきらめていない。
エースを追いかけ、再度ハールが赤く光りだした。エースとの距離がぐいぐいと詰まっていく。見たことのない加速だ。
アラン・ガランが叫んだ。
「レイター、そこまでだ! 速度を落とせ! これ以上のスピードは危険だ」
『追いかけるスチュワート。は、速い。これは瞬間最高速度のレコードが更新されそうです』
実況の声が裏返った。
エースのプラッタにレイターのハールが迫る。
それは、まさに襲い掛かる火の玉だった。
「おい、レイター止めろ! パラドマ発火を起こす。ハールが燃えるぞ!」
レイターの奴、アラン・ガランの指示を無視していると言うか、通信機を切ったな。

オットーがあわてる。
「エンジン全開です! 今度は本当に百パーセントを超えてます」
見ればわかる。機体が赤から金色に変色した。臨界だ。
メガマンモスのエンジンがフル回転している。
ハールがパラドマ発火の限界値を超えた。
だが、機体から火は出ていない。羽が緑色に染まっている。
「どうなってる?」
「消火剤だ」
レイターの奴、船に設置してある消火剤を巻きながら飛ばしていた。
消火剤が機体の熱を吸い取る。
「ダメだ! このままじゃ火がついた時に、消火できない」
「馬鹿野郎! あいつ死ぬ気か!」
* *
すごいレースだ。ティリーは手を握りしめた。
無敗の貴公子を銀河一の操縦士が追い詰めている。
『は、速い。これこそがメガマンモスです。瞬間最高速度のレコードが更新されそうです』
アナウンサーさんの声がひっくり返っている。
「いかん。このままではエースが捕まる!」
メロン監督が叫んだ。
ありえない加速。
エースのプラッタはこれ以上の速度はでない。

レイターのこのメガマンモスの加速なら、ゴール前でエースを追い抜く。
ハールが金色に輝き、緑の消火剤をまきちらした。
その様子は美しく神々しさすら感じる。
とその時、ハールが少しスライドする様に横に動いた。
レイターにしては不自然な無駄な動き。
ジョン先輩が叫んだ。その声が切羽詰まっていた。
「やばいよ! レイターはパラドマ発火を起こす気だ」

「え?」
「まずいよ、まずい。どうしてスチュワートは止めないんだ。機体が燃えだすぞ。レイターはエースのプラッタに燃え移らないように横へ距離を取ったんだ。ハールはすでに消火剤も使い切ってる」
「それって?」
「このままじゃ、空飛ぶ棺桶だよ。自殺行為だ。レイターが死んじゃうよぉ」
ジョン先輩が泣きそうな声を出した。
直線を飛ばすハールは光のラインを描いて宇宙を切り裂いていく。
「いやだ、レイター、死なないで!」

わたしは叫んだ。
メロン監督が通信機を手にした。
「消防艇をすぐゴールに」 最終回へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」