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銀河フェニックス物語<少年編>第十九話(4)敵とブラックアウト

 銀河フェニックス物語 総目次
<少年編>第十九話「敵とブラックアウト」(1)(2)(3
<少年編>マガジン

「スマナイ」
 敵機からメッセージが届いた。
 アリオロン機が機関砲でかけらの粉砕を始めた。こいつ、わざとじゃなかったのか。腕が悪いだけかよ。

 まずい、次の五つ目が迫ってる。俺は機関砲のスイッチを離し、機体を反転させた。四つ目の処理はアリオロン機に任せる。
 五つ目は初期の計算値からずれてる。どうする。

 アーサーの声が聞こえた。
「五つ目対応データを伝える」
 あいつ、退避しながら暗算で最適解を計算してたのか。

 天才は間違わねぇはずだが、入力しながら不安になる。
「おい、その入射角って、間に合うのかよ?」
「銀河一の操縦士ならできる」
「うれしいことを言ってくれるぜ」
 五つ目に近づく。
 アーサーの指示通り、全速で機体を急降下させる。ポイント地点を誤ったら終わりだ。
 ここだ。思いっきり操縦桿を引く。一気に急速宙返りさせる。タイミングはばっちり。全身がシートに押し付けられる。くっ。身体中が締め付けられて息が苦しい。平気だ。俺は銀河一の操縦士だ。
 五つ目は形がいびつだ。衝撃を与え過ぎないように、一点を狙う。

 やばい。急に視野が狭くなる。体が冷えて血が持っていかれる。俺としたことが、ブラックアウトかよ。視界が暗い。意識がとぎれる。
 なんで、こんな時に。情けねぇ。
 必死に指先へ意識を持っていく。

 はあ、はあ、自分の呼吸音が頭の中を駆け巡る。引き金が重い。誰かに押さえつけられているみてぇだ。アーサーの計算タイミングを逃すな。全身の力を指に注ぐ。いけぇ。
 目がかすむ。ミサイルの射出振動は感じた。軌跡が甘いか、誤差の範囲か。数値が絡まった糸のように見えて判断できねえ。次の手はどうすればいい。暗闇が目の前に迫ってきた。

 そこで俺の記憶は途切れた。完全なブラックアウト。

 目を覚ますと、真っ白な天井が目に入った。軽い吐き気がする。俺は点滴を受けていた。白衣を着たジェームズが俺をにらんでいる。
「気が付いたかい?」
「作戦はどうなった?」
「全天体回避。被害なし。共同作戦は成功したよ」
 ほっとして大きく息を吐いた。アーサーの奴も退避できたってことだ。うまくいったってのにジェームズの声はいらだっていた。
「あんた、何でそんな不機嫌な顔してんだよ?」
「僕の言ったこと聞いていなかったのかい。きょうは安静にするようにと言っただろ。お前は身体が小さいんだから」
「あ、そうか」
「何が、あ、そうかだよ」
「へへ」
 俺は思わず笑いだした。

 あれぐらいでブラックアウト起こすなんて、銀河一の操縦士が情けねぇと思ったが、そっか、献血のせいか。

「アリオロンの戦闘機がお前の機体を牽引してくれたんだ。感謝しろよ」
 あいつが助けてくれたのか。撃ち落さなくてよかった。
 医務室が静かだ。手当を受けたアリオロンの兵士は敵艦に戻ったのだろう。
「アリオロン艦は?」
「まもなく自力航行できるようになる」
「そしたら、俺たちまた戦うの?」
「お互い、いったん領海へ戻ることになった」
「その後、戦地で出会っちゃったら」
「……」
 ジェームズは答えなかった。でも、わかってる。戦うんだろうな。それが仕事だもんな。
 戦争って意味わかんねぇよ。大人ってほんとバカだな。って考えてたら視界がゆっくりとホワイトアウトしていった。
 
(おしまい)


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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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