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銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十五話(3) わたしをバトルに連れてって

銀河フェニックス物語 総目次
第三十話(1)(2
第三十五話 まとめ読み版

 小惑星帯を突っ切って、またこの場所へ戻ってくる周回コース。

 スタートのカウントダウンが始まった。久しぶりのバトルだ。
 少しの緊張を期待が上回る。ジェットコースターがカタカタと動き出す時と似ている。わたしはスピード系の乗り物でスリルを味わうのが、大好きなのだ。

 簡易スタートシグナルの赤いランプが消えた。

 船がスタートする。 
 ぐっと加速がかかりシートに身体が押し付けられる。

 白魔の初速が凄い。
 みるみるうちにわたしたちの船を引き離す。マウグルアってあんなに飛び出しの加速がいいんだ。知らなかった。まるでS1機だ。

「二人乗りでオレに挑もうってのが間違ってるぜ」
 白魔がわたしたちを挑発する。

 レイターは何も言わない。
 ただ、静かに操縦している。白魔との距離が離れる。

  小惑星帯に入る。
 白魔を追って小惑星スレスレの最短ラインを進んでいく。急カーブに急降下。怖いけど怖くない。レイターは銀河一の操縦士なのだ。

n28下向き@4

 操縦桿を隣で自由自在に操るレイター。普段のだらけた様子と違ってカッコいい。
 もしS1レーサーになっていたら、エースと同じぐらい女性ファンの人気を集めたに違いない。

 最初の小惑星帯を抜ける。
 前を行く白魔のライン取りも見事だった。さすが、ヘレンさんと飛ばし屋ナンバーワンを争うだけのことがある。
 ほとんどレイターとの差が縮まっていない。

 アレグロさんの声が聞こえた。
「どうするレイター、このままじゃ抜けないぞ」

横顔む

 レイターは無表情で操縦棹を握っている。

 感じる。今、彼の全神経が船に集中していること。
 いつもと違う。
 良くない言い方をすると余裕がない感じ。

「白魔の奴、予想以上にやるな。ティリーさんごめん」
 レイターが謝った。
「どういうこと、あなた負けちゃうってこと?」

「俺が負けるわけねぇだろ」
 そこまでしか聞こえなかった。

 船が急加速した。ぐいぐいと体がシートに食い込む。
 レイターの高速操縦には慣れている。

 でも、この加速は初めてだ。一般の市販船でこんなスピードって出るの? 小惑星が次々と目前に迫る。思わず目をつぶった。
 心臓がバクバクして息が苦しい。立ち眩みのような感覚に襲われる。

* *

 
 ば、ばかな。いきなり差が縮まっている。
 白魔は驚いた。

 トップスピードで飛んでいるのに。なぜだ。
 バックモニターを確認する。

 助手席の彼女が笑っているのが見えた。

忍者ティリーパーカー笑い逆大

 実際には笑っていなかったのかも知れない。しかし、白魔の目には笑顔に見えた。

 女を乗せて喜んでる奴に負けられるか。
 白魔は加速ペダルをさらに踏み込んだ。

* *

 
 白い白魔の船に追いついた。
 直線に入ったところで、すぐ右斜め後方につける。レイターが操る操縦桿の動きが緩やかになり、息が楽になった。

 多分、レイターは助手席のわたしに気を使って操縦している。負担をかけないように。
 そのせいで大事な一戦に負けたらどうしよう。ギャラクシー連合会の旗が取られてしまったら申し訳ない。と思ったけれど、よく考えたらわたしを誘ったのはレイターだ。

 さっき彼は「人を乗せて飛ばすのが好きなんだ」と言っていた。
 S1レーサーにならなかったのは、それが理由なのかもしれない。

 一方で、プロのレーサーを目指しているという白魔は、S1を狙っているのだろう。マウグルアをうまく乗りこなしている。
 追い抜こうとするレイターを、きっちりブロックしてきた。

* *

 白魔は後ろの船を確認した。
 ぴったりと後ろにつかれた。どうするか。

白魔む後ろ目

 この先、間隔の狭い小惑星帯が続く。腕の勝負だ。負けはしない。
 だが、なんて飛ばしにくいんだ。

 抜かさせない。
 そう思えば思うほど気持ちが後ろに向く。思うように自分の飛ばしができない。巨大な力にからめとられているようだ。こんな経験は初めてだ。

 俺はプロのレーサーになるんだ。こんなところで、もたついてるわけにはいかない。

あの船は初心者向けだ。
 追いつくことができても、この白のマウグルアを抜くことはできない。    (4)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」