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銀河フェニックス物語<裏将軍編>第一話(最終回) 涙と風の交差点

銀河フェニックス物語 総目次
<ハイスクール編>「花は咲き、花は散る」(1) 
<出会い編>第三十九話「決別の儀式」① 
・<裏将軍編>第一話「涙と風の交差点」(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)


 月へ戻ったある日、老師が俺に言った。
「操縦中、お前はもっと船の声を聞いた方がいい」
「言われなくてもエンジン音はちゃんと聞いてるぜ」
「耳じゃない、全身で聞くんだ」
「あん?」

 昔、似たようなことを師匠のカーペンターに教えられたことを思い出した。

カーペンター後ろ目一文字

 口下手だった操縦のプロは、助手席に座る俺を横目で見ながら言った。
「俺が何を聞いて操縦してるかちゃんと見ろ」
「はあ? 聞くのかよ? 見るのかよ?」
 音が見えるわけねぇだろが。って、俺は首を傾げた。
 あれは、いつのことだったか。

 珍しいことに、老師が仕事の終わりを宣言した。
「きょうの仕事はもういい。お前は自分のための操縦席をシートから考えて見ろ」
「シート?」
 俺は体が小さいからいつもシートをめいっぱい前に引き出して、それでようやく操縦桿に届いている。
 じいさんはどうしろって言うんだろう。

 小屋の外に出たら、旧式の小型船が捨てられているのが目に入った。
 小柄なリゲル星人用の宇宙船。じいさんはこれを見てシートの話をしたのか。ドアを開けて中をのぞく。
 一回り小さな操縦席に腰掛けてみた。このシートなら操縦しやすいな。

 俺はこれまで自分の船を持ったことがなかったから、俺に合わせて船を改造するって発想がなかった。

 小型のシートをいつも使っている教習船に乗せ替えた。楽しくなってきた。
 俺が一番扱いやすい操縦席。やっぱ乗り慣れてる戦闘機風がいいな。計器類の位置も変えたいところだ。
 じいさんはシートから考えろって言ってた。シートだけじゃなくていいってことだ。
 俺は夢中になって船をいじった。時間があっという間に経っていたことに気づかなかった。珍しいことに老師が飯の催促をしなかったからだ。

 気が付いたら一晩が経っていた。
「あれ? 朝だ。じいさん、夕飯食わずに寝ちまったのかな?」
「どうだ、できたか?」
 じいさんが顔を見せた。

「こんな感じ」
 えへっ、思わず照れ笑いをしてしまった。

15紅白戦笑顔作業着逆

「ほぅ」
 じいさんはそれだけしか言わなかった。

「小惑星帯まで行ってみるか」
「行くっ行く!」

 教習船のエンジンをかけた。

 あ、違う。音も何もかもが違う。すべてが一瞬で俺の中に入ってくるような感覚。これまでバラバラの点だった情報が、線でつながっている。
「じいさん、やっぱ違うぞ」
「そうでなければ意味が無いわな」

老師にやり

 軽く浮上させる。
 おおっ、バランスを保つのがいつもより全然楽だ。いつも気を使っていた分を他のことに集中できる。

「んじゃ、行くぜ」
 何をしても俺にとって新鮮だった。俺の思うとおりに船が動く。いつもは俺が船を動かしていた。でもきょうは勝手に船のほうが動いてくる。

「じいさん」
「何じゃ?」
「ありがとよ」
「何を言っとる。まだまだじゃ。いいか、何度も何度も飛ばして、0コンマ1ミリ単位まで微調整しろ。とにかく船をお前の中に取り込め。お前のセッティングは甘すぎるわい」
 老師から見たらそうかもしれない。でも、とにかく俺は感謝したい気持ちでいっぱいだった。空と宇宙を飛ぶ羽が俺の心を解き放していく。

「お前、わしの跡を継がんか?」
「は? じいさんもうろくしたのか?」
「馬鹿者。お前、設計士になるならわしの直弟子を名乗ってもいい」
 じいさんの直弟子。ルーギアやサブリーダーたちが名乗りたがってることを俺は知っていた。だけど俺には関係ねぇ。
「言っただろ、俺の夢は『銀河一の操縦士』になることだって」
「気が変わったらいつでも言え」
「変わんねぇよ」

 俺の夢はフローラの夢。

フローラお姫様抱っこ結婚式バックなし

 いつもと違う軽快なエンジン音。

 俺の全身に船の音が流れ込んでくる。その中に聞こえた。
「『銀河一の操縦士』になってね、約束よ」フローラの声が、くっきりと聞こえた。     (おしまい)
<裏将軍編>第二話の前に
<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」へ戻ります

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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」