銀河フェニックス物語<出会い編> 第六話(1/3) アステロイドと美味しいご飯
第一話 永世中立星の叛乱
第二話 緑の森の闇の向こうで
第三話 レースを観るならココと言われて
第四話 朱に交わって赤くなって
第五話 今度はハイジャックですって?!
『厄病神』の力は凄い。前回の出張でわたしはハイジャックに巻き込まれた。
だけど不思議なことに、プライベートではそんなに大変なことは起きない。
研究所のジョン先輩とフェニックス号でレイターの解説聞きながら宇宙船レースを鑑賞し、その後、レイターの助手席に乗りアステロイドで飛ばし屋とバトルをする。
宇宙船レースの最高峰S1グランプリがある週末はこのパターンで過ごすことが増えてきた。
*
フェニックス号は最新の4D映像システムを搭載していて迫力満点。
わたしは憧れの『無敗の貴公子』エース・ギリアムが勝利するレースを堪能する。
エースはレーサーでありながらわたしが勤めるクロノス社の専務で、御曹司。
学生の頃から大ファンだったわたしは彼がいたからクロノスの入社試験を受けた。

入社とともにエースファンの友だちとのつきあいは疎遠になった。
彼女たちはわたしにエースのことを聞きたがるけれど、仕事で知ったことは軽々しく話せない。
昔と同じようには盛り上がれなくなってしまった。
田舎のアンタレス星系から就職でソラ系へ出てきて、まだ、こちらに友だちもいないわたしにとって、趣味のレースを一緒に見る人がいるのは素直に嬉しい。
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きょうもエースは一位でゴールした。
「ほーほほほほ、エースは安定の優勝。最高だわ」

レイターが応援しているプライベーターのチーム・スチュワートは今日も六位。
「万年六位は逆立ちしたってエースには勝てないわね」
「うるさいうるさいうるさい!」
その興奮状態のままレイターとアステロイドへ出かけて飛ばす。
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S1と飛ばし屋はもちろん違うけれど、エースのレースを擬似体験したような気分になる。
エースファンのわたしはレーサーに憧れがある。
そのせいだと思う。このだらしない『厄病神』が操縦桿を握るといつもよりかっこよく見えてしまう。
ジョン先輩はバトルをするレイターの船に絶対に乗らない。アステロイドまで自分の船で出かけて観戦している。
「怖くて乗れないよ」
とジョン先輩は言う。

確かに猛スピードで急旋回して、迫ってくる小惑星をギリギリでかわしていくのは恐怖に近い緊張感がある。
けれど、そのスリルを味わうと脳の中から興奮する物質があふれ出る感じがして、わたしはやみつきになっている。
簡単に言えばジェットコースターみたいなものだ。
「ジェットコースターは設計上安全が確保されているけれど、バトルは違うよ」
とジョン先輩は言う。
それを聞いていたレイターが口をとがらす。
「『銀河一の操縦士』の操縦は安全第一に決まってるだろが」
「どこが安全なんだよ。あれは船の限界を超えてるぞ。一つ間違ったら大惨事さ。だからティリーさん、もう止めよう」
とジョン先輩は言う。
レイターがバトルで使っている船はごく普通のファミリー船で、あんなに飛ばせるのはどう考えてもおかしい。
リミッターを外しているのだろう。
それでも、この件に関してはレイターが言うことの方が正しい気がする。
レイターはバトルを楽しんでいる。
船の限界は超えているかも知れないけれど、レイターの操縦の限界は超えていない。おそらく『安全第一』という言葉に嘘偽りはないのだ。
*
最速を目指す飛ばし屋は、少しでも船を軽くするため一人乗りが常識だ。
二人乗っていると初速でスピードが出ない。
「ねぇ、わたしが乗っていない方が楽なんじゃないの?」
「あん? 楽に勝ってもつまんねぇだろうが」
「よくわかんないわ。バトルに勝ちたいんじゃないの?」
(2)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」