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銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十五話(4) わたしをバトルに連れてって

銀河フェニックス物語 総目次
第三十話(1)(2)(3
第三十五話 まとめ読み版

* *

 白魔の船が上下左右にスライドして行く手を阻む。弾けるような加速。何と言っても最新のスポーツ船なのだ。
 対するガレガレさんの船はファミリー船。レイターが改造したとはいえ、基本性能が違いすぎる。元々はわたしでも操縦できる初心者用で、船間距離も詰められない仕様だ。

 レイターが前を飛ぶ白魔のマウグルアを集中して見つめる。話しかけちゃ悪いと思いながらもたずねた。
「抜けるの?」
「抜くさ」

 どこで飛び出すか。シミュレーションをしている。
 密閉された空間で同じ空気を吸う自分にも、レイターの頭の中が共有されている様に錯覚する。

 もうすぐ、レイターが勝負をかける。

 最後のコーナーだった。
「行くぜ」
 レイターの言葉が合図となって船はスピードを上げた。
 よくわからない方向から身体が引っ張られる。
 不思議な高揚感。脳の中から快感という電気信号が飛び出して、体中をかけめぐる。

 これまで何度もバトルするレイターの助手席に乗った。
 でも、この感覚は初めてだ。

 トンネルから真夏の日差しの中へ一気に飛び出したようなまぶしさ。
 レイターと別の世界へ飛んでいってしまったような気がした。

 二人だけの世界。

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 目の前にバトルをしている船がいる。白魔の白い船。
 なのに、もう、どうでもいい気がした。 

 ブロックする白魔の加速がスローな動きに見える。するりと脇をすり抜けると、白魔が後ろへ遠ざかっていった。
 何が起きているのだろう。

 トップスピードで飛んでいる。なのに、まるで時間が止まっているようだ。

 小惑星が一つずつゆっくりと横を通り過ぎていく。
 ゴールがわたしたちを迎えに来た。

 真っ白に世界が輝いている。身体中の細胞が震えているようだ。
 すべてが満たされた感覚。幸福の絶頂。

 そして、わたしたちはゴールへ飛び込んだ。

「最高だ」
 白い歯を見せて笑うレイターの顔を見たら、キューッと胸が締め付けられた。
「最高だわ」
 身体が痺れるような幸せな感覚。何なのこれは。

 モニターの中の白魔が頭を下げた。
「なめてる、なんて言って悪かった。二人乗りでも、あんたの飛ばしは凄かった」
 レイターがわたしをチラリと見て微笑んだ。
「助手席に重りが乗ってると、初速は悪いがバランスがいいんだ」
 自分が重りの役割だったとは知らなかった。

 白魔が真剣な顔でレイターを見つめた。
「あんた、裏将軍だろ?」
 レイターがにやりと笑った。

「裏将軍は普通の社会人だから、こんなところへは出てこねぇよ。だから、そんなバカなことは仲間にも誰にも言うなよ。あんたの胸に留めとけ」

 白魔が目を見開き、ガッツポーズをした。
「ああ、オレはきょうの対戦を一生忘れない。誰にも言わない。これはオレだけのもんだ」

白魔笑い

 憧れのスポーツ選手に握手してもらった子どものような笑顔だった。

 帰り道にわたしはレイターに聞いた。
「このガレガレさんの船って、初心者向けでしょ。よくあんなスピードが出たわね?」
「初心者向け、っつうか、ガレガレんとこの船は精度がいいんだよな。あんたんところの大量生産品とは違う。一機ずつ職人が手を入れてるんだ」
「そうなの?」

n37@4やや驚く

 知らなかった。値段が高いはずだ。

「だからパワーバンドを一に設定した」
 驚いた。パワーバンドの目盛りは普通で十、S1で五、エースで二だ。

 エンジンの能力を引き出すパワーバンドは設定を狭くすれば高出力が引き出せるけれど、それだけ操縦が難しくなる。

「それで飛ばせるの?」
「飛んでただろ」
 レイターが笑った。
 奇跡のような体験は、レイターの人並外れた技術とこの高性能な船によってもたらされたということだ。

 何だろう、レイターの様子が普段と違う。いつもはバトルに勝つのは当然で余裕、って感じなのだけれど、今日は興奮している。
 そして、その気持ちを意識して押し殺している感じ。

「ティリーさん、きょうは疲れただろ、車で送っていくよ」
 フェニックス号が駐機している宇宙空港からうちまで無料ライナーでそんなに遠くない。けれど、きょうのバトルはレイターが言うように疲れた。

 素直に甘えてエアカーで自宅まで送ってもらった。

 エアカーから降りたわたしはお礼を言った。
「きょうは楽しかったわ、ありがとう」

「こちらこそ、礼を言うよ。久しぶりだった。あの感覚は・・・」

皇宮白黒真面目

『あの感覚』という言葉にわたしは反応した。

「もしかして、きょうの最終コーナーのこと? 世界が白く輝いて不思議な感覚を味わったわ」
「ティリーさんも感じたのか?」

 レイターが驚いた顔でわたしを見つめた。    (5)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」