銀河フェニックス物語<出会い編> 第十九話(最終回) 恋と伝票の行方
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ドキっとした。
答えを聞きたいような、聞きたくないような。
ダルダさんが重ねて聞く。
「『愛しの君』の話でもしたのか?」
気になる。
思わず、レイターの次の言葉を待ってしまう。
「あん? 男と女の秘め事を聞くなんて、野暮だぜ」
と言って、レイターはわたしに頭を下げた。
「ティリーさん、悪かったな。迷惑かけて。すまなかった」

「・・・・・・」
わたしは混乱した。
レイターに謝られるとは思ってなかった。
わたしはレイターに、お礼を言わなくてはいけないのではないか。
いや、そもそもの原因は厄病神だ。
ダルダさんがレイターに言った。
「おまえ、三百億リル儲けたんだろ。謝るならティリーさんを高級レストランに誘うとかしても、いいんじゃないか」
「っつっても、もう、手元にねぇんだよな」
手元に無い?
わたしはびっくりした。

流石のダルダさんも驚いている。
「おいおい、三百億を一ヶ月で何に使ったんだ、女か?」
「うーん。借金の八割が返せた、ってところかな」
どんな金銭感覚をしているのか。
「あなた、一体いくら借金してるのよ?」
「船を維持するにゃ、金がかかんのさ」
ダルダさんがうなずきながら言った。
「まあ、お前には立派な保証人がついてるからな。将軍の名前を出せば、いくらでも金は借りられるんだろうが」
「そうでもねぇんだぜ、あいつケチだから」
レイターの後見人は将軍だ。
思わず聞いてしまう。
「将軍ってケチなの?」
「違う違う、アーサーさ。あいつジャックがいい、って言ってんのに、ジャックにサインさせねぇよう、妨害しやがるんだ」

アーサーさんは将軍のご子息。
「そんな借金、しないのが普通よ」
「俺が死んだら、チャラになる借金しかしてねぇんだぜ。将軍家に迷惑もかかんねぇのに。そうだ、今度はダルさんが保証人になってくれよ」
ダルダさんは、実家から一億リルをお小遣いとしてもらう大金持ちだ。
「ガハハハハ、お断りだね」
「じゃあ、ティリーさん」
「わたしが保証人になったところで、あなたの希望するような額は借りられません」
「そうでもねぇんだ。三十万リルあったら、エンジンのパーツが買える」
三十万リル。
それならわたしでも借りられそうだ。でも、そんな借金生活は良くない。
「お断りします。お金はちゃんと計画的に使わないとダメでしょ。欲しいものがあるからって、我慢しないで借金して買っていたら高くつくのよ」
「わかってねぇなあ。今、必要だから借りるんだよ」
議論にもならない。
「あなたと結婚したら、大変ね」
ダルダさんが慌てた声を出した。
「そ、それは大変だぞ、ティリー君。レイターと結婚だなんて。スリルとデンジャラスだぞ」

「は?」
わたしは一般論を言っただけだ。
「いやあ、ティリーさんが俺の連帯保証人を、一生務めてくれるってのは助かるぜ」
レイターも悪乗りしてニヤリと笑った。
「ち、違います、勘違いしないでください。一般論です」
大慌てで否定した。
厄病神と結婚だなんてありえない。
*
「ほれ、高級レストランの味だぜ」
天然物のパキールは一年前と変わらず、美味しかった。
調理師免許を持つレイターの腕は確かだ。
ダルダさんとレイターが大声で武勇伝、というか、ナンパの失敗談を始めた。
「ガハハハ、ティリー君。人生はロマンとスリルとロマンスだよ」
この人たちは、出張先で何をやっているんだか。
高級なレストランに憧れはあるけれど、こんな風に楽しくは過ごせないだろうな。人目が恥ずかしくて、と思った。
*
翌日、ベルが近づいてきて言った。
「ティリーはレイターと結婚するって宣言したの? 噂になってるよ」
「はあ?」
ダルダさんだ。あの人、声が大きいから。
ありえない。
わたしは頭を抱えた。 (おしまい)
第二十話「バレンタインとフェアトレード」へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」