銀河フェニックス物語<出会い編> 第十九話(5) 恋と伝票の行方
・第一話のスタート版
・第十九話(1)(2)(3)(4)
案の定、話の長いお客様との打ち合わせは長引いた。
わたしは急いで駆けつけたけれど、パキ星第二工場の会議に、五分遅刻した。
「遅くなってすみません」

謝りながら部屋に入ったわたしを、ジュディ先輩が怖い顔をしてにらみつけた。
「あなた、仕事を何だと思ってるの?」
まずい。ここは謝った方がいい。
「すみませんでした。前の仕事が長引いてしまって」
「事前にわかっていたなら、伝えておきなさいよ。社会人でしょ」
そう言われて、つい答えてしまった。
「伝えてあります。ダルダさんに」
この一言が失敗した。「はい」と返事だけしておけばよかったのだ。
一度口から出た言葉は消去できない。
振りあげた拳を下ろせなくなったジュディ先輩は、冷たい声で言った。
「もういいわ、会議を進めましょう」
それっきり、わたしの方へ一度も顔を向けなかった。
ジュディ先輩の怒りに、燃料を投下してしまった。
ジュディ先輩にも、事前に一言かけておけばよかった。
けど、もう後の祭りだ。
ああ、これで絶望的に伝票が回らない。
*
会議が終わると、ダルダさんがわたしに聞いた。
「ティリー君、ジュディ君と何かあったのかい?」

ダルダさんはこのプロジェクトの責任者だ。
経理、すなわちジュディ先輩とうまくいかないのはまずい、と思ったのだろう。
「厄病神のせいだと思います」
わたしは正直に話した。
レイターがジュディ先輩を振って、逆恨みされているようだ、と。
「そうだったのか、俺に任せなさい。ロマンスはリスクだ。ガハハハ」
ダルダさんが胸を叩いた。
わたしはダルダさんに話したことを、急に後悔した。
*
翌日、驚いたことに伝票は止まることなく回った。
出張の精算をした伝票も戻ってこない。
わたしの心配に反して、ジュディ先輩の嫌がらせは、ピタリと止まった。
「あら、ティリー、おはよう」
「おはようございます」
あいさつも普通に戻った。
ダルダさんは、一体どんな魔法を使ったのだろうか。
*
会議で一緒になったダルダさんにお礼を伝えた。
「ありがとうございました。ジュディ先輩に一体、何て説明したんですか?」
「俺は何にもしてないよ」
「え? でも、伝票は回りましたよ」
「ガハハハ、レイターに頼んだんだ。ティリー君が困っているぞって。あいつは女の扱いが上手いから」
「え、えええっ?」
レイター本人に伝えるとは思わなかった。
「ティリー君、今晩、フェニックス号で飯を食おう」
とダルダさんに誘われた。
レイターとは顔を合わせたくない気分だけれど、ダルダ先輩に言われては断れない。
*
フェニックス号のキッチンから、いい匂いがする。
香ばしくて懐かしい香り。
レイターが、きのこ料理を作っていた。
「いらっしゃい、ティリーさん。きょうは天然物のパキールだぜ」

「えっ?! 天然物ってパキ星から持ち出すのって違法じゃないの?」
「俺はいいのさ」
と答えるレイターに、ダルダさんが言った。
「こいつは、パキ星政府の恩人だからな。持ち出し許可も簡単だ」
政府は工場誘致の推進役だ。
ダルダさんが、いきなり本題を切り出した。
「それで、レイターは、ジュディ君に何て言ったんだ?」 最終回へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」